社団法人 日本映画テレビプロデューサー協会 会報 2010年10月号

国際ドラマフェスティバルを終えて

 10月25日。黒山というに相応しい夥しい人の数、それもみな中年以上の女性。今年のフェスティバルは新設の「ベストアクター・イン・アジア」に選ばれたイ・ビョンホンのファンたちに囲まれた明治記念館でスタートした。イ・ビョンホンは授賞式のスピーチで「この時代、俳優でいたことに感謝する」と日本と韓国、そしてアジアの間でコンテンツを共有できる時代を率直に喜んだ。コンテンツの共有とは、まさにこのフェスティバルの目指したものであり、第4回目にして、このイベントの定着を実感させるものであった。注目のアウォードの結果は次のとおり。

*作品賞(連続ドラマ部門)

*作品賞(単発ドラマ部門)

*個人賞

*ローカルドラマ賞

*特別賞「龍馬伝」撮影チーム(NHK)

 今年のアウォードでは、売りたいドラマか売れるドラマかの議論があったが、グランプリ作品「JIN−仁−」が、昨年の「アイシテル〜海容〜」同様、MIPCOM BUYERS AWARDを受賞し、「アジア賞」とのダブル受賞となったことは、今回の審査基準がゆるぎないことを示し得たのではないか。それら受賞者が集い、石坂浩二、滝川クリステルの司会で始まった授賞式、パーティーは華やかに和やかに、しかもテンポよく進行した。その演出・構成は、わがエランドール賞パーティーにも大いに参考になるだろう。
イ・ビョンホン/会場風景/受賞者の皆様 2日目は、千代田放送会館で、海外招待作品上映会とシンポジウム。昨年同様、上映会には空席が目立つ。TIFFCOMオープニングと重なっていたとはいえ、宣伝、動員不足は明らか。招待国に失礼に当たる。関係者の一人として、反省する。一方、シンポジウムは充実していた。特に第一部、欧州放送機関のディレクターたちによる「日本コンテンツの国際市場におけるビジネスの現状」と題したシンポジウムは、海外展開に行き悩む日本ドラマ界への具体的提言に満ちたものであった。国内のみで自己完結し、海外展開のインセンティブの乏しい日本放送界が、日本にはない放送のクォーター制度(放送時間に占める外国製ソフトに制限を設ける制度=自国文化を保護するもので、中国、韓国にも存在する)のある欧州にコンテンツを展開するための様々なヒントが提示された。印象に残った提言は、①海外展開はクウォーター制度外に存在する、BS、CSから始めよ。②花より男子の例もある、改めてフォーマット輸出に注目せよ。これは前記イ・ビョンホンの発言も裏書する。③その際、日本の強みであるマンガ・コミックに拠って、口コミによる波及効果の大きい若い人をターゲットにしてはどうか、等である。考えてみれば、ここ数年、ヒットしたドラマの殆どは、マンガ原作といって過言ではない。否定的に考えていたドラマのマンガ原作に、欧州日本にも底通するヒットのトレンドがあるとは新たな発見でもあった。来年の国際ドラマフェスティバル、アウォードの結果はもとより、シンポジウムで何が語られるかが楽しみである。また、同時に開催されたTIFFCOMは本稿締め切りの本日26日以降もまだ続いている、実質的な商戦の場で、バイヤーたちの間で具体的に何が話され、どんな商いが成ったのか、結果を聞きたい。
 初回から実行副委員長、エグゼクティブプロデューサーをつとめられる当協会重村副会長、審査委員長の杉田成道会長、ほかに実行委員の協会理事、副理事のみなさん、その他運営委員等様々な形で尽力いただいた協会員のみなさん、本当にお疲れ様でした。その他協会員の参加も昨年に比べ多数に上りました。改めて深く感謝いたします。

  (事務局長 渡辺紘史)

只今撮影中 2011年正月映画特集


「ノルウェイの森」 共同プロデューサー  福島 聡司

「ノルウェイの森」 共同プロデューサー  福島 聡司

『ノルウェイの森』

 青々と伸びたススキが風に音を立ててなびき、緩やかな緑の起伏が重なり合っている峰をワタナベ(松山ケンイチ)と直子(菊地凛子)が歩いている。それが実に美しい。ここは兵庫県神河町にある砥峰高原。2009年6月、いま映画「ノルウェイの森」の撮影が行われている。思い起こせば此処に至るまでにずいぶんと時間を費やしてしまった。
 アスミック・エース エンターテインメントの小川真司プロデューサーから仕事の依頼を受けたのが2008年2月。「ノルウェイの森」の映画化と聞いて驚きと興奮を感じたのを覚えています。村上春樹氏原作の「ノルウェイの森」は、国内発行総累計部数は870万部を誇り、36言語に翻訳されている世界的なベストセラー。これまでいくつもの映画会社が映画化を望んで実現出来なかった作品なのです。監督は「青いパパイヤの香り」「シクロ」のトラン・アン・ユンと知らされ、再び驚きと興奮。
 監督と電話ミーティングを重ね、まずはこの映画の重要な撮影場所となる草原を探すことになりました。4月から私と他2名のスタッフとで先行ロケハンを開始。北は青森から南は九州まで高原、草原、牧場と虱潰しにあたり、良かれと思った山梨、長野、島根、奈良と監督を連れて行き、そしてNGまたNG。7月にやっと砥峰高原にたどり着いたのです。監督はこの高原をとても気に入り、ススキの穂が銀色に波打つ秋、真っ白で静寂かつ幻想的な冬、そして力みなぎる緑の夏と、結局三度もロケに来ることになりました。8月から製作部さんにバトンを渡し、ここから本格的なロケハンがスタートしました。撮影場所に決して妥協を許さない監督。一年以上ロケハンを繰り返し、結局ロケ地は神戸、神河町、京丹後、鳥取東浜、伊賀上野、甲府、伊豆、高崎、そして東京、横浜とまるでロードムービー状態になってしまいました。こんな贅沢を許してくれた出資関係の方々、本当に有難うございました。
 また、この映画の特徴として数多くの外国スタッフが参加しています。監督のトランを始め、「戯夢人生」「夏至」のアジアを代表するカメラマン、リー・ピンビン。人気バンド「レディオヘッド」のメンバーであるジョニー・グリーンウッドが音楽を担当。美術、衣裳を担当するのは俳優で監督夫人でもあるイェンケ・リュゲルヌ。その他にも編集、DIT、リレコーディングミキサーなどなど。日本、フランス、台湾、イギリス、アメリカ、ベトナムと随分日本映画界もグローバル化してきたと感じさせられます。日本を舞台に日本のキャストとスタッフ、それと海外から参加してくれたスタッフとで、日本を代表する純愛ストーリーがどのような作品に仕上がっているのか、みなさん乞うご期待下さい。今後このような映画作りのスタイルが増えることを期待します。


日本映画衛星放送株式会社  編成部部長/映画事業部 プロデューサー  宮川 朋之

日本映画衛星放送株式会社  編成部部長/映画事業部 プロデューサー  宮川 朋之

『最後の忠臣蔵』
  −その感動の先にあるのは、誰も知らない〈本当の結末〉−

 12月18日「最後の忠臣蔵」が公開されます。協会の杉田会長が監督として「ラストソング」以来、16年振りにメガホンをとった劇場映画です。偶然にも、物語も赤穂浪士の討入り後、大石内蔵助に〝使命〟を与えられ、死ぬことを許されなかった二人の男達、瀬尾孫左衛門と寺坂吉右衛門の苦しみながら生き抜いた16年の歳月を描いています。
 主演の孫左衛門には役所広司さん、その無二の友・吉右衛門には佐藤浩市さんと、日本映画界を担う二大演技派俳優の贅沢な競演が実現しました。
 まさにデ・ニーロとアル・パチーノ。ふたりが並ぶ立ち姿は美しく、これぞ〝夢の競演〟といっても過言ではありません。そして作品の要というべき重要な役、監督自ら「この役がコケたら、作品がコケる」と公言していた大石内蔵助の忘れ形見、大石可音には、映画、CMと今年最も注目される女優、桜庭ななみさんを抜擢しました。杉田監督との約1ヶ月間のマンツーマンでのリハーサルを経て、彼女の未知なる可能性の開花と共に誰もの想像を超えた可音が誕生しました。(「桜庭ななみが大石可音になるまで」として密着したメイキング映像が、作品の公式HPをはじめ、USTREAM、You Tubeでご覧いただけます。監督の演出方法、彼女の努力のさまを、ぜひご覧下さい)このほかにも山本耕史さん、風吹ジュンさん、伊武雅刀さん、安田成美さん、俳優、演出家としてヨーロッパで活躍する笈田ヨシさん、大石の友人、奥野将監役には杉田監督と長年にわたって作品を作ってきた田中邦衛さん、さらに大石内蔵助役には歌舞伎界の重鎮、片岡仁左衛門さんに演じていただきました。この豪華キャストと共に、杉田組には時代をリアルに追求したスタッフが集まりました。原作である池宮彰一郎さんの同名小説に、新たなエピソードを加えて作品の世界観を広げた脚本の田中陽造さん、セットデザインは日本を代表する名美術監督、西岡善信さん、衣装デザイナーに黒澤和子さん、心に深く沁みわたる哀切な旋律は加古隆さん、監督から「ろうそくの明かりで暮らす時代のリアルな照明にしてほしい」との要求にキューブリックの「バリー・リンドン」を彷彿させる繊細な光を構築した宮西孝明さん、そして、ワンカメで1カット1カットを丁寧に積み上げていく長沼六男さんの撮影は、杉田組のこだわりの象徴となりました。京都の1000本以上の竹の間から陽が差し込む幻想的な光景、『最後の忠臣蔵』 人形浄瑠璃の美しさ…とにかく作品の全てが見どころです。
 最後に−もうひとつ見どころを。孫左衛門が16年過ごした可音との回想シーンで3歳のころの可音役で杉田監督の愛娘・窓子ちゃんが出演しています。杉田監督は今年67歳。窓子ちゃんの嫁ぐ日を、可音の嫁ぐ日と重ね、フィルムに永遠に残したのかもしれません。
 公開に向けてまもなく全国キャンペーンがスタートします。映画は完成して半分、残り半分は観客に届けるまでの宣伝活動です。テレビスポットだけの宣伝では認知されても劇場に足を運んでくれません。この作品に全てを捧げてくれたスタッフ、キャストの想いに報いるためにも、一期一会を大切に作品の魅力を伝えてゆきたいと思います。
 師走になると日本人の心を騒がせる忠臣蔵。皆様にも300年にわたって語り継がれてきた史実の〈結末〉をぜひ劇場でご覧いただければ幸いです。

私の新人時代

東映・プロデューサー 高野 照子

東映・プロデューサー 高野 照子 イイ年こいて、今も新人の如く道に迷ってばかりの私ですが、20代の頃は今以上に迷える子羊。そのクセ、旅好きな私は「現地の人と仲良くなり、腹の底から笑い合えるような、今までにないラブ&ピースな旅番組が作りたい!」とモンモンとしておりました。
 そんなある日、友人のよしもとばななさんに「動くてるこを映像にすれば、天職になるよ!」と助言され、すっかりその気になった私は有給休暇を取り、友人のカメラマンを道連れに、インドへ行き当たりバッタリの撮影旅行へ。
 食堂では店のおっちゃんから「カレーは、素手で直に食べるんだ!」と猛特訓を受け、カーペット屋では、押し売り攻撃に遭い大ピンチ! その攻撃を〝笑い〟で切り返すと、「君はもう客じゃない、友だちだ〜!」と夕食までゴチになったりと、現地の人たちと意気投合した、インド出たトコ勝負旅。
 帰国後、仕事の合間に編集した映像をTV局に持って行ったものの、なかなか売れず、よしもとさんに泣きを入れたところ「私、〝聞き手〟をやろうか?」と申し出てくれたお陰で、某民放での深夜放送が決まったのでした。
 そのインド旅番組の放送後、出版社からオファーを頂き、学生時代のインド旅を綴った『ガンジス河でバタフライ』という本を出したのですが、もう会社ではケチョンケチョン。会社の寮を出てアパートで一人暮らしを始めただけで「おっ、ガンジス御殿でも建てたのか?」などとからかわれる日々。
 ところが3年前、その紀行エッセイ本が原作となってSPドラマ化されることになり、私もプロデューサーを担当し、脚本は宮藤官九郎くん(同級生!)、主演は長澤まさみちゃん(てるこ役!)に決定! このドラマも、10年前のインドの旅番組も、晴れてDVD化され、これで少しは長年の旅好きも役に立ったかと思いきや、上司には「お前は公私混同ばかりして!」とお叱りを受ける始末。私は思わず叫んでいました。「公私混同なんてしてません! 私には〝私〟しかありません!!」。私がさらにお叱りを受けることになったのは言うまでもありません(苦笑)。
 そんなこんなで、今もお小言を頂き続けている私ですが、自分の夢を叶えるために入ったこの世界。どれだけ叱られようが、永遠に新人まっ盛りでいたいと思う今日この頃なのです。

アクターズセミナー2010まもなく

アクターズ委員 中嶋 等

 熱いオーディションが開催される。アクターズセミナー賞選定オーディション。審査員は現在活躍中のプロデューサーやディレクター。アクターズ委員が力を注いで要請、錚々たるメンバーが集まることとなった。そんな審査員の前で、受講俳優たちはどんな自己アピールをするのか。ユニークな存在感を見せる者、輝かしい演技力を感じさせる者など、様々な個性が発揮されるはずである。その中で審査員の目に留まり記憶に残る受講生はいるだろうか、賞に選ばれるのは誰か、興趣が尽きない。午前のワークショップでは、講師をTBS金子文紀氏が務める。多数のテレビドラマ、直近では映画「大奥」の監督でもある。会報先月号「只今撮影中」にてその演出ぶりの一端が紹介されたのを読み、どんなワークショップを行ってくれるのか、これも興味をそそられる。そして、出会いの広場。最早プロデューサー協会の伝統行事と言ってもいい。受講生たちはプロデューサーにどんな質問を投げかけてくるのか。それに対しどんな答えを返すのか、耳を傾けたい。今月21日、まる一日会場は、興奮と緊張と活気に包まれる。
 会員のみなさま、気軽に会場へお越しください。協会員は見学自由、手続き不要、もちろん入場無料。

事務局だより

正会員入会

「臨時総会」開催のお知らせ

 すでに承認を得た一般社団法人移行に際しての定款変更案に新たな変更の必要が生じました。
 そのための臨時総会を12月15日㈬18時30分よりNHK青山荘で開催致します。

2011年エランドール賞 授賞式・新春パーティーのお知らせ

(日時)平成23年2月3日(木)18時受付 18時30分開会 20時30分閉会予定

(会場)新宿京王プラザホテル南館5階 エミネンスホール(立食形式)

   詳細は12月号でお知らせ致します。
   会員の皆様の多数のご参加をお待ち申し上げます。

第6回プロデューサーズ・カフェ  開催のお知らせ

☆参加希望の方は事務局までご連絡下さい。

インフォメーション

◎会議の記録と予定