ALL NIPPON PRODUCERS ASSOCIATON
映画・新社長に聞く 東宝株式会社
高井 英幸
 2002年の東宝のトリは洒落ではなく 「トリック/劇場版」 (蒔田光治脚本、 堤 幸彦監督) でした。 11月9日に公開され、 お陰様で100万人動員の大ヒットで本年の有終の美を飾ることになりました。 この作品は当社のテレビ部がテレビ朝日さんとご一緒して制作した連ドラ 「トリック」 を映画化したものです。
 今年は東海テレビさんでやらせていただいた、 昼の帯ドラマ 「真珠夫人」 (菊池寛原作、 中島丈博脚本) も大変話題になり、 昼帯としては初めて総集編的な完結版がフジテレビ系のゴールデンタイムでオンエアされました。
 また昨年BSiさんとご一緒にやらせて頂いたドラマ 「女学生の友」 (柳 美里原作、 篠原哲雄監督) が今年10月にスイスで開かれた 「第8回ジュネーブ国際映画TV祭」 でグランプリ (最優秀作品賞) を獲得するなど、 2002年は東宝テレビ部にいろいろとスポットの当たった年でした。 若手のプロデューサーが育ってきていますので協会の皆様よろしくご指導の程お願い申しあげます。
 さて、 映画業界は今年もまずまず健闘して、 「千と千尋の神隠し」 の記録的なヒットがあった昨年 (年間劇場興行収入2,000億円) に迫る結果になりそうです。 ビデオの市場も昨年並みの3,000億円が見込まれるとすれば、 これにテレビの放映料を加えて、 映画映像の世界は5,000億円を超え市場をキープすることになります。
 問題は日本映画の市場がこの中にどのくらいあるかということですが、 残念ながら今年の日本映画はやや苦戦を余儀なくされており、 来年の健闘が待たれています。 しかしソフトのニーズは確実に増加しており、 映画をもっと作ろうという気運は高まっていると思いますので、 東宝としても製作に対してよりアクセルを踏み込んでいこうとしています。 成城の撮影所ではこれまでのスタジオのイメージを一新する巨大なステージを建設中で、 来年2月の竣工を待っているところです。
 一番の悩みは、 これはと思われる企画が少ないことです。 ちょっとでも可能性を秘めた企画があれば、 映画用のシノプシスの作成、 脚本の開発など、 企画費は用意しますので、 どうぞ協会の皆さんで、 これはと思う企画がありましたら、 東宝の映画調整部へ是非ご一報いただければ幸いです。
 東映の岡田裕介新社長ともエールの交換をしつつ、 映画界の活性化にむけて布石を打っていきたいと思っております。 よろしくご支援のほどお願い致します。
映画・新社長に聞く 東映株式会社
岡田 裕介
 日本の経済と社会は未曾有の大不況と閉塞感に覆われています。 映画界も秋興行は不振でしたが、 前途は悲観すべきものではないと思っています。
 現在、 映画の世界は明るさ (良いところ) と暗さ (悪いところ) を持っています。 明るい側面は、 景気に左右されない需要を持っているという点です。 自動車販売と同じように、 デフレ下でも料金 (値段) が極端に下がらないということです。 シネコンの発展に依り良い環境で映画が観られるということ、 更に観客層の娯楽が一時期のテレビ一極集中型から変化していることが寄与しています。
 一方、 暗い側面は、 邦画の社会に対する存在感が音楽に比べるとまだまだ薄いという点です。 そのため、 制作費が少ない、 FC (フィルム・コミッション) が動き出したとは言えロケ協力が得られにくい、 などの問題が横たわっています。
 しかし今、 映画の世界にも地殻変動とも言うべき変化が兆しています。 デジタル化への流れです。 これまでは予算的制約がクリエイターの発想を限定させていました。 予算内におさめることがプロフェッショナルの証あかしになるという逆転現象がありました。 デジタル化はクリエイターの発想が豊かであれば、 邦画でも米ハリウッドの大作に比する作品を作ることが可能になります。
 プロデューサー・監督・脚本家などクリエイターは育てるものではない、 育つものである、 というのが私の持論です。 しかし、 その育つための土壌は積極的に提供していきたいと考えています。
 もう一つ私が訴えたいのは、 邦画界の大同団結です。 邦画界の各社・各人がパイを奪い合うのではなく、 切磋琢磨しながらパイを大きくしてゆく、 邦画のシェアを上げていくことが重要です。
 新しい世紀、 創立50周年を迎えた東映は、 デジタルを始めとした先端の技術を持ち、 高い質の作品を作ることができる 「技術テクノロジーの東映」 として飛躍していきたい、 と考えています。
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