342 2006年 6月号
コンテンツ産業におけるプロデューサーの重要性 ・・・ 迫本淳一
                    (特定非営利活動法人 映像産業振興機構理事長
                                松竹株式会社 代表取締役社長)
深夜枠 がんばってます ・・・ 岡部紳二 (テレビ東京 プロデューサー)
只今撮影中 ・・・ 山中和成 (東宝映画)
私の新人時代 ・・・ 石原隆 (フジテレビ)
事務局だより
          

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特定非営利活動法人 映像産業振興機構理事長/ 松竹株式会社 代表取締役社長 迫本 淳一
○VIPOの成り立ち
  日本政府は2003年、 小泉首相を本部長とする知的財産戦略本部を内閣府に設置しました。
  省庁間を超えた取り組みの中で、 アメリカのAFI (American Film Institute) やイギリスのUKFC (U.K. Film Council) に相当するような映像振興組織の設立支援を2004年5月の 「知的財産推進計画2004」 に盛り込むことにより、 同年12月に設立されたのが、 この映像産業振興機構(Visual Industry Promotion Organization、 以下VIPO)です。
  VIPOは、 映画・放送・ゲーム・アニメ・音楽の5業界から成り立ち、“人材育成支援”“作品制作支援”“起業支援”“内外の市場開拓 (マーケットの拡大) ”を事業の4本柱としています。
○コンテンツ産業が必要とするプロデューサーの役割
  人材育成支援として、 VIPOは昨年、 経済産業省より 「コンテンツ人材育成総合プログラム」 に関する事業を受託し、 プロデューサー育成を主眼に置いたインターンシップ事業を行いました。
  企業よりインターン受け入れ可能な企画を募集したところ、 20以上の応募があり、 その中から映画、 テレビドラマの情報番組、 音楽のDVD映像などバラエティに富んだ8つの企画を絞りこみました。 他方で、 大学、 短大、 専門学校から学生を推薦してもらい、 各企画に5人前後の学生を派遣しました。
  この事業を受託した背景として、 VIPOの設立趣旨である 「日本経済の将来を支えるといわれる映像コンテンツ産業を戦略的に振興していく」 ためには、 プロデューサー育成が不可欠であるという理由があります。
  日本のコンテンツ産業の売上は約11兆円と言われていますが、 対GDP (国内総生産) 比では2%であり、 国際平均の3%をも下回る数字となっています。 それを改善し、 コンテンツ産業の活性化を図るためには、 人材の中でも、 知的財産としてのコンテンツをビジネスに結びつけ、 その価値を最大化するプロデューサーの役割が重要であると、 ここ数年言われ続けてきています。
  また、 日本のコンテンツ産業の海外市場依存度は1.9%と、 アメリカの17.8%に比べ極端に少ない数字となっており、 その改善のためにも、 海外展開を視野に入れ、 海外とのビジネスメイクを行うことのできるプロデューサーが求められています。
  このようなプロデューサーに求められるものは、 プロジェクト立案・事業展開能力と、 法務・会計の基礎知識を持ち、 外部の力を十分に引き出すなど、 複合的な能力が必要だと思われます。
  VIPOのプロデューサー育成はようやくスタートを切ったところで、 まだ、 暗中模索の段階です。 今後、 日本映画テレビプロデューサー協会からのご協力をよろしくお願いいいたします。
深夜枠 がんばってます
テレビ東京 プロデューサー 岡部 紳二
 
 テレビ東京が去年10月から久々にスタートした連続ドラマ枠 「ドラマ24」 も第一作目の 「嬢王」、 二作目の 「2ndハウス」 に続き、 今年4月からの 「下北 GLORY DAYS」 で3クール目に突入しました。
  おかげさまで視聴率も平均5〜6%台をコンスタントに獲得し、 「金曜深夜のお楽しみ」 として10代から30代の男女の視聴者に定着しつつあります。
  「ドラマ24」 は現在3人のプロデューサーで担当していますが、 スタートにあたりまったく新しい枠をいかに認知させるか、 様々な議論を重ねてきました。 その結論は当たり前すぎるものですが、 @企画AキャステイングB制作力この3点につきるというものでした。
  @に関しては 「自分たちの作りたい原作で、 自分たちの見たいドラマを作る!」 をコンセプトに 「ワガママ」 な企画選定を貫く方針です。 枠分析やマーケティングも大事だけど、 プロデューサー本人の高いモチベーションこそが視聴者の心をつかむと考えたからです。 しかし、 他の局、 制作会社のプロデューサーの方々も同じだと思いますが、 原作探しにはいつも苦労しています。
  人気青年コミックを中心にドラマ化しているこの枠ですが、 決定の時期になると3人の担当プロデューサーは朝から晩までコミック誌や文庫本を読みあさります。 まさに 「マンガに埋もれる日々」 です。 それでも 「これだ!」 と思える作品になかなか出会えません。 日々、 自分の直感と感性を疑い、 迷う日々を送っています。
  @の部分でもうひとつこだわったのは 「エロティック」 な味付けです。 深夜枠ならではの大胆な 「ハダカ」 の露出に挑戦しました。 しかしスタッフが一線を引いたのは 「女性に嫌悪される表現はNG」 ということ。 毎回スタッフで 「これはやりすぎ」 「これ以上見せない」 といった議論が交わされています。
  AとBに関しては連ドラのキャスティング、 制作経験に乏しい我々3人としては、 ほとんど 「飛び込み」 の形で 「プロダクション」 や 「制作会社」 の方々にアプローチさせていただきました。
  その結果 「嬢王」 では北川弘美さん、 金子昇さん、 「2ndハウス」 では長野博さん、 磯山さやかさん、 「下北 GLORY DAYS」 では一太郎さん、 瀬戸早妃さんなど、 次世代を担うフレッシュな役者さんとお仕事をさせていただくことができました。
  演出スタッフでは 「共同テレビ」 「テレパック」 などの大手制作会社の中でも、 比較的若いスタッフと協力して番組作りを勉強する機会を得ました。
  まだまだよちよち歩きの 「ドラマ24」 ですが、 みなさんのお力をお借りして 「金曜深夜の肩のこらないエンターテイメント」 として長く愛される枠に成長していきたいと思います。
  どうぞよろしくお願いいたします。
* * * 只 今 撮 影 中 * * *
東宝映画 山中 和成
 長澤まさみさん、 速水もこみちさんのW主演でお贈りする、 あだち充さん原作の青春ラブストーリー 「ラフ」 を製作中です。 監督は、 「NANA」 で日本中にNANAブームを起こした大谷健太郎さん、 脚本は、 「電車男」 で日本中を笑いと涙で包み込んだ金子ありささんです。 4月1日にクランクインして、 5月16日のクランクアップまで快調に撮影はつづいています (5月13日現在)。
  本作のメインの舞台となるのはプールです。 長澤まさみさん演じる二ノ宮亜美は、 高校の水泳部に所属する高飛込選手、 速水もこみちさん演じる大和圭介は、 同じ水泳部の競泳選手という設定です。 高飛込と競泳をいかにリアリティをもって、 映像的に面白く描くことができるかが、 本作の成否を握る鍵です。
  主演のお二人には、 年明け早々に、 日本水泳連盟のご協力のもと、 高飛込と競泳のトレーニングを始めて頂きました。 高飛込とは、 10メートルの高さの台から、 美しさと難易度を競って飛込む競技です。 年末に、 長澤さんを連れて飛込選手たちの合宿を見学に行ったときに、 初めて10メートルの台の上に立ってみたのですが、 私は足がすくんでしまい、 台の先端までいくことができません。 いっぽう、 長澤さんは高いところが平気で、 涼しい顔で先端まで歩いていきます。 そんな長澤さんだから、 トレーニングも楽しんで行い、 撮影時には華麗な飛込フォームを身に付けていました。 2月には、 物語のクライマックスである競泳大会を体感するために、 速水さんと 「日本短水路選手権」 を見学に行きました。 最初に会場を彩る企業看板や巨大ビジョンの華やかさに驚き、 応援にきている観客の熱気に圧倒されました。 つづいて、 競泳選手たちに注目すると、 その鍛え抜かれた肉体と泳ぎのフォームの美しさに目を奪われました。 大会見学後、 いっそう速水さんのトレーニング熱は高まり、 クランクイン時には、 見事な肉体と美しい競泳フォームを身に付けていました。 お二人のリアルな演技に、 本作の成功を確信致しました。
  高飛込、 競泳の映像的な面白さは、 水中映像、 クレーンを使ったカメラワーク、 CGを用いた視覚効果を組み合わせて創造します。
4月末に茨城県の笠松運動公園プールを6日間お借りして、 日本選手権大会場面の撮影を行いました。 一般エキストラ延べ2000人と、 水泳連盟関係者延べ200人にお集まり頂き、 連日熱気ある大会シーンをつくっていきました。 室内プールなので天候に左右されることはありませんでしたが、 場内の室温は30度以上、 湿度も高いため、 じっとしていても額から汗が零れ落ちる中、 スタッフ、 キャスト、 エキストラが一体となって、 華やかな美術装飾のプールで創りだした迫力ある映像にご期待下さい。
  全国東宝洋画系にて、 8月26日より公開致します。
私の新人時代
フジテレビ 石原 隆
 僕は新人のころ、 「マイナス4パーセントの男」 と呼ばれていました。
  「石原が担当するだけで、 その番組の視聴率は4パーセント下がる」 という伝説があったのです。
  つまり、 そのくらい視聴率が獲れなかった。 何をやってもうまくいかなかったんですね。 実際、 視聴率一ケタの番組はたくさんあったし、 シリーズ途中で打ち切られる番組もありました。
  僕なりに夢と志を持ってこの業界に入ったつもりだったけれど、 あまりにも番組がコケ続けるので、 さすがに自暴自棄的になり、 ついには自分はドラマの企画、 プロデュースに向いていないんだなと思うようになりました。
  入社3年目のある夜、 「私をスキーに連れてって」 の監督である馬場康夫さんと飲みに行きました。 へべれけに酔っ払った僕は愚痴をこぼしていました。
  「僕は何やっても当たんないっすよ。 たぶん、 この仕事に向いてないんですよ。 この映画も僕がいるとコケちゃいますぜー」
  カラミまくる僕に馬場さんは言いました。
  「どうせコケるなら、 好きなことやってコケたら?」
  「やってますよ、 好きなこと」
  「ホントに、 ホントに好きなことですよ」
  「ホントに、 ホント?」
  「そう。 作品を作るときに必要なのはシーズとニーズなんだそうです。 ニーズはご存知の通り。 シーズとは種をまく、 つまり作り手の作りたい!っていうモチベーションのことらしいですよ」
  ナルホド、 と思いました。 僕は、 それまで、 どこか過去に当たった番組のトレースをしてきたなあと気付かされたのです。
  だったらホントに、 ホントに好きなことをやってやる!と思って作った次の作品もコケました。 コケましたが、 20年近く経った今も考えるんです。
  「これは、 ホントに、 ホントに僕の好きなモノか?」
◎正会員入会 碓井恭子 (CX) 小野田光美 (CX) 小寺 尚 (CX) 酒井 彰 (CX)
関本広文 (CX) 西村文女 (CX) 宮川朋之 (CX) 矢吹 東 (CX)
◎退     会
 日本映画衛星放送 (賛助)

◎第40回親睦ゴルフ会開催


場所 我孫子ゴルフ倶楽部
日時 平成18年4月19日
参加人数 21人        (親睦委員会)

氏  名
優 勝
新藤 次郎
45
45
90
13
77
準優勝
春日  敦
44
46
90
25
65
3 位
遠藤 利男
46
48
94
16
78
* * * * * * * * * * * * * * * * 編 集 後 記 * * * * * * * * * * * * * * * *
久々の編集後記です。4月号から連載中の「只今撮影中」はいかがでしょうか。“会員の役に立つ、なおかつヴィヴィッドな情報を”というテーマでお届けしています。次号は特集スペシャル版です。お楽しみに。                                               (香)
 ○会議の記録
5月11日 (木)
親睦委員会
(事務局)
5月15日 (月)
会報委員会
(事務局)

5月29日 (月)

セミナー委員会
(事務局)
5月31日 (水)
第11回定例理事会
(NHK青山荘)
    〃
第30回通常総会
(   〃   )
 ○会議の予定
6月12日 (月)
会報委員会
(事務局)
6月21日 (水)
第1回常務理事会
(NHKエンタープライズ)
    〃
第1回定例理事会
(   〃   )
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