日本映画テレビプロデューサー協会報2008年7月号

第32回通常総会を終えて

日本映画テレビプロデューサー協会副会長 重村 一

 昨年から始まった「国際テレビドラマフェスティバル」は、欧米に対しては勿論、アジアにおいても、韓国、中国等に対し立ち遅れた感のある放送コンテンツの海外流通市場を日本にも構築し、世界に向けて放送コンテンツを発信できるような体制を整備しようというものです。
  昨年はキックオフの年ということで、イベント中心の展開でしたが、今回は実質的に放送コンテンツの海外展開を目指し、TIFFCOMとの連携の一環として、「国際テレビドラマフェスティバル特設ブース」を設置するとともに、最大の眼目とするのが「アウォードイベントの展開」です。
  アウォードイベントは海外作品の招待、海外放送人の講演に加え、国内の作品、個人に選奨を行い表彰式・パーティーを演出することによって、マーケット参加者のインセンティブの向上を図ります。
  今回創設するこの「アウォード」は、これまでの選奨・コンテストにはないコンセプトを持たせたいと考えます。
  それは、
  第一に、テレビドラマ制作者自身の投票がベースになること。
  第二に、選奨に際し、作品性はともかく、国際性、時代性、商品性を重視すること。つまり、判断の基準は海外で売れそうなもの、ないし、海外で見てもらいたいものとすること、です。
  第三に、これまで選奨等で光の当たらなかったシリーズ、連続ドラマに注目することです。いうまでもなく、海外展開を図る場合、単発よりも一定の量のある、長期間の連続ドラマが有利になるからです。今回、単発グランプリに加え、連続ドラマのグランプリを設けます。
  第四に、作品賞をジャンル別に分けて選奨します。これもコンテンツの海外展開を有利に進めるためです。
  第五に、グランプリ受賞作品に対し、海外展開のための外国語台本、外国語字幕の制作費としての賞金を授与し、このアウォードの持つ意味合いを担保します。
  第六に、選奨選考の過程で、制作各社の海外販売担当者の意見を聴取する機会を作り、このフェスティバルの趣旨を生かします。
  今回の「国際テレビドラマフェスティバル」は、以上のような様々な新しい視点を導入し、今後の発展を図ってゆくつもりですが、今後長く我々自身のイベントとして定着させていくためには、何よりも確実な第一歩が必要です。
  その第一歩が今回の「アウォード」に向けた投票です。私たち映画テレビ制作者自身が、日本のテレビドラマの将来のありように向け、自分の所属会社の枠を超え、広い視野と展望を持ち、公平な判断を以ってアウォードの投票に参加することだと考えております。
  日本のテレビドラマの海外展開のため、ドラマの将来に向け、皆さんの確かな「目利き」を期待しております。よろしくご協力ください。

2008年アクターズセミナー開催に向けて

(2008年9月21日開催)
松竹 中嶋 等

 撮影現場では、監督よりもスタッフの方が口さがない。「誰だよこんな下手な役者連れてきたのは」「二行以上のセリフ言えねぇじゃねぇか」 撮影でNGを連発する俳優がいたときの現場スタッフの痛烈な言葉だ。芝居も台詞もなってないその俳優をキャスティングしたプロデューサーは、その場にいて針の筵に座らされたような気分になる。そして隠れるようにヒヤヒヤしながら監督のOKが出るのをひたすら祈るしかない。プロデューサーなら一度は体験したことのある辛いひと時だ。
  ドラマのキャスティングは複雑な心境で行う作業である。全ての出役を自分が知っている俳優でキャスティングすることはほぼない。プロダクション行政や上からのお仕着せといったしがらみでもって、未知の俳優をキャスティングする場合が多々ある。結果運悪く(だいたいそうなるが)、先程のような冷たいスタッフの視線に晒され、ヒヤヒヤで肩身の狭い気分になるのである。「これは抱き合わせなんだ、使えと言われたから使ったんだ、俺のせいじゃない」と言い訳することもままならず、辛抱する羽目に陥る。やはり、しがらみなんかに負けず、力量のある既知の俳優を使っておけばよかったぁ、いたく後悔するのである。
  アクターズセミナーは、キャスティングを担うプロデューサー諸氏に、より多くの俳優を知ってもらうためのイベントである。今までもこのセミナーは、プロデューサーと俳優との沢山の出会いを提供してきた。今回はプログラムに修正を加え、一層のコミュニケーション強化を図る。先ず、「ワークショップ」の講師を、前回までのような演出家や俳優ではなく、現職のプロデューサー(今回はNHK遠藤理史氏)に務めてもらうこととした。また、「出会いの広場」はオーディションの終了後に行うことにした。これはプロデューサーが直接俳優たちと接する際、参加者の演技を見たあとでの方が会話しやすいといった意図からだ。
  前回までの実績からいって、参加者はほぼ無名の俳優だが、演技においては実力をもった連中が集うものと予想される。そんな俳優たちと直接対面し、未知を既知へと変える。もう針のむしろは御免である。協会のみなさん、是非参加されたし。
  撮影現場では、監督よりもスタッフの方が口さがない。「誰だよこんな下手な役者連れてきたのは」「二行以上のセリフ言えねぇじゃねぇか」 撮影でNGを連発する俳優がいたときの現場スタッフの痛烈な言葉だ。芝居も台詞もなってないその俳優をキャスティングしたプロデューサーは、その場にいて針の筵に座らされたような気分になる。そして隠れるようにヒヤヒヤしながら監督のOKが出るのをひたすら祈るしかない。プロデューサーなら一度は体験したことのある辛いひと時だ。
  ドラマのキャスティングは複雑な心境で行う作業である。全ての出役を自分が知っている俳優でキャスティングすることはほぼない。プロダクション行政や上からのお仕着せといったしがらみでもって、未知の俳優をキャスティングする場合が多々ある。結果運悪く(だいたいそうなるが)、先程のような冷たいスタッフの視線に晒され、ヒヤヒヤで肩身の狭い気分になるのである。「これは抱き合わせなんだ、使えと言われたから使ったんだ、俺のせいじゃない」と言い訳することもままならず、辛抱する羽目に陥る。やはり、しがらみなんかに負けず、力量のある既知の俳優を使っておけばよかったぁ、いたく後悔するのである。
  アクターズセミナーは、キャスティングを担うプロデューサー諸氏に、より多くの俳優を知ってもらうためのイベントである。今までもこのセミナーは、プロデューサーと俳優との沢山の出会いを提供してきた。今回はプログラムに修正を加え、一層のコミュニケーション強化を図る。先ず、「ワークショップ」の講師を、前回までのような演出家や俳優ではなく、現職のプロデューサー(今回はNHK遠藤理史氏)に務めてもらうこととした。また、「出会いの広場」はオーディションの終了後に行うことにした。これはプロデューサーが直接俳優たちと接する際、参加者の演技を見たあとでの方が会話しやすいといった意図からだ。
  前回までの実績からいって、参加者はほぼ無名の俳優だが、演技においては実力をもった連中が集うものと予想される。そんな俳優たちと直接対面し、未知を既知へと変える。もう針のむしろは御免である。協会のみなさん、是非参加されたし。

映画「靖国」顛末記

東宝映画  阿部 謙三

 6月26日(火)に東宝撮影所にて「第四回プロデューサーズ・カフェ」が催されました。梅雨の合間、なんとか雨にも降られずに50名を越える参加者をお迎えして、スタジオ内の見学からスタート。No8スタジオからNo3、No4、そして新装となったアクターズセンター、プロダクションセンターと、時間の都合により駆け足となりましたがご案内しました。(ポスプロを見たいとのご要望もありましたが今回は作業稼働中で叶わず申し訳ありませんでした。)
東宝映画 富山省吾プロデューサー引き続きセンターホールにて東宝映画 富山省吾プロデューサーによる講演を行いました。撮影所の沿革から日本映画の現状とこれからの展望といった充実した内容の一時間であったと思います。大先輩の皆さんをはじめ、若い方々も多く出席いただいていたので時間に余裕があれば、もう少し意見交換やディスカッションを行い、交流の場となっても良かったのかなとも思いました。
その後、カフェテリアに場所を移しての懇親会となりました。熊谷事務局長の溌刺とした御発声のもと杯を重ねました。この会にも多数ご参加いただけてホッとしてお講演風景ります。
旧交を温めたり、名刺交換を通し新しい出会いの機会となっていれば幸いですし、ここから輪が拡がっていけばいいなと思います。普段お会いする機会の少ない方たちと、短い時間ではありましたが打ち解けた雰囲気になっていたのではと思っております。
今回はいままでのカフェとは、多少趣向や本来の趣旨と違ったものになったかもしれませんが、参加者の皆様に満足していただけていたらと願っております。ご尽力いただいた方々に改めて感謝いたします。
(また今回、いろいろと御配慮、御協力いただいた⑭東宝スタジオサービスの皆様にも御礼申し上げます。)

只今撮影中

近代映画協会  新藤次郎
近代映画協会 新藤次郎「石内尋常高等小学校 花は散れども」

 この映画は、昨年9月、10月の2ヶ月間で撮影し、今年2月に完成、9月27日より公開します。撮影時、監督新藤兼人は95歳。監督最後の作品のつもりで企画しました。動き始めたのは05年からで06年春に製作準備に入り、夏にクランクイン予定でロケハンおよびスタッフを拘束しましたが、不測の事態が発生。監督がクランクイン直前に体調を壊し2ヶ月間の入院をしました。したがって、イン1ヶ月前に「延期」を決定。この業界で「延期」は「中止」と同義語なのはご存知のとおりです。しかし、奇跡的に回復しキャスト・スタッフに状況を説明、再び準備を開始しました。製作に参加していただく共同製作者には監督の状態とスケジュールを説明し、リスクを共有していただけたのは大感謝でした。
  映画の内容は、題名にもなっていますが新藤監督のふるさと広島の石内小学校の恩師とその生徒たちの卒業30年後の再会をドラマにしたものです。
  95歳の監督が2ヶ月間のオールロケに耐えられるか!が最も重大な課題でした。その副産物として、いつものスタッフとおなじみの出演者たちということもあり、監督の体調への配慮が全員のチームワークを生むきっかけに成り、今まで体験をしたことがないベストなチームが生まれました。
  監督が車椅子で現場に入る朝、スタッフはまず顔に注目します。笑顔ならヨシ、笑顔が見えないと体調は大丈夫かと騒ぎになりますし、海岸の撮影では車椅子が移動する方向にコンパネを人海戦術で敷き詰め日陰を設営する、職能は関係なしに全員での作業でした。
ロケーションは広島市を基地に山口県岩国・鳥取県浜田・奈良県春日山・静岡県大井川・広島県を東西南北に十数か所を走り回り、監督車の走行距離は8000キロを越えました。当然、監督の体調も発熱等の異変がたびたび起き、嫌がる監督を病院に見せる場面が二度。しかし、監督はインディペンデントで永年製作をしていますので、途中で製作を中止することの結果を十分承知しています。「石内尋常高等小学校 花は散れども」57年続いてきた近代映画協会が当然つぶれます。気力と体力の勝負でした。私自身初めて完成するかを本気で心配しました。プロデューサーの仕事の主なものはクオリティー高く作品を完成させるために、トラブルに対して事前にどれだけ準備をできるかに懸かっていると思います。撮影台本に「監督健康管理」タイトルで孫娘の風を配し毎日のケアとケンカ相手をしてもらい、座布団に座ったまま現場から現場へ移動するイメージでスタッフ全員でケア、本人も最初は車椅子で現場に入るのに抵抗があったようですがすぐに慣れたようです。
  ラストカットは、大井川鉄道で本当に本編のラストカットを撮影しました。無事に終了。心底ホッとしました。監督も満面の笑顔でホッとしておりました。
スタッフ・キャストと関わってくれたすべての人に感謝です。

私の新人時代

フジテレビ 瀧山 麻土香

フジテレビ 瀧山 麻土香 研修後、配属されたのは第一制作部(現ドラマ制作センター)だった。理由は「丈夫そうだったから」。
当時、ドラマの現場に女性社員は一人しかいなかった。その唯一の先輩、宮本理江子さん(旧姓:石坂)は、山田太一氏の愛娘というだけでなく、20代の頃からセンス溢れる演出力を発揮してきた、タフで素敵な監督だった。宮本さん以降、何人かの女性が配属されたが体力的に続かず去って行った。
私を現場に送り込んだ人事の判断は、ある意味間違っていた。丈夫なだけではダメなのだ。眠い、寒い、なんで怒られているのかまったく分からない。自分がどうやら無能なADらしいと気付くのにそう時間はかからなかった。
そんな中、唯一の楽しみは届いたばかりの台本を盗み読むことだった。本打ち用に台本のファックスをコピーしてプロデューサーや監督に渡す。一番下っ端の私は、旧式なファックスの機械の前で、誰よりも早く次の回のストーリーを知るささやかな権利にどきどきした。また、本打ちのたび原稿の内容が変わっていくのが不思議と面白かった。
入社2年目、「あすなろ白書」という作品についた。自分と同年代の出演者による青春ラブストーリーだったので、すごく身近に思えた。
ある日のこと、私は次のロケ現場の先発をしていた。撮影はかなり押していて、一人で現場に入った主演のひとり、筒井道隆君はまだしばらく待つことになりそうだった。次の回の決定稿を読んでいた筒井君は、「すげぇ意外」とつぶやいた。前日の夜中、決定稿に入れるファックス原稿を盗み読んでいた私は、すかさずそれに同意した。私は、筒井君に自分が予想していたストーリー展開を話した。しかも、セリフ込みで。筒井君は「それ、面白いね」と笑った。多分、今思えば思いやりの精神から。
時間を持て余していたこともあり、二人の仮想本打ちは盛り上がりをみせた。私は自分の台本に鉛筆で線をひき、余白に思いついたセリフやト書きを書き込んだ。調子に乗った二人は、パロディ劇のように読み合わせまでしていた。と、そこにプロデューサーの亀山千広さんが入ってきた。「なんだよ、随分楽しそうだな」と言われ、「実は、こんなふうにしたら面白いんじゃないかと思って」と鉛筆の書き込みを無謀にも見せた。
「あすなろ白書」の脚本家は、のちにラブストーリーの神様と言われた北川江吏子さんだった。その日の撮影終了後、こってり絞られたのは言うまでもない。しかし、次から撮休日の本打ちのお茶くみは私になった。「意見があったら役者じゃなく俺に言え」と亀山さんは怖い顔で言った。
いい会社かも、新人の私はそう思った。

事務局だより

◎正会員入会

賛助会員入会

◎退会

◎訃報

功労グループ(EX)の八田榮一氏は去る七月九日逝去されました。
七十六歳でした。ご生前の功績を偲び、心からご冥福をお祈り申し上げます。


第45回ゴルフ会開催のお知らせ

2008年秋の親睦ゴルフ会を次により開催致します。ぜひご参加下さい。

 締切後組合せ表及び詳細を参加者の皆様にお送り致します。

※お願い コンペ参加の申込みをされた後、万一都合により参加できなくなった場合は出来るだけ、代わりの方を推薦下さるようお願い致します。
(社)日本映画テレビプロデューサー協会 親睦委員会  TEL03─5338─1235

インフォメーション

◎会議の記録と予定

7月16日(水) 第2回定例理事会(東映本社)
8月18日(月) 会報委員会(事務局)
9月4日(木)  エランドール賞委員会(事務局
9月17日(水) 第3回定例理事会(NHK・EP)
9月22日(月) 会報委員会(事務局)