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女優がゆく  京都の撮影所
 B映像京都
若村麻由美

 私は大映株式会社京都撮影所の全盛期を知らない世代の女優ですが、 高校時代に銀座の並木座で 「雨月物語」 「羅生門」 を見たときの新鮮な衝撃を忘れることができません。
 デビュー間もなく時代劇に出演することになり各映画会社の時代劇映画のビデオを夢中で見ました。 大映作品は奥深いイブシ銀のような映像美が印象的でした。 最初に映像京都に行って驚いたのは世界に誇る映画美術監督・西岡社長を始め、 私がドキドキして見た名作を作った当時の大映京都のスタッフが一線で活躍していらっしゃったことです。 各パートの親分方は現場で細かい説明などはされません。 刻々変わる撮影状況の中 「オー!」 「アー!」 と威勢のいい指示が飛び、 子や孫ほどの若いスタッフが黙々と準備する現場は何度見ても惚れ惚れします。 心意気を受け継ぐ若いスタッフと共に、 私も 「御家人斬九郎」 の芸者蔦吉役で五年に渡り育てて頂きました。
  「女優はキレイでないとアカン」 と、 スタッフ全員が美しく艶やかに映るよう工夫して下さるので、 「私は役としてそこにいればエエように撮ってくれはる〜」 という安心感で役に集中出来るので幸せです。 昨年から今年にかけて放送された連続時代劇 「夜桜お染」 の十七変化は、 殺陣・踊り・江戸太神楽・笛・三味線等、 毎話ごとに幾つものハードルがあり、 不器用な私の限界に挑戦した作品でしたが、 何よりもスタッフの熱意と愛情に支えられて四ヶ月間を燃焼し切ることが出来ました。
 タイムスリップしたようなメインセット 「江戸のムーランルージュ・菊川座」 に立てば自然と踊り出したくなる工夫の数々。 結髪さんはお染髷、 衣裳さんはお染結びを考案し、 放送三分に一度の割合で扮装替えする全てのカツラ・衣裳・小道具に桜を配するなど、 寝る間を惜しんでの仕事振りは他にも沢山あってお話し切れません。 本当に感動しました。 舞台では、 役者はお客様に育てられると言うけれど、 映像では、 スタッフに育てられるのだと実感しました。
 私にとっては宝物の詰まった現場。 再び 「宝の箱」 を開ける日を心待ちにしています。
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