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「ホタル」にみる日韓映画交流 |
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「ホタル」が教科書になる日 |
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東映東京撮影所 製作課長 菊池淳夫 |
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筆者中央 |
「あと半月、韓国ロケが遅かったら大変だったでしょうね」
撮影本隊がソウルに到着する前日2月20日、ある日本人特派員が私に言った。
この時期、まだ日本の教科書検定問題は韓国内で表面化していなかった。
「検定問題が表沙汰になれば、この映画は韓国で受け入れられないかもしれませんね。韓国のスタッフ・キャストでも、この映画を拒否する人が出るんじゃないですか・・・」
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「昭和」という時代を、ある市井の夫婦の姿を通して21世紀に語り継ごうとする映画「ホタル」。そのクライマックスは、高倉健扮する元特攻隊員が戦死した韓国人特攻隊員の遺族を訪ねる場面の韓国ロケだ。
戦後40年の月日を経なければ韓国を訪ねることが出来なかった主人公の元特攻隊員をテーマにした作品にたどり着くまでには永い時間を要したのかもしれない。
韓国の伝統的家屋が残る河回(ハフェ)村のロケでは、古老たちが私達の話す日本語に眉をひそめる場に出くわした。また、取材に来た韓国マスコミの中には日本の戦争責任について厳しい質問をする者もいた。
韓国内で日本の映画・音楽が解禁され、韓国資本の映画が日本で作られる昨今。だが、あまりにもデリケートな題材を選んでしまったのだろうか。
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1週間の撮影が終わった時、韓国側照明部の若いスタッフと教科書問題について話す機会があった。
「ニッポンもコリアも、教科書だけが本当のこと教えてくれるなんて限らないヨ」
拙い日本語は、2年間働いた新大久保の焼き肉屋で覚えたという。
オレら若い奴らは、学校なんかよりも音楽や映画で色んなこと覚えるでしょ。それ日本も韓国も同じヨ。この台本を読んで、現場に参加して、韓国の教科書で教える戦争の歴史とは、別のことがワカッタよ」
茶パツを掻きあげて、彼は無邪気に笑った。
※「ホタル」は全国東映系にて公開中 |
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「ホタル」韓国ロケでのスナップ
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