社団法人 日本映画テレビプロデューサー協会 会報 2010年4月号

2010年 エランドール賞受賞の言葉

 受賞された6名の方々に、受賞の言葉をいただきました

プロデューサー賞

   「受賞に関して」
彩の会 小林 俊一

 山崎豊子原作の「沈まぬ太陽」が作品賞・プロデューサー賞に選ばれたと電話で聞いたのは、長崎県・島原城のロケ先だった。「沈まぬ太陽」がノミネートされた時から選考委員会を欠席した。丁度、ロケもあり出席しない方が公平だと考えた。「沈まぬ太陽」は、出版されると直ぐ手をあげたのは故・徳間社長だった。それから何人かのプロデューサーが企画したが、日航の人事、そして御巣鷹山遭難事故という現実の問題に直面して実現出来なかった。アフリカ篇から始まり会長室篇迄の膨大な原作を前後篇として各三時間位の映画を受ける配給会社があるか? 現実は厳しい。私はテレビで二十六週から五十二週あれば山崎作品のテーマ、主人公の生き方、御巣鷹山の遺族のエピソード迄撮れると思ったが全テレビ局は拒否した。スポンサー日航と、日本を動かした政治家たちの目に見えない圧力は、私がかって田宮二郎で「白い巨塔」を企画した時、スポンサーの或る製薬会社が脱落した時の比ではなかった。先ず、飛行場で撮影出来るかの問題であった。幸いに友人の黒井和男氏が、当時の角川映画の社長だったので話をした。二人でタイのトムアン空港、コーラド空港を見てコーラド空港には当時のボーイング707が並んでいたのを見て、これは実現出来ると確信をもった。黒井氏は間もなく角川映画から角川ホールディングスの社長になったが、角川歴彦氏の大英断によって、長沼六男カメラマン、土川勉氏のスタッフと共に、映画は完成した。私にとって受賞は二回目で、前回は田宮二郎の「白い巨塔」で、いづれも山崎豊子さんの原作であった。私の映像の歴史は、山崎文学に依る所が大である。

プロデューサー賞

角川映画株式会社「沈まぬ太陽」 エグゼクティブプロデューサー 土川 勉

 この度は、栄誉ある賞を戴き誠に有難うございます。
 映画「沈まぬ太陽」は十一年前の東映と大映の合同チームによる壮大な企画でしたが、中心的存在の徳間康快社長の死去などにより一旦中断しました。しかし原作者である山崎豊子先生の「私は『沈まぬ太陽』の映画を観るまでは死ねない」という執念はその後もずっと続いていました。その執念が後押ししたのか、四年前角川映画で再び立ち上げ、諸問題を乗り越え昨年完成、公開の運びとなりました。映画化不可能と言われた時もありましたが、関わりを持った全ての人の執念や最後まで参加できなかった人たちの無念が映画の完成に導いてくれたと思っています。多謝。

プロデューサー賞

   「エランドール・プロデューサー賞を頂いて」
NHKドラマ番組部 内藤 愼介

 たいへん名誉ある賞を頂き、心より感謝を申し上げます。
 今回、皆さんから評価いただいた「天地人」は、百万円の仕事と一億円の仕事があった時に、己の価値観さえあえば迷わず百万円の仕事を選ぶ男たちを描いたドラマでした。お金ではなく、この人と仕事をしたい、こういう仕事をしたい。自らが信じる価値を貫きたい…。登場人物たちの姿にそんな思いを込めた作品が、多くの思いや情熱を持って作品に携わっているプロデューサーの皆さんから高く評価して頂けた事は、大いなる喜びです。
 主役・直江兼続を演じてくれた妻夫木聡さんをはじめとするキャストの皆さんの「熱」なくしては、この作品は成り立ちませんでした。また、スタッフを始め、この番組に関わって下さった全ての人々の「和」があったからこそ頂けた今回の栄誉だと思っております。感謝と尊敬の念でいっぱいです。本当にありがとうございました。

プロデューサー奨励賞

TBS 石丸 彰彦

 この度エランドール賞という名誉ある賞に選出して頂き、大変光栄に思っております。
 と同時に身の引き締まる思いでもありますが、これも全て作品・キャスト・スタッフとの出逢いのお陰だと今、感謝しています。
 プロデューサーという業種は、 どれだけの人と出会うか。 どれだけの才能と出会えるか。 どれだけの信頼関係が築けるか、
 という事が勝負のポイントだと常々思ってきました。
私はラッキーです。本当に人に恵まれました。
 これからも、ドラマや映画を通して新たな出逢いがある事を願いながら、いつの時代でも懸命に生きる事の大切さを伝え、これからも人間の輝きを届けることができればと思っています。
 この度は、本当に名誉ある賞を頂きありがとうございました。
 最後に…次は奨励賞でない、プロデューサー賞をとるべく頑張ります。

プロデューサー奨励賞

   テレビ「アイシテル~海容」
日本テレビ ドラマ局プロデューサー 次屋 尚

 このたびは、プロデューサー奨励賞をいただき、身に余る光栄と責任の重さに身の引き締まる思いをしております。「アイシテル~海容」は2009年4月クールで放送された連続ドラマで、もう一年も前の作品です。賞を戴くということは、自分が好む好まざるに関わらず(無論私は「アイシテル」を愛してるのですが)、この作品が恐らく一生私に付いてまわってくるわけで、今でも現場のスタッフの熱気や、体当たりでお芝居に取り組んでくれた役者さんの表情や姿を鮮明に思い出します。とても大変だったけれど、とっても有意義な作品だったんだなと、今更ながら実感しています。今後、作品作りに行き詰まったとき、きっとこの作品が私を指南してくれて、そして戴いたこの賞が励みとなり、いくつかの波を乗り越えていけるんだろうなと、そんな気がしています。この度は本当にありがとうございました。

プロデューサー奨励賞

株式会社フジテレビジョン ドラマ制作センタープロデューサー 村瀬 健

  このたびは「エランドール・プロデューサー奨励賞」という、ドラマプロデューサーにとってこれ以上ない栄誉ある賞を頂き、本当にありがとうございます。これまで私は、日本テレビ、そして2年前からお世話になっているフジテレビと2つのテレビ局で数々のドラマをプロデュースさせて頂いて参りました。そのどれもが、スタッフ、キャストの皆さんを始めとした多くの方々の力をお借りして、多くの方々に助けられて、なんとか成立した作品ばかりです。受賞作となった『BOSS』もそうです。天海祐希さんを始めとするキャスト、光野道夫監督を始めとするスタッフの皆さんが私の想像など遙かに超えた素晴しい世界を作り出して下さったおかげで、最高の作品に仕上がったと思っています。未熟なプロデューサーの私を助けて下さった多くの方々にこの場をお借りして心からお礼を申し上げたいと思います。本当にありがとうございました。

只今撮影中

NHKドラマ番組部 谷口 卓敬
NHKドラマ番組部 谷口 卓敬
『ゲゲゲの女房』

 連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」は、3月29日からの放送開始を間近に控え、順調に撮影が進んでいます。内容については多言を要さないかもしれません。漫画家・水木しげるさんの奥様である武良布枝さんが著した『ゲゲゲの女房』を原案に、ある一組の夫婦が歩んだ長い年月を、妻の目を通して感動深く描くドラマです。
 主演の松下奈緒さんはノーブルで都会的なイメージをまとった方ですが、今回のドラマでは、豊かな自然の中で育ち、引っ込み思案で、他人よりも身長が高いことを気に病む消極的な女性を演じていただいています。いままでの松下さんの演じてきた役柄とはだいぶちがうキャラクターですが、とてもいい感じにフィットしていると思っています。キャスティングが決定したときに、松下さんと会って話をする機会があったのですが、実は松下さんご自身も関西の緑深い土地で幼少期を過ごされ、人工の光のほとんどない夜の闇を体験として知っているとのことでした。過去にトーク番組などで松下さんを見たときの印象から、飾らない人柄の女性なのではないかと勝手に思っていたのですが、これがまったくその通りで、ほんとうに広く伸びやかな空間で素朴に、そして素直に育った気持ちのいい人、という感じでした。
 松下さんが朝ドラのヒロインとして愛される人であることを確信するとともに、長い時間をともに過ごせることを楽しみに思える、そんな彼女とのいい出会いができたことをとても嬉しく思いました。
『ゲゲゲの女房』 松下さんが演じるヒロイン・布美枝のパートナーとなるのが、漫画家の水木しげる(役名・村井茂)です。
 茂を演じる向井理さんも、個性豊かな茂というキャラクターに全力で取り組んでくださっています。 茂役を誰にするかが、ドラマの全体の印象を左右する非常に重要なポイントとなることは、企画を立ち上げたときから意識してはいました。取材で何度も調布の水木プロを訪ね、実際の水木先生にお会いし、その笑顔、伸びやかなお人柄、人間的スケールの大きさにふれるにつけ、「いったい誰が水木さんを演じることができるのか」と考えたものですが、向井さんが出演していた男女二人だけの朗読劇を見た記憶がそのときによみがえりました。屈託のない笑顔、しっかりとした芯の強さなど、水木先生から感じられる魅力とぴったりと重なり合うものを向井さんに感じ、ぜひ茂役を彼に、と思ったのです。向井さんの水木しげるを思いついたときには我ながら興奮し、これだ! と叫びたくなったことを記憶しています。
 とても魅力的な夫婦が誕生したと思います。ふたりを取り巻く多くの共演者のみなさんも、素晴らしい顔ぶれです。まもなく、「ゲゲゲの女房」という大きな船が出港します。ぜひ多くの方々に、長く楽しい船旅をお楽しみいただければ幸甚です。

私の新人時代

東宝 佐藤 毅
東宝 佐藤 毅
「吉祥寺寮にいたころ」

  吉祥寺の伊勢丹が閉店するという。二十年近く前、その前を通って出勤した日々を思い出す。時はバブル。吉祥寺は当時も人気の街で華やかだった。寮は駅北口から徒歩10分、閑静な住宅街にあった。会社が丸ごと借り上げた新築白塗りのレオパレス一棟で、住人は同期の新人八人のみ。それまで中野築三十年六畳一間トイレ共同にいたから、まるで別世界だった。しかもそのアパートは大学に近いせいもありクラブの面々のたまり場になっていたから、勝手には誰かが出入りしない一人部屋は快適この上なかった。
 入社後半年はずっと研修で、学生の頃より時間があった。会社の同期や先輩方もよくいらして一緒に騒いだ。寮の全員で沖縄旅行もした。南の島なんてバカにしていたし飛行機も苦手なので内心いやいやだったが、行ったらとてもよかった。一度カギを忘れ、真夜中塀伝いに二階の窓から自室へ帰還なんてこともした。翌朝ぞっとしたものだ。行きつけの店も増えていった。クリーニング屋、そば屋、すし屋、喫茶店。どれももう残ってない。部屋に風呂はあったが、よく通った近くの銭湯で高校の先輩と遭遇したりもした。まだ同じ所に住み、寡作の漫画家を続けているこの先輩ぐらいだ、変わらないのは。当時の手帳を見ると「10時~18時15分 働く」などと書いてある。顔から火が出る。研修中はとても働いてなどいなかった。働いた気になっていただけだ。
 今からやはり二十年後に、二十年前をふり返ったらどう思うだろう。まさか同じ思いはするものかだし、悔いも残したくないこの頃だ。

~事務局だより~

◎映画館入場料金割引のお知らせ

  この度東京都興行生活衛生同業組合のご支援により新年度の加盟館割引入場料が以下の通り決まりました。

第48回 プロデューサー協会 ゴルフ会開催のお知らせ

皆様ふるってご参加下さい!

※初めて参加される方は事務局までご連絡下さい。

   (社)日本映画テレビプロデューサー協会 親睦委員会 TEL(03)5338―1235

総会と懇親パーティーのご案内

第34回通常総会を左記により開催致します。 正会員の方はご出席下さい。欠席される場合は総会成立のため、必ず委任状をご送付下さい。
また、総会終了後、恒例により懇親パーティー(18時開宴予定)を行います。賛助会員の方々も、お誘い合わせの上、是非ご参加下さい。

退会

会員証の更新について

お手元の会員証の有効期限は2010年3月31日となっております。
更新のためタテ3センチ×ヨコ2・5センチの写真(カラー、モノクロいずれも可)1枚を事務局までお送り下さい。

インフォメーション

◎会議の記録と予定