「最近のTV事情」 |
(株) 東京ニュース通信社 TVガイド編集長 稲垣 知哉 |

今回、 私は自分の立場=TV誌の編集長としてお話させて頂きたいと思います。 普段作り手側の皆さんとは違い、 俯瞰で見ている者として現状の感想を伝えるとともに、 今後の制作活動の一助になればと思う次第です。
私が10年前頃に比べて一番の変化と感じるのが、 TV誌にとっての番組制作のズレと宣伝活動です。 まず番組制作のズレですが、 率直に言って新しい番組制作の決定と進行が遅くなっている点です。 特にドラマ部門は全てではありませんが深刻ではないかと感じます。 と言いますのもTV誌では非常に多くドラマ番組の出演者の方を表紙にしますが、 その要因の一つはドラマの制作過程とTV誌の制作過程との歩調が絶妙に合ったことがあげられます。 例えば4月スタートの新番組について1月か2月から制作に入ることがだいたいでした。 そうしますとバラエティーや報道番組のように直前に制作準備が整うのと違い、 その時期以前にキャストや脚本のあらすじがあがっており我々に伝わりますからTV誌でもドラマチックに読者に伝える道筋が予測でき、 その結果スタートにあわせ表紙や内容を掲載でき、 その後の掲載も実現できました。 しかしながら今現在その予測が徐々にできなくなり表紙を飾ることも減少傾向にあると思います。 当然制作サイドの方々の理由も多々おありだと思います。 キャスティングの問題から原案の問題まで予算と絡めて思案していることと思います。 ただ最近よく耳にする話だと必ずしもそれだけではないのではと思うところがあります。 それは、 決定番組が制作に入った後も制作進行が遅く感じることです。 昔は連続ドラマの次回予告に収録が間に合わなかったという話はありました。 が、 最近は放送日にその日の内容の編集をしているということを耳にするとさすがにそこまではなかったと記憶します。 脚本の仕上がりに関してはそれ以前から遅さを感じていました。 昔は著名な作家先生の台本でも土台となるものは事前にきちんと仕上がっていました。 おそらく何かが少しずつの理由だったのでしょう、 制作プランが遅くなってしまった。 全体を見渡せば作品自体の遅れの帳尻はあっておりますし、 そうした実情があったとしても、 制作者側から見れば今もってしても問題でないかもしれません。 しかし少なからずそのズレでせっかくの作品が十分な理解、 疎通でもってTV誌等に伝わらなくなり、 結果多くの視聴者が見るきっかけを取り逃がしてしまっているとなると私は非常に残念に思うのです。
昨今TV誌事情も昔と変化し、 TV誌の数が増えたり、 編集者が若返ったりと制作サイドの方々に顔が見えなくなっている現状も憂えております。 それはTVガイドなら42年間、 制作サイドの方を応援する意味でコミュニケーションがあり、 より番組が盛り上がるアイディアを出すなど良きパートナーシップを結んでいたものです。 私としては今後、 そんな反省を踏まえ昔のようにタッグを組んで番組を盛り上げる役割を務めたいと思います。 今やTV誌も1000万部市場と言われる責任、 それも同時に感じてしまうのです。
次に宣伝活動についてですが、 過去、 優秀なプロデューサーの方はTV誌とタッグを組むことが非常に上手でした。 すでにメディアミックスこそ力あるパブリシティーの戦略と理解していたのだと思います。 そして、 そんな方ほど名物の名をほしいままにし、 歴史にドラマでもバラエティーでも報道でもジャンルを問わず名物番組を残しております。 そんな彼らの上手さは、 自ら行動し、 小まめに内容の詳細、 キャスティングの良さを伝えて、 それらをどう誌面化したらいいのかの問いかけまで含め宣伝活動をしていました。 しかし、 時の移りとともに次第にそうした意識のプロデューサーが少なくなり、 代わりにタレント事務所の方々が宣伝活動をしているのが現状です。
本来、 プロデューサーこそが作品の良さを自ら強く打ち出すほど絶大な宣伝効果があると考えます。 同時に宣伝活動の余裕があればあるほど多くの視聴者の目に作品が触れると思います。 それは雑誌でも同じで、 いくら編集が良いものを作っていると自負していてもそれを手際よく早くから活動することによってより多くの書店、 コンビニエンスストアに商品の内容が行き届き、 理解され、 多種多様な雑誌の中からも抜き出て販促活動に転換してもらえる。 私は少しの解消、 少しの努力で打開、 進展すると考えます。 逆転の発想をすれば、 抜け目なく効果が期待できると考えるプロデューサーがいれば、 この話を、 自分の番組に活かしてみよう、 試してやろうと思ってしまうのは私だけでしょうか。
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