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新しい年に、平和を願って… 会長 遠藤利男
 新しい年を迎えて、 まず、 世界の平和を、 祈ります。 そして皆さんの暮らしと仕事が平和のなかで発展することを祈ります。l
 私は昨年の新年の挨拶に、 人類は二十世紀に創りだした大きな矛盾を何一つ解決しないまま二十一世紀への敷居を跨いだ、大きな負債を背負っている気分だというような意味のことを書きました。
 二十世紀を戦乱の中で過ごした人類にこの矛盾を解決する叡智があるのだろうかという重い疑問と共に、 いやきっと新しい道を見いだすに違いないという願いを込めていました。
 しかし、 今世紀最初の年から矛盾は火を吹き、 この願いはみじんに打ち砕かれました。 九月十一日のあの同時多発テロ以来、暴力には暴力をという極めて古典的な争いが、 極めて先進的なハイテク技術に飾られて押し進められています

 そして、 アメリカのアメリカによるグローバリゼーションの象徴であるあのビルが脆くも崩れ去った時、 アメリカを中心とする先進諸国とその指導者は、驚愕のあまりか、 数世紀もかけて作り上げてきた彼らの誇る理性も知性もかなぐり捨ててしまい、 それこそ古典的な西部劇のシェリフのような単純で乱暴なせりふを繰り返し始めました。
 それにしても、 あの貿易センターに突入する旅客機と崩壊するビルの映像は映像史上、 メディア史上、 また私たちの心の中から拭い去ることの出来ないものとなりました。まるで、 SFXのコンピューターグラフィックスの精密な合成画面のように、 カメラがビルにパンされると同時に事件は起こりました。 それ以後映像は事件を捕らえつづけ、そして二機目、 そして大崩壊。 私たちはそれを繰り返し繰り返し見せられました。 これはフィクションか、 悪夢か。 いや現実なのだという私の驚きも、 その繰り返しの中で、レポーターたちの叫びにもかかわらず、 やがては無理やり劇場に連れ込まれた観客のように醒めてゆきました。
 私は、 今世紀のさまざまな表現は、 この映像と何らかのかかわりなしにはあり得ないのではないかと思いながら、 新しい年の平和を、ふたたび願って、 新年の挨拶とします。
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