「メディア・リテラシー」 とは何か?
最近 「メディア・リテラシー」 という言葉をよく聞きます。 このテーマで三人の方に御寄稿いただきました。
映画評論家 村山匡一郎
「映画のリテラシーについて」
  「メディア・リテラシー」 という言葉がある。 私たちが語彙や文法などを学んで日本語を習得してきたように、 メディアの基礎や特性を学ぶことで、 メディアへの理解や批判の力を養い、 その豊かな価値と効用を認識することを狙っている。 同じことは映画についてもいうことができる。 ところが、 不思議なことに、 映像の時代が叫ばれて久しいにもかかわらず、 わが国の教育制度の中では映画ないし映像教育は看過されてきた。 その理由は幾つかあるが、 要は映画が文化的に低く見られて来たことによる。
  そんな状況に変化が現れたのは5年ほど前からである。 2001年12月の 「文化芸術振興基本法」 の公布など、 国や行政の奨励もあって、 映画に対する振興策や支援策が声高に論議され始めた。 なかでも子供の映画教育の必要性が主張されるようになった。 どんなに多くの製作者を育てたとしても、 観客がいなかったら何の意味もないし、 また映画を 「見る」 ことができなければ、 優れた創作者は生まれないからだ。
  では、 そのために何をしたらいいのだろうか。 少なくとも子供の頃から、 多様な映画を見て感性と嗜好を育むことのできる環境を整えること、 映画の鑑賞能力や理解力を養うための教育を行うこと、 などが必要である。 とくに後者の映画教育では、 何かを教えるために映画を教材とする教育から、 描かれた世界を読み解く教育や、 表現の特性や歴史を含めた映画そのものの教育まで、 幅が広い。 さらにこれらに、 子供の体験学習型から専門家養成まで、 映画製作の実際の教育を加えることができる。
  こうした映画教育は、 欧米諸国では20年以上も前から公教育を含めて実現されている。 わが国でもすでに実践しているところはあるが、 まだ手探りの状態である。 現在、 それらの試みを、 コミュニティシネマ支援センターがネットワークを作って支えている。 ここがまとめた 「諸外国及びわが国における 『映画教育』 に関する調査」 (「中間報告書」 2005年3月、 「最終報告書1、2」 2006年3月、 財団法人国際文化交流推進協会) は、 映画教育に関心のある人には参考になるだろう。
日本テレビ 小山 啓
 小学校5年生の社会科の教科書を開かれた方は、 テレビやメディアについて、 多くの紙幅を割かれているのに驚かれるかと思います。 そこでは今、 「テレビ局を見学しよう」 「ビデオで作品を作ろう」 といった、 教育が盛んに謳われています。 国語科でも、 コミュニケーションの手段としての映像や新聞・漫画などを取り上げているページが、 たくさん見られます。
  これは、 「メディア・リテラシー」 と呼ばれる最近のカリキュラムです。 「リテラシー」 とは、 読み書き能力のことで、 すなわち 「メディアを選択し、 主体的に読み解き、 自己発信していく能力」 のことです。 当初は、 テレビを有害なものと批判する運動が主流でした。 しかし近年、 メディアの普及と多様化に伴い、 むしろ活用するべきだと、 学校教育に積極的に取り入れられるようになってきました。 各教室にはテレビ、 そしてパソコン室には、 1クラスの人数分のコンピューターが一般的となっています。
  しかし、 メディアを有害とする論議 (アメリカでは機械をとりつけて、 見せたくない番組を物理的に子どもに見せない) や、 メディアが起こした問題の社会的影響から、 政府による規制論も広がってきています。 それに対しての、 メディア自身による自助努力として、 各局が取り組みを行なっています。
  日本テレビでは5年前から、 年に4本のペースで、 『メディア・マガジン』 という番組で、 青少年を中心とする視聴者にメディアへの理解を深めてもらい、 自己発信するための放送をしております。 メイキングで番組制作の裏側を開示し、 さらに実際に子どもたちに番組を制作してもらったりしています。
  福井県で、 実践している先生が、 おっしゃっていました。 「通常の授業では学力の差で、 どうしても、 ついていけない子が出てきてしまう。 メディア・リテラシーは、 子どもたち全員がそれぞれの能力を生かして意欲的に参加出来る」
  私自身も、 番組作りの指導に10校ほどの小学校に入りました。 子どもたちは最初はもめながらも、 カメラで撮影していく中で、 次第にチームワークが生まれ、 自分たちの学習の成果が手に取って見られる喜びを感じ取っていきます。 手はかかりますが、 感動的な授業が必ず実現出来る、 楽しくも教育的意義の高いものです。
NHKドラマ部 原林 麻奈
「キミが主役だ!放送体験クラブ」
  NHKでは、 主に小学校5年生を対象に、 放送局の仕事と役割について楽しみながら学んでいただく 「キミが主役だ!放送体験クラブ」 を平成12年度から毎年実施しています。
  「体験クラブ」 の内容は三部構成。 第一部は 『不思議!放送体験』。 スタジオ設備やスタッフの役割分担について説明を聞いた後、 プロンプターやクロマキーなどを楽しみながら体験します。 第二部は 『挑戦!番組作り』。 身近な地域の話題について事前に学校で取材し、 台本を作成して素材のビデオや静止画などをNHKに送ってもらい、 当日スタジオで番組づくりをします。 ここで制作した番組は、 学校へ持ち帰って、 校内放送や保護者会で上映していただいています。 第三部が 『納得!NHKなんでも学習』。 NHKや放送に関する子どもたちの疑問にお答えするコーナーです。 解説する講師はアナウンサーや技術、 経理や総務まで各部局の職員が持ち回りで担当しています。 この放送体験クラブの様子は、 各局ローカル番組の中で紹介されています。
  さて、 今年1月にディレクター指導役として2日間参加してきました。 ドラマ部在籍十数年の私ですが、 送出系番組を作るのは実は初任地の青森放送局にいたとき以来。 ぶっつけ本番で 「お手本」 として見せるという冷や汗モノでした。 キャスター役などに比べてディレクターの仕事は子どもたちにはなかなかピンと来ないようなのですが、 一度リハーサルをやってみると 「分かった〜!」 と目を輝かせているのが印象的でした。 後日、 「ニュースや天気予報を見るたび思い出します」 「大丈夫かなと心配だったけど、 みんなで力を合わせて出来てよかった」 などの感想文が多数送られてきて、 うれしい限りです。
これまでの7年間で、 全国の放送局で放送体験に参加した子どもたちは既に40万人を越えました。 「放送体験クラブでNHKに入りたいと思いました!」 という将来の大物プロデューサーが誕生する日も近いかもしれません。

只今撮影中
NHK 内藤 愼介
幸せを呼ぶ 「座敷童ざしきわらし」 といっしょに 「平成の民話」 を届けたい。
  平成19年度連続テレビ小説 「どんど晴れ」 は4月2日 (月) からの放送開始に向け収録真最中です。 朝ドラ 「どんど晴れ」 は、 もてなしの心を代々受け継いだ伝統と格式を持つ盛岡の老舗旅館 「加賀美屋」 を舞台に、 普通の家庭に育った横浜育ちの主人公が、 いかにして若女将として成長して行くのかを描く“女将奮闘記”です。
  平成18年度の連続テレビ小説は 「純情きらり」 の宮アあおいさん、 「芋たこなんきん」 の藤山直美さんと実績のあるヒロインで撮影を進め好評を得ることが出来ました。 今回、 平成19年度連続テレビ小説 「どんど晴れ」 は再度、 原点に戻り一年半ぶりにオーディションを行い、 ヒロイン選びにおいては 「鮮度」 を基準として自前でヒロインを育てる事を一番に考えました。
  そして、 2000人を越える応募をいただいた中から、 500人ほどの方と面接をし、 私たちが満場一致で選んだのが比嘉愛未さんでした。 彼女はテレビドラマはもちろん演技の経験はほとんどありません。 しかし、 オーディションを通して何度か課題を与えていくうちに芝居の経験の無い比嘉さんの頑張る姿が伝統と格式の前で孤軍奮闘しながら成長していくヒロインとダブってきたのです。
  比嘉さんには、 ヒロインになってから半年間、 NHKでレッスンを積んで貰いました。 無名の女の子がシンデレラになる。 それが朝ドラの醍醐味だと思います。
  彼女は、 沖縄の高校を卒業し東京に出て来て1年ほどモデルをしていて、 ドラマのオーディションは今回が初めてだったそうです。 ヒロインが岩手の老舗旅館で大女将役の草笛光子さん、 女将役の宮本信子さんらベテラン俳優に鍛えられ立派な若女将になって行く過程と、 比嘉さんが右も左も分らない東京で、 初めて飛び込んだ芝居の世界、 女優としての頑張り、 ヒロインとして成長して行く、 その姿が視聴者の方々にダブって楽しんで見ていただければと考えています。
  彼女の見せる笑顔が、 民話に登場してくる 「座敷童 (ざしきわらし)」 のように見た人を幸せにしてくれます 「座敷童」 はその家を裕福にすると言われます。 ヒロインもドラマの中で 「座敷童」 と間違えられるときがあります。 私たちもドラマを通してそんな夢が見れたらいいなァと考えました。 日本の古き良きものの一つ、 相手を敬い、 思いやりを持ち、 笑顔で迎え入れる、 そんな 「もてなしの心」 を持つヒロインにぴったりの比嘉愛未さんに出会うことができ 「どんど晴れ」 は“民話の故郷”である岩手を舞台に1年半ぶりのオーディション、 半年間のNHKでのレッスンを乗り越え初めてのドラマ主演に孤軍奮闘する比嘉愛未の女優としての成長とともに新たな 「平成の民話」 を目指します。
  どうぞご期待ください。 どんどはれ。

PS:タイトルの由来
  タイトルの 「どんど晴れ」 は、 民話の最後に使う 「どんど晴れ (めでたしめでたしの意味)」 と、 岩手の広く晴れ渡る空のイメージから取りました。
私の新人時代
松竹  中嶋 等
 もうかれこれ18年前のことである。
「君、 明日から京都へ行きなさい」
問答無用、 上司の命令が下った。 京都とは、 太秦にある松竹京都映画撮影所のことである。 プロデューサー助手の身分に人権などない。 予告もなく突然の 「明日から行け」 がそれを象徴している。 当時京都へ行くとは、 テレビ時代劇の撮影現場に張り付き、 雑用をこなすことだった。 とにかく心構えも準備もなにもないまま撮影所へ飛び込んだ。 作品は 「必殺スペシャル」、 恥ずかしながら 「必殺」 について知識がほとんど無かった。 その上、 かつら、 衣裳、 小道具など時代劇のノウハウもゼロ、 撮影所のスタッフも知らない人ばかり、 京都の町も中学校の修学旅行で清水寺に行ったきりと、 ホントに右も左も未知の世界。 宿も撮影所近辺にあったため、 まるで 「島流し」、 私は 「流人」 であった。
  それからの京都の撮影所での日々。 プロデューサー助手に人権は無い。 流人の気持ちになった。 プライドからなにから全てをかなぐり捨て、 「郷に入っては郷に従え」 の精神だった。 細かくはもう忘れたが、 とにかく人から言われたり頼まれたことには応え、 教えられたり諭されたことを素直に受け止め、 スタッフの話しに耳を傾け、 撮影現場と人の動きぶりをつぶさに観察、 いろんなことを吸収した。 根っから新しもの好きの性格からか、 何もかもが興味深く、 次から次へと新鮮な気持ちで仕事に携わることが出来た。 私にとってとても充実した日々であった。 予備知識や先入観がなかったことが功を奏したのかも知れない。 当時はおそらく苦労の連続だったはずだが、 現在回想してみて楽しかった印象しかない。 イキイキした自分がそこにいたからだろう。
  二十年近い新人時代において (現在も新人時代のつもりなので)、 最初の京都での仕事は、 楽しかった良き思い出となってずっと心に残っている。 今もこの思い出を私のプロデューサー業のお守りにしている。
事 務 局 だ よ り
・・・・・・・ 正会員入会 ・・・・・・
 
土川 勉 (大映)

・・・・・・・・  退会  ・・・・・・・・
 
高橋 康夫 (NHK)
 
酒井 浩至 (NTV)
 
大島  正 (F)
 
古賀 憲一 (F)
 
前澤 哲爾 (F)

・・・・・・・・  訃報  ・・・・・・・・
功労グループの岸本吟一氏は去る二月二十二日逝去されました。
86歳でした。
  ご生前の功績を偲び、 心からご冥福をお祈り申し上げます。
総会と懇親パーティーのご案内
第31回通常総会を左記により開催致します。
正会員の方はご出席ください。 欠席される場合は総会成立のため、 必ず委任状をご送付下さい。
また、 総会終了後、 恒例により懇親パーティー (18時開宴予定) を行います。 賛助会員の方々も、 お誘い合わせの上、 是非ご参加下さい。
日 時
2007年5月30日 (水) 17時 総会開始予定
場 所
NHK青山荘 港区南青山5−2−20
電 話
03−3400−3111
パーティー会費
3、 500円
会員証の更新について
お手元の会員証の有効期限は2007年3月31日となっております。
更新のためタテ3センチ×ヨコ2・5センチの写真 (カラー、モノクロいずれも可) 1枚を事務局までお送り下さい。
◎映画館入場料金割引のお知らせ
この度東京都興行生活衛生同業組合のご支援により新年度の加盟館割引入場料が以下の通り決まりました。
@
入場料 1、 000円
A
ご入場の際は、 入場券売り場に当協会の会員証有効期間2007年4月1日〜2010年3月31日をご呈示の上、 入場券をお求め下さい。
B
特別興行、 レイトショウ、 混雑時は入場できません。
また割引対象外の映画館もございますので、 窓口の指示に従って下さい。
C
加盟館リストは協会HPをご参照下さい。 またFAXをご希望の方は事務局までご連絡下さい。
利用期間中館名の変更もあります。
――― インフォメーション ―――
 ○会議の記録と予定
3月13日 (火)
会報委員会
(事務局)
3月26日 (月)
第9回定例理事会
臨時総会
(東映本社)
4月4日 (水)
親睦委員会
(事務局)
4月16日 (月)
会報委員会
(事務局)
4月25日 (水)
第10回定例理事会
(NHKエンタープライズ)
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