
凛とした気が漲る。 来る人はみな、 意欲に満ち溢れていてしかも、 緊張感に彩られた特別な顔をしている。 一点を見上げる人間だけが持てるあの、 清冽な空気感だ。
今年もまたアクターズセミナーは、 気鋭の俳優たちの朝の受付から始まった。 78名の張り詰めた気持ちの先には、 映画・テレビ各社のプロデューサーが勢揃いで待つ。 他では有り得ない場所だ。
皮切りの第一部。 ワークショップの今年の講師は、 ダン・コージさん。 ハリウッドのアクターズスクールで薫陶を受けたメソッドを、 ご披露頂く。 「現場の空気が読めるか?」 「役者は楽器」 「目に見えない感性を磨け」 「演技とは心の遊び」 …独特なキーワードが飛ぶ。 感性・呼吸・発声等の力を刺激し伸ばすためのゲームやエチュードによる俳優修行。
昼食後の第二部は、 映画・テレビの制作者と直接対話を図れる 『出会いの広場』。 ここぞとばかりに、 参加俳優たちは、 普段の疑問もぶつけたりのフリートークに熱気はいや増す。
そしていよいよクライマックスは第三部、 『アクターズセミナー賞選定オーディション』 だ。 自由演技2分の中に自分のすべてを込めて表現しなければならない。 少し過酷に聞こえるかも知れないが、 俳優の身体は実際の撮影現場では、 もっと厳しい条件に晒されることもある。 そしてどんな一瞬にも輝ける才能はあるのだ。 映画やドラマ・演劇の一節を演じる者、 オリジナルで即興的に見せる者、 様々だ。 審査する制作者側も、 次々と繰り広げられる演目を楽しみながらも、 基準の無い試験監督を任されて、 苦衷の採点をする。
選び出された受賞者たちは、 男女7名。 どの参加者も懸命で、 紙一重ながらの選抜ではあったが、 このほんの小さな差異による結果もまた、 プロの常。 キャスト枠をめぐる競争こそ俳優の大いなる宿命でもある。
参加された皆様、 短くて長い秋の一日、 お疲れ様でした。