社団法人 日本映画テレビプロデューサー協会 会報 2009年7月号

第33回 通常総会を終えて

会 長 杉田 成道

会長 杉田成道 通常総会も33回目を数えるということで、これは映画とテレビが合同して33年になるということです。たいへん協会の歴史を感じます。こうして映画とテレビのプロデューサーが一堂に会する協会というのは当協会しかないですから、たいへん貴重な存在と言っていいのではないかと自負しています。
さて昨年は米国発の経済ショックが世界を覆い、日本経済もあおりを受けて四苦八苦しています。その中で映画は「おくりびと」がアカデミー外国語映画賞を受賞するという快挙を成し遂げました(もちろん当協会のエランドール賞も受けています)。誠にご同慶の至りですが、これは一つは映画の観客層が五十代以上が半分を占めるというような、ここ数年来の観客動向の大きな変化が影響していると思います。中高年層が映画に回帰することによって、我々製作者の意識も大きく変わってきたと言っていいと思います。
ここ数年来ですが、企画は大きく二分化されている感じです。若者向けと中高年向けです。後者に関しては、人生の機微や生きる意味といった重厚なテーマのあるものが受け入れられています。企画も大きく幅を広げてきたというのが、映画人の方々の実感でしょう。より本質的なものを求めて良いドラマを創っていきたいという方向が生まれてきていると思います。やはり映画は心に迫るドラマを創るということが主流になってこそ、我々の存在意義があるということで、プロデューサー諸氏の気持ちにむしろ時代がだんだん寄り添ってきたと思います。
一方、テレビを見ますと、広告収入が激減し東京キー局の中で初めて赤字決算が出るなど、50年目にして大変厳しい状況になっています。皆さんご存知の通り、今年度の各局の予算を見ると、驚くべき制作費の抑制が行われています。各社ともドラマ制作では様々な試練を迎えており、その結果、発想の転換をせざるを得なくなっています。こういう時代だからこそ必要に迫られて、新しい流れがテレビの中から生まれてくるようにも見受けられます。一つはテレビと携帯の融合、あるいはテレビと映画が一体になった企画、混沌とした時代だからこそ、テレビもこのまま座していたらいずれ死にゆく運命にあるという危機感が、ある意味では出口を求めるエネルギーになると思います。多分テレビはこれから変わっていくでしょう。変わるに違いないと思っています。
第33回通常総会 会場風景時代は混迷の一途を辿り、経済も政治も環境も一触即発の危機を秘めながら動いています。人々は生きる希望を求めていて、人と人の繋がりや愛情をいつの時代よりも強く求めているようです。言ってみればプロデューサー諸氏の出番がより求められているのではないでしょうか。皆さんの作品に対する愛情が一人一人の心を打つ時代になってきています。
こんな時代だからこそ、今まで競争相手だった相手とも競争だけでなく作品の想いを語り合うとか、互いに情報交換し合う雰囲気が必要になってきています。当協会の存在意義は、さらにさらに大きくなると考えます。本年は、勿論エランドール賞を実施するとともに、国際ドラマフェスティバルで海外への日本ドラマの普及を推進したいと考えますし、プロデューサーズ・カフェを通じて大きな輪を作っていく必要があると感じています。会員の皆様のさらなるご協力をお願いいたします。

新理事の顔ぶれ

新理事の24名の方々を、ご紹介いたします。

会長

副会長(3名)

監  事(2名)

会長 CX 杉田  成道 副会長 東映 坂上順 副会長 D(ニッポン放送) 重村 一 副会長 NHK 西村与志木 監事 TBS 鴨下 信一 E(P・D・S)工藤  英博

常務理事(6名)

常務理事 東宝(東宝映画)本間 英行 常務理事 NTV 奥田 誠治 常務理事 TBS 貴島誠一郎 常務理事 CX 大多 亮 常務理事 B(電通)島本 雄二 常務理事 E(彩の会)小林 俊一

理  事(12名)

理事 東宝(フリー) 福島 聡司 理事 東映 香月 純一 理事 松竹 中嶋 等 理事 角川 土川 勉 理事 日活 谷口 公浩 理事 NHK 若泉 久朗
理事 NTV(日テレアレックスオン) 神蔵 克 理事 EX 桑田 潔 理事 TX 小川 治 理事 A(近代映画協会) 里中 哲夫 理事 C(仕事) 小野 伸一 理事 F(オフィス森江) 森江 宏

新年度の委員会体制

 新しい時代の協会のありようを考え、時代の要請に応じた新事業を開発する、会長直属で機動力のある新しい委員会が出来ました。組織強化・事業開発委員会です。これまでの委員会も強力なメンバーでスタートします。

        〈カッコ内、委員長〉

新事務局長の挨拶

渡辺 紘史

 事務局に入って初めての委員会の後で、委員の一人が「渡辺さんは75歳くらいでしょ」と言ったという。冗談じゃない。行きつけの飲み屋の女将は、私を55歳と信じている。
本当は、今年7月に65歳になる。仕事歴40年余り。NHKで主にドラマの演出・制作を担当したが、ドラマ以外の仕事も多かった。教育、音楽、情報、ドキュメンタリーに至るまで。後半20年間は、放送局長、情報公開制度の打ち上げまでかかわった。おまけに退職後は出版業までも。ドラマ一筋の皆さんと違って、なぜ落ち着きなく色々なことに関わってきたかというと、器用で、意欲があったわけでもなく、私はモラトリアム型の人間で、いつも自分をこうだと、決めたくない=決められたくないと思ってきたからに相違ない。今でも、ふらふら漂っているのが好きなのである。まともな人が、そんな漂流老人の本当の年齢など当てようがないのだろう。
22年前、プロデューサーの私は「朝ドラ」の企画書にこう書いた。「団塊世代の漂流する家族を描きたい。新しい時代に向かう、家族一人ひとりの期待と不安のドキドキ感を丁寧に紡ぐ。ドキドキしていれば、常に青春。ドラマのタイトルは青春家族」
出戻った協会で事務局長を引き受けたのは、ドラマの原点で味わったドキドキ感を再度味わおうというより、実は65歳の私自身をあらためて目眩ましたいとの魂胆なのである。
事務局効率化のため、非常勤の事務局長です。これまで以上に事務局次長の打越さんの力が必要となります。今後とも、よろしくお願いします。

只今撮影中

『劔岳 点の記』
東映 プロデューサー   菊池 淳夫

 長野県松本市の松本エンギザで行われた「劔岳 点の記」の試写会におうかがいした。
私は現場プロデューサーなので、地方での試写会に立ち会う機会があまりないのだが、松本での試写にはロケの際にお世話になった山岳ガイドの方々が招待されていたこともあり、劇場まで赴いた。
上映に先立って、松本エンギザの平形友宏支配人がテスト上映を見せてくれた。
映画館のスクリーンの大きさや明るさには世界的基準があるのだが、どうしてもそれぞれの小屋の事情によって多少誤差が生まれる。我々作り手は、その誤差も見込んで画角や音響を設定するのだが、やはりお客さんには現像場の試写室と同じ完璧な状態で観て欲しい。
果たして、松本エンギザはいかに。
映画はスクリーンの中に、木村大作監督がこだわった微妙な画角設定と照度でピタリと収まっていた。音響も、ダビングルームで聞いた状態と寸分違わない。
平形支配人は、この映画の上映が決まると、木村さんが試写を行った他の劇場に自ら問い合わせ、木村さんからの上映に際しての注文や注意点を聞いたそうだ。
「お客さんに少しでもいい状態で観て欲しいですし、何よりも木村さんとスタッフの皆さんが命がけで撮影された映画をきちんと上映したいと思いました」(劒岳での撮影風景 左から二人目が木村大作監督、右端が筆者 )
平形支配人は、木村さんのインタビューやメイキング映像を観て、心打たれたという。
この映画のスタッフと俳優は、みな木村大作という映画人の熱い魂に魅かれて参加した。
木村さんの強烈な個性、毒舌、限界を越えた要求。みな、そのことを知りながらも高度三千m、二百日に及んだ過酷な映画作りに参加した。それはなぜか。木村さんの映画の作り方が一番真っ当であり、木村さん自ら「行」とまで呼んだ撮影の先に、必ずや素晴らしい映像が生まれることを信じていたからだ。
苦行の撮影を乗り切ったスタッフ、キャストは映画のエンドロールで、全ての肩書きを外して「仲間たち」というただ一つくくりでクレジットされている。
映画が完成すると、木村さんは自家用車を自分で運転して47都道府県全てを回るという前代未聞のキャンペーンを行った。製作現場だけでは収まらない、宣伝や営業の分野でも木村さんは熱い映画魂を振りまいたのだ。
その結果、宣伝部、営業部はもとより劇場の方々も映画の「行」に参加することとなった。本当の映画作りとは何か、観客に映画を見せるということはどういうことなのかを、あらためて考えていただく機会を得てもらったのだと思う。
エンドロールにクレジットされることはないが、「仲間たち」は、松本エンギザの平形支配人をはじめ映画に関わるあらゆる分野で間違いなく増えている。

私の新人時代

TBSテレビ 松原 浩

TBSテレビ 松原 浩 「素直」であるべきか、「生意気」であるべきか。それが十数年前、夢叶いテレビマンの端くれとなった私の、最大の懸案だった。
ADという仕事が、「非人道的」処遇に置かれることは、そりゃモチロン、わかっていた。眠れないこともいい。休めないことも、まあいい。問題は…先輩に「ケツを出せ」と言われた時、ケツを出すべきかどうか。笑ってはいけない。下っ端ADにとって(特に、なぜかバラエティ番組に配属されてしまった私にとって)、それは、極めて現実的な問題だったのだから。
先輩の無理難題に、ハイわかりました~と「素直」に応えれば、この業界に必須の柔軟性、ヘコタレない強さを示せる。一方で、それ違うんじゃないでしょうか、と「生意気」に抗することも、ちゃんと考え自分の意見を持つADでありたい、と考えた私には、あり得る選択肢だった。そもそも、私は笑ってケツを出せるキャラではない。多分、笑顔が痛々しい。
この「一人葛藤」は、やがて現実のものとなる。ある現場で、待機中居眠りをしてしまった私と同期のG君とに、上司が、「罰としてパンチパーマにしてこい」と命じたのである。
私は、悩んだ。美容室を予約した。帽子も買った。でも…結局、パーマは止めた。
翌朝、上司に「自分の考え」を述べた。我ながらメンドクサイ奴である。上司は怒ったが、「それなら、居眠り中働いていた全スタッフに謝ってこい」ということになった。私は、音声さん電飾さん、スタジオ警備の方まで、120名超に会い、事情を話し、許してもらった。こうしてド新人の私は、電飾室が警備員控えが、どこにあるかを知り、一つの番組を、本当に多くのスタッフが創っていることを、実感したのである(それが上司の狙いだったのかも)。
同時に居眠りした同期G君は、見事なパンチパーマで現れた。頭頂をサリーちゃんのパパ風に尖らすアレンジつき。皆、大ウケだ。私は、とことん「素直」に徹した彼を、心から尊敬した。やがて彼は、数々のバラエティ番組をヒットさせる、名プロデューサーとなる。
私はと言えば、今も「生意気」に、青臭く、ドラマを創っている。他のプロデューサー諸氏より、かなり理想を語る。依然として、ややメンドクサイ奴である。
人は、変わらないものだ。

事務局だより

◎正会員入会

◎退会

◎除名

◎訃報

国際ドラマフェスティバルの投票について

 今年もアウォードのための投票をお願いすることになりました。協会報に同封されたハガキに投票し、締切りまでに是非ご返送下さい。

2010年度協会会員手帳について

「2010年度協会会員手帳」の編集が始まります。掲載事項変更希望の方は8月末日までに事務局へご連絡下さい。

インフォメーション

◎会議の記録と予定