「冬のソナタ」 の言葉力 |
NHK衛星ハイビジョン局 制作 小川 純子 |

数多ある韓国ドラマの中で、 「冬ソナ」 を選んだ理由としては、 純愛をめぐるストーリーが、 "君の名は"のようなドラマを思い出させ、 なつかしい感じがすること。 俳優・映像・音楽に美しい透明感があることでした。 これならば、 日本でも受け入れられるのではないか・・・反響は予想以上でした。 放送を開始して1ヶ月後には、 同じBS2の大ヒット 「ER緊急救命室」 に肩を並べる視聴率に届きました。
しかし、 「ER」 と 「冬ソナ」 には大きな違いがありました。 それは、 メールやお便りの多さと、
視聴者の思いの深さです。 通常、 こうしたお便りは、 再放送の希望、 俳優名や曲名の問い合わせがほとんど。
ところが 「冬ソナ」 は、 「感動した」 「涙がとまらなかった」 というもの、 初恋や御夫婦の思い出、
戦争当時の思い出を綴ったもの、 中には 「生き方を考えさせられた」 「生きていく力をもらった」
というものまでが続々と届きました。 人々は 「冬ソナ」 の何にこれほど感動したり、 共感しているのでしょうか。 俳優の魅力やドラマのロマンチックさを指摘する声が多いようですが、 私は 「セリフ」 の力を感じています。 「冬ソナ」 を始めとする韓国ドラマには、 愛の言葉だけではなく、 人生の辛さや喜びをかみしめたり、 生き方の哲学を感じさせるセリフがちりばめられています。 いつのまにか、 「言葉」 が軽くなり、 時には攻撃的な言葉が飛びかう日本社会。 人々は、 真摯で心をうつ言葉、 人に懸命に心を伝えようとする言葉に飢えていたのではないかと感じています。 「冬ソナ」 の脚本家や監督にうかがうと、 「このセリフを言わせるために、 設定した場面が多い」 そうです。 韓国は、 中高校生や一般の会社員が、 気軽に詩集を買って愛読する国です。 「言葉」 に込める思いが熱いのでしょう。 制作者からすると 「恥ずかしくて言えないようなセリフ」 が、 普通の人々の心を虜にしているのかもしれません。
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