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私の新人時代 ()フジテレビジョン 能村 庸一

チャンバラ・デビュー


 舞台中継の名人を目指して劇場通いに明け暮れていた若手アナが 「編成企画部」 へ時代劇の担当で (と勝手に決めていたのだが) 呼ばれたのにはキッカケがあった。 社内の企画募集に、 放送中だった 「雪之丞変化」 の後番組として丸山明宏のテレビ時代劇 「大義賊」 を提出したところ、 諸先輩の目に留まり引っ張られた、 という次第。 編成の何たるかも知らないド素人だったが、 プロデューサーになるチャンスは意外に早く訪れた。 立て続けに三本作らせてもらった。 但しいずれも先輩が後見役に。
 杉良太郎の 「一心太助」 ではT先輩が後見役だった。 「銭形平次」 ワールドを極めた時代劇のスペシャリスト。 その時代劇哲学をトコトン仕込まれた。 シナリオは作家が書くものだと思っていたが、 プロデューサーが創るもの、 と初めて知った。
  「剣客商売」 は加藤剛の大治郎を主役に作ったが、 これにはS先輩が 「企画」 として参加。 第一話の完成までは天才と呼ばれたアイディアマン振りを見せつけられたが、 あとは私に丸投げしてくれた。 この方のおかげで、 大勢の素晴らしい人脈を得て撮影所の楽しさにハマってしまった。
  「大盗賊」 は例の企画書とは別のものだ。 丹波 (哲郎) プロによる異色時代劇で、 この時はK先輩にお世話になった。 一度は行き所のなくなった番組実現のために汗をかいて下さったのは感激だった。 この方からは 「編成は筋を通す所だ」 というテレビマンとしての王道と心意気を学んだ。
 当時は TBS に追いつけ追い越せが合言葉で、 先輩達の背負っているものも重かったろうが、 視聴率を取れとは一度も言われた覚えがない。 そんな先輩方の懐の深さが私の門出を豊かなものにしてくれた。
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