女優がゆく 京都の撮影所 |
@東映京都撮影所 (太秦) |
同じ釜の飯を食べさせてもらいに |
東 ちづる |

「太秦撮影所ってどんなところ?」
と聞かれると、 「日本のハリウッド」 とかあれこれイメージするが、 私はこの言葉を連想する。
同じ釜の飯を食う 。
つまり、 作品をクリエイトする同じ仲間、 「監督も、 技術も、 役者もみんなそれぞれの役割をプロとしてきっちりやって、 エエもん撮ろうや!」 という意識である。 そこには、 それ故の安心と緊張が共存する。
時として飛び交うキツイ関西弁 (と関東の人には聞こえるらしい) での叱咤。 それはベテランが後輩を育てようとする表れでもある。 実際、 怒るという作業は仕事とは別の余分なエネルギーだったりするのだから。
そんな時はもちろん現場にピリリと嫌な空気が流れる。 しかし、 必ず誰かがそれをギャグにしたりボケたりして"♪チャンチャン"とオチをつける。 和ませる術なのだ。
正直、 デビュー当時は怖くて余分な緊張もした。 しかし、 気がつくとだんだん居心地の良い現場となっていたのだ。
ある時、 現代ドラマの劇中劇でワンシーンだけ殺陣をすることになった。 私は女剣士という設定なのでカッコよくきめなければならない。 「剣会」 の皆さんは当然とても上手く斬られて下さる。 なのに何とも腑甲斐ない自分の姿。 すっかりショゲていると、 「やるんやったらケイコつけたるで」 と剣会の方々。
撮影終了後、 基本からコツ等、 かなりの時間汗だくで教えて下さった。 今度はいつ私の立ち回りがあるやも分からないのに、 「サマになってきたで」 の言葉がどんなに嬉しかったか。 そして 「またいつでも時間つくるでー」 と笑顔。 彼らからすると昔ながらの"創る"を共有する自然の姿なのであろう。
太秦にはそんなきびしくあたたかい釜の飯がある。 来年もまた、 同じ釜の飯を食べさせてもらえそうだ。 私は今から楽しみにしている。 もちろん気の引き締まる思いで。 |
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