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メディアが生んだ?  メディア規制法
〜青少年有害社会環境法案〜
◆青少年有害社会環境法案で公開シンポジウム
 自民党が、今通常国会に提出を検討している「青少年有害社会環境対策基本法案」について、広く議論する「公開シンポジウム」が2月22日に、東京・永田町の星陵会館で開かれた。
 「青少年有害環境法案を考える〜法規制とメディアの自律〜」と題された公開シンポジウムは、民放連、日本新聞協会、NHK、衛星放送協会、ATP、映倫、等の9団体が主催し、メディア関係者や研究者、国会議員、一般ら約350人が参加、「放送と青少年に関する委員会」委員長の原寿雄さんによる基調講演のあと、法案を作成している自民党の田中直紀参院議員やメディア関係者4人をパネリストに、討論が繰り広げられた。
◆「青少年有害社会環境対策基本法案」とは
 同法案は、有害な環境から子供を守るために、1.国は基本方針を定め、2.国民的な広がりをもった取組み(国民運動)を推進し、3.事業者の自主的な取組み(自主規制)を促進する、というもの。
 具体的には、事業者、事業団体は苦情処理等を行なう「青少年有害社会環境対策協会」を設立し、主務大臣や都道府県知事は同協会に対し指導、勧告を行う。 勧告に従わない協会は公表する。また、内閣総理大臣が指定する「青少年有害社会環境対策センター」は、各対策協会と連携し助言、指導を行い、総理大臣は同センターに業務改善を命ずることができるという仕組みである。
◆公開シンポジウム
 公開シンポジウムでは、まず、原寿雄さんから基調講演として問題提起があった。「個人情報保護法」と「人権擁護法」そして「青少年有害環境法」の三法案は、メディア規制の三点セットであること。これに加えて、「防衛秘密」導入や有事法制化や名誉毀損の高額賠償判決により、取材する側も取材される側も萎縮していくこと。本来ジャーナリズムによって監視を受ける政府が、逆に情報活動を全て監視下に置くことにより、憲法21条の解釈を変えてしまうことなどが指摘された。
 公開討論では、メディア関係者から「青少年有害社会環境」の定義が曖昧であることや、法律を制定すべき「立法事実」(有害情報と犯罪との因果関係の認定) がないこと、国際的に認められている子どもの権利を侵害していることなどが指摘された。また、ひも付きの自主規制では、「スカートのすそを踏まれている」ようなものだとの皮肉も飛び出した。
 田中議員からは、都道府県レベルでの条例では、テレビやインターネットなどの情報発信への対応には限界があり、有権者から国の対応を強く求められていることや、メディアと青少年犯罪の因果関係の科学的な解明を待っていられない社会状況であること、また、現状の自主規制は不十分であることなど反論があり、議論は平行線をたどった。
法案のウラには
 自民党は、同法案をこの通常国会に上程する予定である。法案は、「過激な性や暴力を描写した情報の氾濫」から青少年を守るという、市民受けする甘い装いを纏っているが、そのウラに別の思惑があるのは歴然としている。「国民は、メディアで意思決定をする。メディアは国民の心を反対の方向に動かしている」と、いくつかのテレビ番組に不快感を示す議員もいる。
 こうしたメディア規制の動きに注目し、反対を表明するとともに、メディアは、いま胸を張って、「自主、自律」を語ることができるのか、自らを問い直す作業も必要であろう。
会報委員 A.K
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