昨年度の業界を振り返ると、邦画は相変わらず堅調で、時代劇など年配層に向けての企画も数多くあり、好調であったといえるでしょう。ただ企画の多くはテレビや出版との複合的なものが多く、自主企画がやや減少気味で、危機感を感じる向きもありました。一方テレビ界を見ると、テレビをつけている時間が大幅に減少してきています。この目減り現象はここ数年続いており、特にドラマの退潮は著しいものでした。それでも何本かの力作もあり、結局は見る方にとって、力のある企画のものは見るという、視聴者の選別がかなり激しくなってきたというのが、昨年度の傾向でありました。ところが、3・11の大震災が起こり、これはある意味で、日本のすべてを変えたといっていいと思いますが、わが業界にとっても大きな影響があり、特に映画の興行にとっては大きな打撃でした。このところ復調の傾向はありますが、対停電問題とか、まだまだ夏場に向けての興行の不安感が存在します。一方、テレビでは、テレビの持つ報道の側面が強調され、中核をなすのは報道であるとの認識が、ここにきて大きくテレビ観を再認識させたといっていいでしょう。
そうした中で、どなたも感じるように、今は時代の潮目にさしかかっているように思えます。原発問題は泥沼化し、先行きの見えない状況です。ある種、現代文明のもろさを露呈し、経済効率を優先したことで手痛い打撃をこうむり、この日本がどのように再生するか、重い枷となって我々の肩にのしかかっているといっていいでしょう。
また、エネルギー政策の行き先は混とんとしており、その意味でも時代は大きく変わろうとしています。それはどういうことかといえば、やはり、これまでの日本人の生き方が大きく変更を余儀なくされていることを、それぞれが実感せざるを得ないということではないでしょうか。
ある意味では、幸せという価値観についても、新しい生き方、新しい価値観を求めざるを得なくなってきています。我々がやっている映画・テレビのドラマというものは、そうした人間の生活、生き方に立脚しており、これからの企画の在り方も、いろいろな意味で新しいニュアンスが含まれてくるのではないかと期待しています。たとえば、家族観に即して考えると、戦後個人主義が強調されてきた結果、家族崩壊のドラマが、一つの時代を反映する形で、山田太一さんや倉本聰さんたちによって提出されてきました。そうしたなかで、震災後、不安感から結婚をする人が増えたと聞きますが、最小単位の家族が人間の生き方を示す基盤であり、自分がよって立つ基盤となるという家族観を、人々が求め始めたという変化があります。これはドラマにとっても注目すべきことです。
我々は、物語を語る仕事をしています。時代と人間を反映させ、同時に人が生きる意味を提出していく宿命を負っています。その意味では我々に課せられている責任は重大だといわなければならない時代になったといえます。こういう時代だからこそ、協会の横のつながり、連帯、そういうものが大きな意味を持つ時がきたと思います。この時にあたって、われわれ一人ひとりは、この協会の存立する意味、所属する意味を考えていいのではないかと思います。
ご承知のように、今年は、当協会も社団法人から一般社団法人に変わりました。協会にとっても新しい出発点に当ります。また今次総会では新しい理事の改選もあります。新しい気持ちで今年一年よろしくお願いします。
(この後議事に入りました。理事改選については次頁で、その他議事内容全般については同封する「第35回通常会員総会ご報告」をご参照下さい。)
会長 | 副会長 | |||
CX 杉田 成道 |
東映 坂上 順 |
D (ニッポン放送) 重村 一 |
NHK 西村与志木 |
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常務理事 | ||||
東宝 塚田 泰浩 |
東映 香月 純一 |
NHK 木田 幸紀 |
NTV 奥田 誠治 |
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TBS 貴島誠一郎 |
CX 長部 聡介 |
EX 板橋 順二 |
B (電通) 服部 洋 |
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理事 | ||||
東宝 (フリー) 福島 聡司 |
松竹 中嶋 等 |
角川 土川 勉 |
日活 谷口 公浩 |
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NHK 若泉 久朗 |
NTV (日テレアックスオン) 神蔵 克 |
EX 田中 芳之 |
TX 小川 治 |
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A (近代映画協会) 里中 哲夫 |
C (仕事) 小野 伸一 |
E (円谷ミュージック) 玉川 静 |
F (オフィス森江) 森江 宏 |
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監事 | ||||
E (彩の会) 小林 俊一 |
E (P・D・S) 工藤 英博 |
NHK (フリー) 松尾 武 |
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昨年7月よりテレビ朝日ドラマの担当になりました。右も左もまだわからないまま、歴史あるこの協会の大役を仰せつかり大変緊張しておりますが、どうぞ宜しくご指導下さい。東日本大震災以降、我々テレビドラマが果たせる役割をしっかり考えながら、諸先輩方が築かれてきた歴史と伝統を守りながら協会の更なる発展に微力ながら貢献させていただきたいと思っております。今後とも宜しくお願い致します。
テレビドラマは二つの数字に縛られている。一つは視聴率、もう一つは予算。これはサッカーでは手を使わない、野球ではラケットで打たない、というルールと同じで当然のことだ。しかし、ルールを踏まえた上で我々はサッカーをする。野球をしているのである。ルールは理解すればよい。ゲームは創らなければならない。
2年ほど名古屋で仕事をしていました。毎日、全部の局の視聴率をチェックする習慣から離れ、気に入ったものをのんびり見ていたら、なつかしい「物語の力」みたいなものを思い出しました。大震災以降、世の中には「物語の力」がぜひとも必要です。当協会の活動がその役に立つよう力を尽くしたいと思っています。よろしくお願いします。
入社してワイドショーを3年経験した後、24年の長きに渡りドラマ制作に携わっておりますが、まだまだ未熟者と反省すること多き日々です。何ができるかわかりませんが、諸先輩方がここまで育ててきたこの協会が今後とも発展するように頑張ります。よろしくお願いいたします。
始めに、東日本大震災により被災された皆さまと関係者の方々に、心よりお見舞い申し上げます。そして一日も早い復興をお祈り申し上げます。震災、原発により日本国中で不安定な状況が予想されます。私達の携わっている映画、テレビから楽しく元気になれる、そして希望の光が感じられるソフトを発信出来る様にしたいと思っております。諸先輩の皆様と一緒に地に足をつけて、基本に立ち返り一歩一歩進んでまいりたいと思います。ご指導ご鞭撻の程、宜しくお願い致します。
以前、協会員でないにも関わらず「私の新人時代」の原稿を書かせて頂き、その時期の仕事上の緊張状態を「第二の新人時代」と表現しました。ふと気づけば20年以上も映画、ドラマの企画制作に携わってまいりましたが、この度入会させていただくにあたり、御挨拶させていただく諸先輩の大きさに改めて圧倒され、またしても「第三の新人時代」の心境です。微力ながらお役に立てますよう頑張ります。
日本映画テレビプロデューサー協会理事に選任していただき大変名誉なことと感じていると同時に今ほど日本の映像文化産業の将来への布石が重要である時は無いのではないかと痛感しています。国内において長期的なテレビ視聴率の低下傾向と不況による製作予算の低減という状況の一方で対外的にもコンテンツの国際競争力の強化策を創りだしていかなければならないという大きな課題もあります。そうしたことにひとつでもお役に立てれるよう頑張りたいと思います。
金曜スーパープライム 終戦ドラマスペシャル
家庭の話で恐縮です。
私の母親は開戦当時11歳。齢80を数える彼女の過去を中年になった自分が共に振り返るとき、記憶の微細は曖昧になるもいまなお失せない体感の記憶が、彼女の口からむしろ鮮やかに繰り返されることに気付く。こと戦争は、私の知りえない現実だ。普通の少女が過ごした太平洋戦争の時間は、ものごとの真実に程遠いまま訳もわからず、日ごとに日本の空が低く降りてくるような息苦しさであったと、母の言動から感じていた。 彼女は「戦争はイヤッ!」と言う。老人が言うには子供っぽい言葉に聞こえるが、何をどう言うことでも足りない「イヤ!」という感情、その理由は、後世の人間に対して教科書が説明できるものではない。傷ついた体感は永遠に少女の体感のままで人に刻みこまれるものなのだとも、老いた母を通して知らされた。
置き去りにされた一つの史実がある。
太平洋戦争下の「犬の供出」。
その主たる目的は戦地の兵士の防寒で、家庭の愛玩犬を処分し毛皮を収集するもの。当時、国の命令に対しては反論の余地もなく、自らの手で犬の命を差し出すしかなかった普通の人々。そんな事態に追い込みまた追い込まれる戦争の現実…。
命がやりとりされる、それが戦争だから、命は名前を失った。名前を失った命は数えられることもなくなって、命の流出は際限なく理性を踏みしだいてゆく。その象徴に史実「犬の供出」を据え、戦争に飲み込まれる普通の人の、救いのない普通の話を創ろうと思う。
放送枠は「金曜スーパープライム」。
バラエティーを中心に、オールジャンルで単発を柔軟に繰り出す2時間枠。金曜日の19時〜21時放送で、児童と保護者また高齢者が夕食を摂る時間であり、気楽にテレビをつける時間帯だ。だから保護者に代わって「テレビ版 昔話の読み聞かせ」を試みる。
戦争を扱う多くのテレビドラマは、戦争を舞台にヒューマンドラマ、ラブストーリーを描く。そこにはヒーローも存在すれば、向上的な学びもある。感動しながらも私は老いた母の「イヤッ!」を思い出す。ああ嫌だ、という感情を描くテレビ、そもそも美談など無い戦争ドラマでは駄目かしらと思う。
そんな企みに、西島秀俊さん、檀れいさんの父母役を得、弊社の大塚恭司(「Mr.マリック超魔術シリーズ」、「岡本太郎明日の神話」、連続ドラマ「女王の教室」ほか)に演出を託し、まもなく撮影が終わる。
8月12日(金)19時からの2時間。
お子さんお孫さん方にご覧いただけるようふんばります。
「2012年度協会会員手帳」の編集が始まります。掲載事項変更希望の方は8月末日までに事務局へご連絡下さい。
今年もアウォードのための投票をお願いすることになりました。協会報に同封されたハガキに投票し、締切までにぜひご返送下さい。
一般社団法人 映画産業団体連合会が毎年12月1日に開催する「映画の日」では永年勤続功労表彰行事が行われます。
表彰者の資格は日本映画界に40年以上勤務し(1971年12月1日以前より従事)現在もなお現役として活躍されている方です。該当される方は協会へお知らせ願います。自薦、他薦を問いません。協会への締切は平成23年8月20日必着です。
記念すべき50回大会は5月21日(土)川崎国際生田緑地公園ゴルフ場で遠藤前会長・大谷元会長を含め19名が参加して行われました。(競技は新ペリアにて、結果は以下の通り)
順 位 | 氏 名 | アウト | イン | G | H | N |
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優 勝 | 小川 治 | 49 | 46 | 95 | 21.6 | 73.4 |
準優勝 | 財津 一郎 | 46 | 42 | 88 | 14.4 | 73.6 |
第三位 | 杉田 成道 | 42 | 45 | 87 | 13.2 | 73.8 |