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謹 賀 新 年 会長 杉田成道
 明けましておめでとうございます。
 旧年は、 イラク戦争後のテロ続発により、 不穏な空気が世界を覆い、 自衛隊派遣は戦争の現実を身近なものとし、 近くは北朝鮮問題が地雷原のごとく、 一触即発の危機を内包しつつ、 静かに進行しています。 戦後六十年にさしかかり、 世界の構図と、 支えていた価値観は大きく変化しているように思えます。
 経済を見ても、 ここ数年間、 あらゆる業種に質の転換を迫った流れは、 同時に価値観の転換を促し、 戦後ニッポンを支えてきたシステムは一変しようとしています。
 このような時、 テレビ界では地上波デジタルが産声を上げました。 八年後のアナログ波停止に向けて、 大きなうねりが津波のごとく押し寄せ、 旧来の構図を一掃するような予感すらいたします。 また、 日テレの視聴率事件は、 放送人としての意識のあり方を、 逆に突きつけられた問題でもありました。
 そのような流れのなかでは、 本年の変化の胎動の時期は過ぎ、 芽が形になって現れて来る年になるのかもしれません。 ユビキタスと呼ばれるようなテレビ、 携帯電話を軸とする電送革命は、 人々の生活習慣そのものの変化も促し、 ハードからソフトへの流れを一層加速させるでしょう。
 テレビ、 映画も含めた映像産業の激変は目前に迫っています。 それは、 我々が思うよりずっと早いスピードで表面化する予感が致します。
 テレビでは、 地方局の再編は必至であろうし、 BSも何らかの方向性を見いだす時期に来ているであろうし、 CSは地上波デジタルにともなってHD化も視野に入れなければならないであろうと思われます。 映画においてもデジタル化の波は一気に押し寄せるでしょう。 プラットフォームの多様化によって、 劇場から、 ビデオ、 DVD、 VOD (ビデオ、 オン、 デイマンド)、 PPV (ペイパービュー)、 地上波、 BS、 CSなど、 一つの作品を全体の流れの中で位置付け、 企画する必要に迫られるでありましょうし、 24PのHDからのフィルム化も加速するでありましょう。
 内容の面から見ますれば、 テレビでは、 若者のテレビ離れは激しく、 ドラマは全体として低調傾向にあります。 もうムードだけではもたなく、 構成のしっかりしたものを求められる傾向にあります。 映画においても、 シネコンによるスクリーン数の拡大にともなって、 突出したものとその他のものの勝ち負けの差が激しくなる傾向があるでしょう。
 ともに、 作品そのものの力を問われる時代になったと言えましょう。
 これから、 業界の再編いくつかの新会社の設立による資本の融合、 新しい制作形態、 新しいファンド (資本) など、 思ってもいなかった状況が生まれるかも知れません。 そこで求められるものは、 異業種と接点をもつことによって一本の矢を、 二本、 三本にブローアップする方法論と、 映像界の将来を見据えた確固とした世界観でありましょう。
 しかし、 どんな時代になろうと、 いや生きることに不安なこのような時代だからこそ、 人々に生きる糧を、 希望を与える作品が必要です。 それは、 我々以外の誰もやることができない。 そう思うと、 いやはや、 たいへんな時代になったものです。
 当協会も、 本年は会員数の拡大、 会員相互の密接な交流を図ることによって、 より広い視野を持って映像の時代をとらえる、 情報交換の場になるよう努力したいと願っています。
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