社団法人 日本映画テレビプロデューサー協会 会報 2010年6月号

第34回 通常総会にあたっての会長の言葉

第34回 通常総会 昨年の映画界において特筆すべきことは、「アバター」「アリス・イン・ワンダーランド」など3D映画が全国を席巻したことです。テレビ界においても3D化に拍車がかかり、たぶん今年から来年にかけて、店頭に3Dテレビがずらりと並ぶ状況になりましょう。
 3Dの流れを別にしても、すでにデジタル化の波は映画界を覆い、もはやフィルムという存在がなくなるのではないかとの声すら聞こえているのが現実です。私事になりますが、昨年から今年にかけ、京都で時代劇映画を撮っていて実感したのは、映画の現場ではアナログ世界に黄昏が漂っているということでした。同時にこの世界のアナログの良さを残してゆく責務が我々にはあるのだという実感も持った次第です。
 映画界の変化は他にもあります。映画の観客の高齢化が進むと同時に、海外との関係も変化が見られます。例えば「ノルウェイの森」が外国人の監督によって日本の映画として作られるような新しい時代の到来です。映画の国際化では、韓国中国に一歩も二歩も先を越されていますが、現在経済産業省を中心に、ソフト産業を成長産業としてとらえた、新しい海外戦略の方向性が出てきました。
 話をデジタル化に戻しますが、私は、現在メディア状況を変化させつつある2つのことに注目しています。
 ひとつは「iPad」です。iPadがメディアとしての書籍の存在に大きな変化を及ぼそうとする、デジタル革命を急激に進める最新商品だとすれば、一方注目されるのは、「クラウドコンピューティング」です。
 一つのコンピューターのもとで情報が管理できるクラウドコンピューティングによって、映画は作品と観客が光ファイバーによってつながるだけでなく、撮影・編集・配給・公開もインターネットを通じてつながることになる時代が確実にやってくるに相違ありません。
 一方テレビ界は、来年に完全デジタル化を見据え、今国会でも放送法の改正が審議され、今後マスコミ集中排除の緩和は、地方テレビ局のネットの改編を促し、著作権の適用緩和は、ますます通信との融合も加速させるでしょう。
 加えて、ここ2、3年の放送業界の動きで特筆されるのは、テレビ局の映画へのチャレンジです。ご承知のように広告収入が減少し、制作予算が削減されるという厳しい経営環境にあって、事業外収入の主軸になったのは、ハイリスクハイリターンの「映画」でした。これまでのように、片手間ではなく、積極的に映画で利益を取りに行くということです。儲かる映画しか作らないという縛りがあった映画界に、こうしたテレビ局の映画作りは大きな影響を与え、逆にこの動き全体が、テレビ映像制作そのものに影響し始めています。したがって、これからのプロデューサーは、世の中の流れを見てゆくだけでなく、世の中全体の構造の変化を見てゆかなければならなくなります。すでに映画作りにあっては、単独資本の映画はほとんどなく、流通経路を想定し、多方面の多数の資本が参加する、いわゆる委員会方式が主流です。つまり、映画もテレビも、ソフトの多角化、言ってみれば、流通経路を前提としたソフト作りの時代に突入しているのです。
 そしてこのような時代こそ、流れを主導していくのは、若い世代にほかなりません。
 私は、若いエネルギーが新しい未来を開拓してほしいと願っていますし、当協会には産業を超えた多角的な広がりと新しい世代のエネルギーを注入することが、今後の発展に意味があると思っています。
 本年は、若い世代、つまり行動する世代としての新しい力を積極的に受け入れてゆくことを目標にしたいと思います。
 協会員の皆様の若い世代への積極的な呼びかけを強くお願いする次第です。
 (今総会では、役員改選は無く、主な議題である、一般社団法人への移行が承認されました。詳しくは、会報に同封された「34回通常総会報告」をご覧ください)

こんにちは! FC(フィルムコミッション)です。

広島フィルム・コミッション 西崎智子

広島フィルム・コミッション 西崎智子

中国地域ロケ支援ネットワーク
 中国地域(鳥取・島根・岡山・広島・山口)は素通り禁止!

  海外からの一括窓口などナショナル・フィルム・コミッションとしての役割を背負い、2009年ジャパンFCが始動する一方、各都市のFCは、地方への撮影誘致に向け近隣のFCとの連携強化を図っています。一つの街に、必要とされる全てのロケ地があることは稀で、近隣のFCで連携をとることでロケ誘致につながるからです。
 中国地域ロケ支援ネットワークもその一つですが、このネットワークの利点は、各地のFCのみならず、趣旨に賛同してロケ地の問合せへの回答や、ロケのサポートを行う自治体や観光協会等の団体も含まれていることです。
 これにより映像制作者の皆さんがロケ地を探す際にも、ネットワークに連絡すれば、個別に問い合わせることなく、全面的なサポートを得ることができます。また、拠点となるロケ地が中国地域にあり、周辺で必要なロケ地を探す場合にも有効活用いただけます。
 ネットワークでは、ロケ支援のためのスキルアップやロケの行われた作品の活用法などの研修のほか、課題を話し合い情報交換できる場を作っています。中国地域の撮影環境のさらなる向上を期待していてください。
 日本海の荒波から瀬戸内海の穏やかな多島美、棚田や山村風景が広がる中国山地に沿う山間地域の冬の雪景色など、中国地域には、さまざまな表情をみせる魅力あるロケ地が凝縮しています。合言葉は「素通り禁止」。お気軽にご相談ください。

 

盛岡広域フィルム・コミッション 升田雅弘

盛岡広域フィルム・コミッション 升田雅弘

 こんにちは盛岡広域FC 升田雅弘です
 プロデューサーの皆様、日頃、映像を通じ大変お世話になっております。全国のFC担当を代表して心より感謝申し上げます。
 さて、昨今の経済状況の中、皆様が頭を悩ましている問題の中でいかに制作費を捻出するかがあると思います。当FCの昨年度実績も前年比80%と減少。(大都市圏以外のFCは同じような状況)しかし、私はこの紙面を使って当FCの宣伝をするつもりは更々ありません。逆に「質の悪い制作者はこの岩手に来ないで下さい。」とあえて言わせてもらいます。私の活動方針はクオンティティよりクオリティです。
 このFCに携わって丸六年になりますが、監督、ラインプロとの接触は毎回ありますが、何故かプロデューサーとお会い出来たのは数える位しかなかったのが現実です。ロケ現場に行かなくても、監督、ラインプロを信頼しているからなのでしょうね。ここで私がプロデューサーの皆様に期待したいのは、スタッフ全体を把握して欲しい事です。
 映画の方々は昔ながらの徒弟制度が残っている感じがして、昭和20年代生まれの私としては安心感がありますが、TVの制作担当とサード助監督(特に若い人)には社会人としての人間教育からお願いします。せっかく企画、内容が良い作品でもロケ現場での対応は全くお粗末な方が多いと感じられます。好適ロケ地から「ロケお断り」をされるのはプロデューサーの皆様の責任だとも思っております。
 「良い作品は良い人間から創造される」、と信じております。
 生意気な事を言わせてもらい誠に申し訳ございません。プロデューサー各位には益々のご活躍を心よりご祈念申し上げます。

只今撮影中

東映株式会社 映画企画製作部 企画開発室 天野和人

東映株式会社 映画企画製作部 企画開発室 天野和人

『孤高のメス』

  初めて医療映画を手掛けました。『孤高のメス』。出版された原作小説をむさぼるように読んで、映画化を熱望した作品です。
 まずは心強い味方作りから。小説のクライマックスが肝移植のシーンであるということから、肝臓の権威(?)を見つけたい。細~い伝を辿って映画『チーム・バチスタの栄光』の医療監修をなさった順天堂大学・心臓血管外科の天野篤先生にたどり着き、その天野先生に紹介していただいたのが、同じ順天堂大学の川崎誠治先生。教授室が隣同士なんてちょっとイージー? いえいえこの川崎先生、河野洋平・太郎親子の生体肝移植の執刀医であるばかりでなく、日本初の脳死肝移植を行った方でもありました。医療音痴の私は全く知りませんでした。なんと言う偶然 何たる強い引き!! また麻雀を始めようかしら。
 その川崎先生にお願いしてナマ手術を見学させて頂きました。先生はまるで昼飯に誘うような感じで「金曜日9時に来て」なんて仰られたのですが、手術なんて見たことない監督と私は相当緊張しました。途中で気持ち悪くなったらどうしようとか、風邪ひいたら入室拒否を食らうのかとか、当分肉は食えんのかとか、悪いイメージのシミュレーションをたっぷりさせていただきました…
 結果。川崎先生は噂どおりの名医でした。淡々と行われるその過程においてほとんど出血のない手術は美しいとさえ思いました。これで監督の腹は決まったみたいですね。手術シーンを真正面から描こう、と。 『孤高のメス』
 ゆえに手術シーンは徹底的にリアルにこだわりました。演じる俳優陣はもとより、メインスタッフ、装飾&造型チームや特殊効果のスタッフ、録音部にまで本物の手術を見学してもらいました。(余談ですが、機会があれば是非手術の見学してみてください。なんだかちょっと人生変わります。不謹慎のそしりを受けかねないので大々的にお勧めできませんが…)撮影現場においては順天堂の先生方や看護師の皆さんにつきっきりでご指導いただきました。多謝 !!
 手術を見学させていただいて、もうひとつ心に残ったのは、手術はチームワークだってことです。オペに関わるスタッフの連係プレイの淀みなさといったら…天才外科医ひとりいたってどうにもなりません。映画でもそのあたりはちゃんと描きました。このあたりも地味ながら【リアル】です。(発見。最近の麻酔科医は若くて美人多し。ちなみに映画では徳井優さんが演じています。20年前なのでこれが【リアル】!)
 映画化を思い立った時には全く予想だにしていなかった改正臓器移植法案の成立とか、主演の堤さんが偶然減量していて役作りにぴったりだったとか、大小さまざまな追い風を感じながら映画は完成、公開を迎えようとしています。そして映画もまたチームワークだと改めて実感しております。この一体感を求めて映画を作っているんですね、まさに麻酔、いやいや麻薬です。

私の新人時代

日テレアックスオン 制作1部 渡邊浩仁

日テレアックスオン 制作1部 渡邊浩仁

  とにもかくにも撮影現場で働きたいという希望が通り、1991年6月専門学校を介して映画制作に制作進行見習いとして参加したのが私のデビューである。私が生まれる前から映画監督をされていた西河克己監督作品。学生から初めて社会に出ての仕事は衝撃の連続であった。
 カースタントをやってくれる会社を探せと言われ、「業界ならいくつかあるだろうになぜ?」と思いつつも電話をかけたら「昨年の未払いがあるから取引できない」と言われたり。挨拶まわりが終わったら報告しろと言われ(当時は携帯もポケベルもない)喫茶店に入りそこから電話すると「茶を飲むなんて10年早い!」と言われたり。あるメインロケハンにくっついて行った昼食時などは、蕎麦屋で監督と同じてんぷら蕎麦を注文したら、制作担当の先輩に呼ばれ「なんでお前が監督と同じなんだ! 俺と同じカレーうどんにしろ」とパンチが飛んできた。衝撃だった。
 そんな時事件は起こった。まだ香盤表のとりかたも分からない私に代わって出物チェックをしていた先輩から、急遽翌日劇用車が必要だと言われたのだ。劇中使われる年代ものの車を見つけてはいたものの、出してもらえるまで帰ってくるなと言われ、私は話をしていた車屋に走った。ところが時期が盆にかかる頃だったので、出せないと言われた。私は泣いて土下座までしたが、願いはかなわなかった。どんな顔をして帰ればいいのだろうと思いながら報告の電話をしたら、とにかくスタッフルームに帰ってこいと言われた。普段ならキックやパンチが飛んでくる厳しい先輩は、その時出前を取って待っていてくれた。「腹減っただろ」と言われ、また泣いた。
 思えば仕事のイロハだけでなく社会人としての在り方を教えてくれた、良き時代だったと思う。そんな私でも今はプロデューサーをしている。仕事に必死になって寝食を忘れてしまう癖はこの時からついたのだと思う。しかし、「お前が腹が減ったと思ったら、下の者はその何倍も腹が減っているのだ!」と現在の師匠にいまだに怒られる。
 成長しないものだ。せめて怒ってくれる人がいる間に、人の気持ちを推し量れるようになりたいと思う。

事務局だより

◎正会員入会

◎退会

◎訃報

第48回プロデューサー協会 親睦ゴルフ会

4月24日(土)白鳳カントリー倶楽部(千葉県成田市)に於いて、18人が参加し開催されました。
競技は新ペリア方式で行なわれ、次の結果となりました。(親睦委員会)

順 位 氏 名 アウト イン
優 勝
中曽根千治
49
53
102
27.6
74.4
準優勝
渡辺 紘史
42
46
88
13.2
74.8
第3位
黒井 和男
42
44
86
10.8
75.2

 

 

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