社団法人 日本映画テレビプロデューサー協会 会報 2010年5月号

NPO法人ジャパン・フィルムコミッション(JFC)発足

JFC理事長  寺脇 研
JFC理事長 寺脇 研  フィルムコミッションって何?

 …さすがに映画業界の人に聞かれることはなくなった。10年余りの歴史を経て、日本におけるフィルムコミッション(FC)活動も完全に認知を得てきたようである。
 しかし、社会一般からの認識度はまだまだ低い。大半の日本映画には、最後のクレジット・タイトルに「撮影協力」などとして、○○フィルムコミッションという名が出ているのだが、そんなところまで注意して見る観客はいないものね。
 これが日本のFCの偽らざる現状である。そこを前提として、昨年4月、NPO法人ジャパン・フィルムコミッション(JFC)は発足した。全国各地のFCを中心に、プロデューサー、監督などの職能団体とも連携して全国レベルの組織にしたのである。それまでのFC連絡協議会は、あくまで各FCの横の連携が基本。次の段階として、国外の映画業界と折衝したり、国の官公庁など映画界以外の社会との接点を作っていこうというのが、設立の発起人となった各FCの方々の考えだった。
 その思いを受けて、それまでFC活動を外から応援するだけの立場だったわたしが、外との接点担当という役目で理事長の役職に就くこととなった。各地のFCがその地域の地方自治体と密接な関係を持つことが必須であるように、外国の映画界と付き合うためには、その前提として日本政府との意思疎通を保っている必要がある。国レベルでのロケに対する援助の在り方や、税制、交通規則、著作権など、日本全体の姿勢が問われるからだ。
 また、観光業界、運輸業界、金融業界などの他業界も、国の政策としてFC活動への肩入れがどれだけのものかを注視している。映画評論家の傍ら(だって17歳のときから書いているので)役人をしていたわたしの「二足の草鞋」が役に立ちそうだ。皆さんが理事長に推してくださった理由はこれだろう(ただし「天下り」ではないから、仕分け人・蓮舫さんに訴えたりしないでください)。
 JFCができたことで、文化庁をはじめ、経済産業省、観光庁、外務省など関係省庁とのつながりは密接になった。これまで都道府県警察や所轄警察止まりでFCとは縁のなかった警察庁までもが、公式に連携をしてくれ、各ブロックの講習会などに協力してくれる。
 さらに追い風になったのは、昨秋の政権交代だ。鳩山政権は、文化、観光、国際交流を重視する姿勢を明確にしている。劇作家の平田オリザさんが内閣官房参与となり、これらの面に文化人の立場から係わっているのも心強い。政治任用で観光庁長官に起用されたサッカーのトリニータ大分前社長である溝畑新長官も文化、スポーツと観光が不即不離だと主張してくれている。
 そんな追い風を受け、JFCは映画界のあらゆる方々と結びつきを深め、日本の映画文化振興のお役に立てる団体となるよう努力していきたい。 どうかよろしくお願いします。

只今撮影中

フジテレビ ドラマ制作センター  佐藤 未郷
『月の恋人 ~Moon Lovers ~』

 霧の街、上海。エイプリルフールのその日、アジア有数の高層ビル群に囲まれた新緑の公園で、台湾出身のクールビューティーは何やらおかしな特訓を受けていた。純白のトレーニングウエアで、割り箸を口に挟んで、やけに愛らしい顔で。
 時同じくして上海市内の空港に降り立った男。中国でも抜群の知名度を誇る彼は、サングラスの効果もなく、あっという間に大勢の上海人に囲まれてしまった。そんな光景は彼にしたら日常茶飯事なのだろう。移動車へと乗り込むその足取りは、まるで馴染みの街にでも来たかのように軽快だ。付き添っていた我々も、追うように空港を後にした。
 4月1日、木村拓哉10年ぶりの本格派ラブストーリーとして話題のドラマ「月の恋人 ~Moon Lovers~」が上海でクランクインを果たした。それは、木村拓哉、篠原涼子、リン・チーリン、松田翔太、北川景子というこれ以上ない豪華キャストが集結し、「大混乱が予想される」上海の活きた街中で撮影するという大胆な試みであった。そんな無謀とも言える海外ロケ、クランクインまでの道のりはまさに紆余曲折そのものであったが、いざ撮影が始まってみると見事に天候にも恵まれ、異国の地における様々なハードルも皆で一つ一つ乗り越え、同じ屋根の下で寝食を共にしたことによって、一気にキャストもスタッフも一体となるという素晴らしい体験であった。
 国際万博を間近に控えた厳戒態勢の街で、いつ何時撮影条件が変わるかもしれないという状況の中、毎回、何百人というギャラリーの人々を仕切りながらの撮影は困難を極めた。日本では想像のできないようなトラブルや不安定要素を抱え、スケジュールも日夜変わった。幾多の撮影をこなしてきた上海電影所の中国人スタッフにしても、ここまで困難な状況の中、こだわり続け、ぎりぎりまで諦めずに粘って撮影するテレビドラマは初めてのことだったという。だが、最後には奇跡の雨も降り(雨がどうしても欲しいシーンの撮影準備中に雨が降ってきたのである!)、スタッフみんなで傘を差しての内トラ大会で上海ロケはクランクアップした。
 ドラマは木村拓哉演じる葉月蓮介が上海へ向かうところから始まる。蓮介は、急成長していくインテリア会社「レゴリス」を若くして立ち上げ、業界のみならず世間もが注目する新進気鋭のアントレプレナー(企業家)だ。彼を取り巻く4人の男女の存在……長年彼のそばで働き、彼の本質を唯一知っている元同級生(篠原涼子)、上海で出会った美しい女性(リン・チーリン)、彼の右腕として暗躍する男(松田翔太)、彼を一途に追いかける若き女性(北川景子)……が、その運命を少しずつ変えていく。
 ドラマが展開する中で、蓮介のエンジンが止まる時がやってくる。初めて人を愛した時、彼は自分のやり方が通用しないことを知る。勝つことにこだわり続けてきた彼が、自分を見つめ直さなければならなくなる。ドラマはそういう瞬間を描いていく。『月の恋人 ~Moon Lovers ~』
 彼が勝つことにこだわったのは、それが自分の存在のはかなさを補償してくれると感じていたからだった。だが、やがて愛する人を奪われ、その人を取り戻そうと努力する中で、彼は、愛するただ一人に見つめられ、覚えていてもらえるのなら、大多数の人に覚えてもらう必要は無いと悟る。「君が見ていてくれるなら、それだけで俺は生きている価値がある」その言葉を、彼が口に出せるようになるまでの物語である。
 近頃珍しい大人の本格恋愛ドラマ。その記念すべき第一話のもう一つの主役は上海だ。日本のドラマ史上でも珍しいリアルな街中での上海シーン。それは例えばアメ横のような商店街であり、出稼ぎ労働者が住む貧民街であり、川沿いのロマンチックなレストランであり、歴史的建造物が立ち並ぶ旧市街である。まるで露に濡れてネオンを映す上海の街そのもののように、キラキラでしっとり、ゴージャスな仕上がりを期待していただきたい。
 さて、本日は日本に戻って3日目。いよいよセット撮影が始まった。5人のキャストを中心とした、大人のアンサンブルのお芝居が個人的な楽しみである。ドラマはこれからだ。

私の新人時代

NHKドラマ番組部  岩谷 可奈子
NHKドラマ番組部 岩谷 可奈子

  私が、大学出たてでディレクターとしてNHKドラマ部に配属になったのは、ドラマ部にとって衝撃の出来事だった…らしい。十数年ぶりの新人配属、それも女性、ということでほとんど珍獣まがいの視線を浴びた。いまだに「かなちゃんがスタジオでADやる、って聞いたときにみんなで見学に行ったんだよ」と、その時には私が面識の無かった技術や美術のスタッフに言われ続けている。滅多に昼間にドラマ部居室に現れないことで有名な、様々な賞に輝く大演出家Sさんは、配属2ヵ月後の私を見て、「誰? 新しいバイトの子?」と聞いてきた。そんな私も、半年後には朝ドラの班に入り、スタジオでチーフADを1週おきに任され、時代考証を担当し、そして一人で出演者のギャラを計算して伝票をきるようになった。今になってみれば考えられない事態である。社会人1年生の私にそんなことまで任せるプロデューサーもいかがなものかと思うが、こちらは「自分がやらないと誰もやってくれない」と必死だったし、責任をもって仕事に臨むようになれた。ただ責任感がある分、やたらと「小生意気な」新人だったに違いないのに、父親とかわらない年齢の大先輩たちには可愛がっていただいて、本当に感謝している。
 そして二十数年がたち、私は今、大河ドラマ「龍馬伝」のチーフ・プロデューサーとなり、現場では制作、演出、技術、美術すべてのセクションに女性がいることは、なんの不思議も無い光景となった。私自身も2人の子供を育てながらなんとかドラマ制作を続けているのは、我ながらびっくりの人生である。…昨年、「龍馬伝」チームに、私と同じようにNHK入局直後にドラマ部配属になった女性ディレクターが入ってきた。彼女の生まれた年は私がNHKに入局した年…私がかつて先輩たちにあげさせた悲鳴を、自分があげるはめになった。月日のたつのはあたりまえだけど早い。

新しい法人への移行について

 日ごろ私たちは、自分たちの組織がなんたるかについて、当たり前すぎて、あまり意識しないのが普通のようです。突然、お宅の組織は財団法人ですか、社団法人ですか、それともNPO法人みたいなものですかなどと質問され、答えに詰まってしまうことがありませんか。
 5月31日の第34回通常総会では、私たちの組織「日本映画テレビプロデューサー協会」の新しい法人組織を目指す「提案」が提出されます。
 これまで創立の昭和51年以来、社団法人であった当協会は平成20年12月に施行された「改正法人法」によって、現在「特例民法法人」とされ、法律上従前の「社団法人」としての扱いをされていますが、平成25年11月30日までに「公益社団法人」か「一般社団法人」への移行手続きを終えなければ、法人格が消滅してしまいます。
 そもそも「改正法人法」は〈民間が担う公共〉を支えるために、民間による法人格の取得を容易にする、いわゆる税制改革をともなう規制緩和の制度改革です。
 これまで、私たちは当協会顧問弁護士の太田弁護士等とも協議し、総務委員会でも議論を重ねてきました。結果選択した方向は、前回第33回通常総会で報告されたように、公益社団法人の認定を受けずして「一般社団法人」に移行する、というものでした。高い公益性を社会的に認知される公益法人認定を受けず、最終的に一般社団法人への道を進もうとする考え方の根底には、公益性を法的に担保されずとも、より自由自律的で簡素な組織体を維持し、機動的な事業を通じ社会貢献を重ねることで、社会的に公益性を確保しようという意気込みがあるのです。
 それでは、具体的に私たちの組織はどう変わるのか、です。
 まず、組織名の前に、一般社団法人と冠しなければなりません。一番の違いは、これまでより監督官庁からの指導が少なくなることです。特に毎年、事務局で苦労させられる監督行政庁(文化庁)への各種活動報告、特に財務関連の報告業務が軽減されます。といっても、移行に際し必要となる公益目的財産支出計画(これまでの余剰金は、公益目的のために支出しなければならなくなります)については、その目的達成までは引き続き監督を受けなければなりません。いづれにしろ、厳格な監督官庁からの指導はこれまでより少なくなる代わりに、役員等の責任など内部的なガバナンスの充実が求められるようになりますが、それも自由自律的に協会の活動を行ってゆくための不可欠な要件でしょう。
 総会では、こうした法人移行申請案に付随して、新しい「定款」案も提出される予定です。
 そのポイントは、行政庁の監督がなくなることによる、簡素化された「資産及び会計」の章。剰余金の分配ができない(非営利性)旨の条文等。法人の実情に合わせた、例えば役員の数の変更、理事会と役員会の役割分担等の、機動的活動を担保する条文等、です。


 会員の皆さんにおかれては、日ごろあまり考えることの少ない私たちの組織体の大きな変更が、今年度中に計画されているということを改めてご認識いただき、来る5月31日の第34回通常総会への関心を高く持っていただくことをお願いする次第です。(総務委員会・事務局)

平成21年度臨時総会報告

 当協会平成21年度臨時総会は平成22年3月25日(木)18時30分から東映本社8階会議室にて開催されました。
 総会には正会員466名のうち委任状参加230名を含め261名が出席、議決に必要な定足数に達し成立した旨が報告され、定款に従って議長に杉田成道会長がつき、次いで議長以外の議事署名人に香月純一理事、若泉久朗理事が指名、承認されたのち議事に入りました。
 第1号議案(イ)平成22年度事業計画(案)について西村与志木副会長より説明があり、新しい法人移行を見据え、より計画的な事業運営を行いたいとの報告がなされました。続いて1号議案(ロ)平成22年度収支予算(案)が同じ西村副会長から説明があり、審議の結果全員一致で承認可決しました。
 次に渡辺総務委員が「一般社団法人移行」について、その準備状況等を説明、4月理事会で詳細が示され、通常総会には移行案が提案されるとの報告がなされました。最後に、平成21年度の決算見込みが事務局から報告され、すべての議事が終了、閉会しました。
 引き続き、同会場ではささやかな懇親会が開かれ、和やかな会談の中で、19時40分散会となりました。

事務局だより

◎正会員入会

◎退会

総会と懇親パーティーのご案内

第34回通常総会を左記により開催致します。
正会員の方はご出席下さい。欠席される場合は総会成立のため、必ず委任状をご送付下さい。
また、総会終了後、恒例により懇親パーティー(18時開宴予定)を行います。賛助会員の方々も、お誘い合わせの上、是非ご参加下さい。

会員証の更新について

お手元の会員証の有効期限は2010年3月31日となっております。 更新のためタテ3センチ×ヨコ2・5センチの写真(カラー、モノクロいずれも可)1枚を事務局までお送り下さい。

インフォメーション

◎会議の記録 と予定