
そんなに数多くの仕事をいっしょにしたわけでもない。 ふだんしょっちゅうツルんでいたわけでもない。 それなのに“お前と久世は――”といつもコミにされて (たいていは叱られて) いた。
そうかと思うと“お前と久世がケンカしないのは七不思議だよなあ”ともいわれた。 まあ、 同じ年、 同学で同じ会社に入り (ぼくが二年早い)、 同じテレビ・ディレクターという職業だったから、 ライバル同士仲が悪いだろうと思われても仕方がない。 ところがそんなことは少しもなかった。
ぜんぜん作風が違うのだから、 ライバルにもケンカにもならない。 もう一度いっしょに仕事がしたいといっても、 同じ番組の演出をしているところなんか想像も出来ない。
ただ、 いっしょにいたい――あんなに〈テレビ総体〉に関しての考えが同じだったヤツは二人といないからだ。
二人ともテレビ・ドラマの勃興期にこの道に入った。 テレビさえあれば他の文化はいらない、 いらなくなるだろうと皆が思っていた時代だ。 それはおかしい――文学や絵画や音楽や演劇はどうなるんだ (映画にはテレビはコンプレックスを持っていた) テレビは文化の一部ではあっても全部ではない…。
じつはこの考えは、 当時少数派だった。 ぼくと久世はこの一点で同志だったといえる。 そうしていつでもこのことを話していた。
あの話を、 もう一度したい、 ぜひしたい。