会報委員短信 |
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『近ごろ思うこと』 |

テレビ朝日
田中芳之 |
昨年、演劇界の重鎮といわれた俳優さんが亡くなった。高校生の頃から日本映画の名画座に通いつめた僕にはとても馴染みのある人だった(舞台に行った事はないのだが)。
ニュースでは、彼のような俳優はもう出てこないだろう、とその世界で功をなした人が亡くなると必ずコメントされる言葉をこの時も流していた。僕もそう思った。
しかし同時にこうも思った。
「僕達は今、彼のような芝居に人生の全てを賭けているような俳優をどれほど本気で必要としているのだろう」
世の中を不安に陥れる事件が相次ぎ、ドラマどころではないというこの頃だが、そんな今だからこそ、スタッフ・キャストひとりひとりの思いを客に届けるようなものを作っていかなければならないのだろう。
なあんて、少年時代の僕にいろんな面白さを見せてくれた「架空の世界」の作り手側に自分が今いることを真面目に考えたりしている。 |
『会報委員を務めて』 |

松竹株式会社
中嶋 等 |
若者の喧噪でごった返す渋谷センター街。会報の記事にどんなテーマをすえたらいいかアイデアを出そうと頭を捻りつつ、プロデューサー協会のある渋谷ビデオスタジオへ向かってます。傍若無人な学生を横目で眺め「世も末だな」と嘆きつつも、そんなことはどうでもいい、何かいいアイデアをと、日頃の怠慢を悔いております。協会に入会すると同時に、右も左も分からないまま会報委員を仰せつかって、早くも二年。通常はテレビドラマのプロデューサーを生業としてます。サスペンス枠の企画打ち合わせでは、お客さんがいる喫茶店で、「二人ぐらいは殺してくれる」とか、「殺す方法は任せるよ」なんてことを平然と語って、怪しい目で見られていますが、まだ殺人容疑で警察のご厄介になったことはありません。委員会の場では、テレビ局のプロデューサーの方が全然違った発想や情報を披露して下さり、栄養素として吸収させて頂いてます。そんなこんなで、力不足ながらも会員の皆様が興味を持てる記事を送り続けたいと思っております。 |
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株式会社東北新社
クリエイツ
藤田裕一 |
過日、ビートたけし氏著「おまえの不幸には訳がある」をペラペラとやっていたら、「テレビが人を狂わせた」という気になるフレーズが目に留まる。テレビと現実の区別がつかない人間が増えているというのだ。いきなり電話をかけてきて「旦那がリストラされて親子三人困っているんです。私達たけしさんのファンなんで、お金貸して下さい。」普通の常識で考えれば知り合いでもない人間に誰が貸すのか。所謂発想の幼児化現象が進んでいるのだ。テレビが誕生して五十年、デジタルや衛星など急速なテレビメディアの発展より、人を狂わせる武器にもなりえるテレビが与える社会の影響を考えた方が懸命だ。テレビドラマを制作している者にとって、非常識たと思われるが狂わない方が人間らしい。
でもそんな我が家にテレビがやって来た。
連日報道されている米テロ事件から報復戦争まで、テレビに釘付けの毎日である。 |