
二十年以上前の春・四月、 卒業証書も貰わないまま潜り込んだ調布の撮影所で、 配属された部署は通称 「テレビ部」 と呼ばれていた。
企画書の清書やらプロットの習作に明け暮れたGW明け、 『現場見習い』 を命ぜられた私は、 早速その日からT組の製作進行として、 初の二時間ドラマの現場に挑む事になった。 周りは 『南極物語』 のKさんとか、 『セーラー服と機関銃』 のNさんとか、 錚々たるメインスタッフなのだが、 無知蒙昧の私にはその有り難味が全く判っていない。 しかも製作部は製作担当の先輩と進行の私の二人っきり!その事の重大さすら自覚する間もなく、 撮影は始まった。
それから撮了までの三週間あまり、 私の記憶は殆どない!!
とにかく誰かに怒鳴られてるか、 弁当や小銭 (バレ飯用) を配りまくってるか、 車止め・人止めで揉まれてるか…だったような。
仕上げ作業に入り撮影所に戻った私は、 同期の仲間達が和気藹々と仕事に追われる風景を見て、 愕然となる。
当時は 「ロマンP」 いまだ健在の時代で、 若手監督が若手スタッフ達と、 新人女優を主役に自由闊達な現場を演出していた! 関係者の平均年齢が20歳は違う。 しかも向うは……!
若造盛りの自分には、 ただただ隣の芝生が輝いて見えた。
結局それから4年間、 巨匠と大物俳優さん達と、 超ベテランスタッフの方々とのハードな日々は続いた。 が、 その頃の様々な修羅場体験があったからこそ、 辛うじて業界の片隅で生きている今日の自分がある (と今だからこそ言える)。
その後、 意気揚々と飛び込んだロマンPの現場も、 私が参加して一年余りで、 その幕を閉じた…でもやっぱり楽しかった (苦笑)。