ALL NIPPON PRODUCERS ASSOCIATON
私の新人時代

(東宝) 針生 宏
企画書の光と影

 東宝映画の社員プロだった私は、 藤本真澄という大プロデューサー晩年の数作品で 共同プロデューサーを務めた後、 バッタリ仕事が途絶えてしまった。
 ちょうど今TVドラマが冬の時代といわれてるのと同じように、 日本映画がアイド ルもの以外に中々客を呼べなくなっていた時期。 組織的なタイアップや大量宣伝が効 くような“付加価値のある企画”という奇妙な殺し文句が社内に飛び交ってたが、そ んな才覚も意志もない私には、 少しでも面白い映画になりそうなネタを自分なりに企 画書にまとめ上げて出すしかない。 手持ちのネタが尽きた時でも、 何とか新しいアイ ディアをしぼり出し企画書の形にして提出し続けた。それが遅蒔きながら私の修業時 代だったといえるだろう。 大半は何の反応もないまま無視され、 本社の企画審議にも出されないままボツになっ たのも多くて、 映画化まで漕ぎ着けたのはゼロ。 それでも自分のやって来たことがム ダじゃなかったと実感できたのは、数年後の異動で再びテレビ部勤務に戻ってから だった。
 ドラマの数も種類も映画よりずっと豊富なせいか、 TV局の担当窓口は人材も多彩 だし風通しもいい。 原作モノに加えて時には私のオリジナル企画もスンナリ通ったお かげで、プロデューサーの仕事も続けることが出来た。
 自分の経験では、 企画書がしっかり出来てる場合はドラマの結果にもほとんど満足 できたが、 特に帯ドラのような連続モノでは、 最初からネライがあいまいだったり企 画書の基本線からどんどん外れてしまった時など、ヒドイ結果になってしまったこと もある。
 映像ドラマの出発点として、 企画書作りは、 それほど大切で大変な作業。 そのワリ に、 まだまだ軽視され冷遇されてるとしか思えない。 昨今の特に連続TVドラマの不 振も、そのツケが廻ってきたからではないのだろうか。
 連ドラファンとしては、 部分的なクスグリや風俗ファッション、 タレントの人気な どに頼る前に、 ぜひもう一度ドラマ全体の流れや骨格をちゃんと見通せるような企画 書作りに力を注いでもらいたい。連ドラに構造的な面白さが甦って来る時、 冬の時代 も終るだろう。
2時間ドラマ好調の秘密A −佐々木彰−back会報トップページnext事務局あらかると