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プロデューサーへの手紙 俳優 八名 信夫
  「オイ悪役!最近の映画やテレビが面白くないのは、 お前達がちゃんと仕事をしていないからだ。 プロデューサーや主役に 『もう一回使って下さい』 とどっかで媚びた芝居をしてないか?画面に映った眼が語ってないか?」
 二十数年前、 四谷で飲んでいたら酔っ払いのおばさんに呼び付けられて説教された。
 腹が立ってなあ。
 然しどこか思い当たることもある。 焼火箸で腹を突かれた思いがした。 「あんな素人の酔っ払いに!」   そんな突っ張りから 昭和五十八年《悪役商会》を結成した。  悪役俳優として四十五年。 いつも出会いをと考えている。
『十時半睡事件帖』 のプロデューサー氏 (NHK)、 映画 『居酒屋ゆうれい』 (渡邊孝好監督) を観て、
「魚屋の八名さん良かった!!時代劇のゲストとして書いていいですか?」 と、 朝一番事務所が開くのを待って電話をかけて下さった。 勿論初めての出会いだ。
 島田正吾さんの作品の最終回。 悪役ではないが役も俺が好きな人物像だ。 何より嬉しかったのは、 九十を越えた大先輩の島田さんから 「八名君、 その芝居の間はネ」 とポツリと言われる度に 全身に緊張が走りまわることだった。
 この年令で尚俳優として勉強させていただける出会いのチャンスをつくって貰ったことが最高に幸わせだった。
 昨年の新歌舞伎座のプロデューサー氏も、 大事な舞台を一ヶ月間俺に預けてくれた。 「楽しんで下さい」 と、 ただそれだけ言って。
 本物のプロデューサーは分ってるんダナ。 その方が俳優にはプレッシャーがかかり張切るってことを。 毎日超満員、 劇場が爆笑でいっぱいだったよ。
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