
僕は新人のころ、 「マイナス4パーセントの男」 と呼ばれていました。
「石原が担当するだけで、 その番組の視聴率は4パーセント下がる」 という伝説があったのです。
つまり、 そのくらい視聴率が獲れなかった。 何をやってもうまくいかなかったんですね。 実際、 視聴率一ケタの番組はたくさんあったし、 シリーズ途中で打ち切られる番組もありました。
僕なりに夢と志を持ってこの業界に入ったつもりだったけれど、 あまりにも番組がコケ続けるので、 さすがに自暴自棄的になり、 ついには自分はドラマの企画、 プロデュースに向いていないんだなと思うようになりました。
入社3年目のある夜、 「私をスキーに連れてって」 の監督である馬場康夫さんと飲みに行きました。 へべれけに酔っ払った僕は愚痴をこぼしていました。
「僕は何やっても当たんないっすよ。 たぶん、 この仕事に向いてないんですよ。 この映画も僕がいるとコケちゃいますぜー」
カラミまくる僕に馬場さんは言いました。
「どうせコケるなら、 好きなことやってコケたら?」
「やってますよ、 好きなこと」
「ホントに、 ホントに好きなことですよ」
「ホントに、 ホント?」
「そう。 作品を作るときに必要なのはシーズとニーズなんだそうです。 ニーズはご存知の通り。 シーズとは種をまく、 つまり作り手の作りたい!っていうモチベーションのことらしいですよ」
ナルホド、 と思いました。 僕は、 それまで、 どこか過去に当たった番組のトレースをしてきたなあと気付かされたのです。
だったらホントに、 ホントに好きなことをやってやる!と思って作った次の作品もコケました。 コケましたが、 20年近く経った今も考えるんです。
「これは、 ホントに、 ホントに僕の好きなモノか?」