日本映画テレビプロデューサー協会報

No.399  2011年9月号

今こそ、映像作家の情熱が問われている

大震災後の「国際ドラマフェステバル」。だからこそ、今年もやります。


日本映画テレビプロデューサー協会 副会長  重村 一(ニッポン放送)

日本映画テレビプロデューサー協会 副会長  重村 一(ニッポン放送) 震災から既に半年が経ちます。しかし、いまだ日本人が『平常心』に戻れているとは思えません。遅々として進まぬ『復旧、復興』そして終息の時期がいまだ見えぬ『原発事故』。更に「政治の混乱」、「経済の停滞」。
 そんな状況を踏まえ、このような事態に日本が追い込まれるとは夢にも考えていなかった5年前に、「内向き志向のドラマ人はもっと世界に目を向けるべきだ」『日本のドラマを海外へ向けて積極的に発信する礎を作ろう』との意図で創設された『国際ドラマフェスティバル』と『東京ドラマアウォード』を今年も華々しく開催することには、大きな抵抗感がありました。
 今はそれどころではないだろう。逆に、今だからこそ、国内に目を向け、何がテレビに出来るのか、映画はこの現実に如何に取り組み、何を語らねばならないのか。「1年休んで、皆がじっくり考える機会をもち、出直したらどうか」という意見も一部からは出ていたのも事実です。
 しかし、国が、国民が逆境にあるときこそ、ドラマや映画はそのメッセージ性の強さを活かして、積極的に活動の場を広げるべきではないか。その為にも、「内向き」にならず、目の前に突きつけられた現実から目を背ける事無く、制作者は発信を続けることこそ大事である。
 その意味でも、海外のクリエーターたちそれぞれが、抱えている課題に向き合い、発言、表現している作品に目を向け、われわれの糧として、今後のものづくりの参考とすべきではないか。そう考えれば、このようなイベントは厳しい環境だからこそ、「平常通り」続けようということになり、今年も会員の皆さまにもご協力をお願いすることになりました。
 ところで、先日、一週間ほど、北京に行ってまいりました。この『国際ドラマフェスティバル』を担当して、中国へは年に何回も行く機会があるのですが、行くたびに、中国の映画、テレビドラマへの環境が飛躍的に整備され、更に制度上も日本を上回る形に変貌しているのに驚かされます。確かに、以前より改善されつつあるとは言え、中国には、表現の自由』に関する、大きな問題点があるのは否定できません。しかし制作者達と話していると、その不自由を抱えていながらも日本では感じられない意欲と作品への熱情を感じるのです。今回、私はあえて、中国の制作プロダクションを数多く廻り、話を聞いてきました。今、中国の映像制作の主役は放送局ではありません。1万を超えるという制作会社なのです。中国政府はここ数年、アメリカ型の放送政策制度を、より過激に導入。放送局が制作部門を持てなくしました。放送局は編成、営業、報道の3部門が中心です。番組は全て、制作会社から購入します。8月後半、北京で全国のプロダクションとアジア(日本ではNHKのみ)の制作会社が参加して作品見本市が開催され、国内の各放送局の編成、調達担当が商談に集まります。この作品見本市は年々、大掛かりになり盛況をきたしています。
 この制度は、CCTVですら例外でなく、制作部門は分社化され、ここの作品がCCTVで放送されると言う保証はなくなりました。国営放送局から分離した制作会社といえども、民間と同列な競争を強いられているのです。
 制作会社はこの厳しい競争の中で、国内だけ、テレビだけに目を向けていては生き残れません、海外販売に力を入れ、映画製作やネットコンテンツ作りにも積極的な展開をしています。
 中国政府の幹部は「放送局と制作者を平等に扱うことで、中国のソフトパワーの水準を上げる」と明言しました。
 中国の海外作品の門戸開放はいまだ大きな壁がありますが、今回の会談で、そろそろ、枠を広げたいと言う趣旨の発言がありました。
 自国の制作能力の向上への自信からとも解釈できます。
 我々も、そろそろ『焦り』を感じるべきです。そうしなければ、韓国のみならず中国にも市場を席巻される不安が出てきました。
 さて、今回の『国際ドラマフェスティバル』は会場を「東京映画祭」と同じ、六本木ヒルズに移します。海外のバイヤーの便利さも考え、映画もドラマも同一箇所でチェック出来る体制とすると同時に少ない予算を効率的に使いたいと考えています。日時は10月24日、25日、是非、皆さまのご参加を期待します。

 

こんにちは!FCです。

佐賀県 フィルムコミッション 江島 宏

佐賀県 フィルムコミッション 江島 宏  「フィルムコミッションの目的はなんですか?」
 よく聞かれる質問に、私は毎回こう答えます。
 佐賀県フィルムコミッションは、佐賀県庁観光課に属しており『ロケ誘致を行い観光振興につなげる』ことが目的ではあるものの、実際「ロケ地を観光地にして多くの人を呼び込む」なんてことはここだけの話、夢物語。これで本当に成功しているのは北海道の富良野くらいじゃないでしょうか。この富良野レベルに到達するには宝くじに当たるようなもの。他にも大河ドラマの舞台や海外ドラマ・映画のロケ地に観光客がどっと押し寄せるのもよく耳にしますが、これも1年間に制作されるドラマや映画全体の本数から考えるとほんのわずかでしかなく、しかも一時的なブームでしかありません。
 それなのに、何故ロケ誘致をやるのか?まさにギャンブルになぜ挑戦していくのか?

 佐賀県は〝葉隠〟の里であるが故に、高い規範性と道徳性を重んじる県民性…なのかどうかは定かではありませんが、良く言えば「奥ゆかしくつつましやか」な方が昔からどうやら多いようです。「佐賀って何がありますか?」「佐賀の美味しいものは?」「佐賀の自慢を教えてください」などの問いに対して「いや〜佐賀って何もなかですよ」と答えがち。いやいや、自慢するものはたくさんあるんです。「海苔生産量」「羊羹消費額」「消防団の組織率」「カレールー消費量」などなど統計的な日本一から、〝古伊万里〟に代表される有田焼、佐賀牛に呼子のイカ、日本三大美肌の湯・嬉野温泉などなど物産から食にいたるまで誇れるものは多いんです。ちゃんと「ある」のに「佐賀は何もない」というんです。
 さらに一番問題なのが、本当に良いものを良いと感じていない人が多いということ。当たり前すぎて、その良さに気付いていないんです。だから佐賀県FCこそが、その目の前の〝当たり前〟を、映画やドラマという非日常のフィルターを通じて〝特別なもの〟へ昇華させ、地元の人が「なんじゃこりゃー!!!」とその素晴らしい魅力を再発見するきっかけを作る、いや作り出してあげられる存在でなければならないと思っています。他のFCは知りませんが、少なくとも私たち佐賀県FCは、地元の宝、自慢を作る、増やす、気付かせるためにロケ誘致に力を入れ、自信を持った地域の人が、日本全国、いや世界中に「自分たちの住むところはこんなに素晴らしいところだ!」と胸を張ってPRすることこそが、観光振興につながっていくものだと信じています。
 というか…(ぶっちゃけ佐賀みたいな地方の田舎に有名人やロケ隊が来るだけで十分盛り上がるんですよ。それが楽しいだけなんですけど、そうは言えないでしょ!)
PS.
 まだ佐賀県FCのロケ支援サービスを受けられていないプロデューサーの皆さまへ。
 うちはそんじょそこらのFCとは違います。佐賀ロケ経験のある方に聞いてもらえば解ると思います。いろいろ多くは言いません。先ずは佐賀県にシナハンに来てみてください。地方ロケのコストを十分カバーするだけの支援サービスとホスピタリティで、ロケ秘境の地〝佐賀県〟が病みつきになることでしょう!!


滋賀ロケーションオフィス 片山 昇

滋賀ロケーションオフィス 片山 昇  滋賀ロケーションオフィスは、年間100本を超える作品支援の実績があります。今年度もすでに滋賀が舞台となっている全国放送の2時間ドラマを3本、全国一斉公開級の映画を4本支援し、昨年は大河ドラマ「江〜姫たちの戦国〜」の大規模ロケを支援し、今年も大河ドラマ「平清盛」を支援するなど、少ないスタッフながら活発な活動を行っています。
 なぜそのように多くの作品で滋賀の地を選んでいただいているのか。それは、一つは滋賀県のもつ地域的な理由によるものと考えています。滋賀は古くは「近江」と呼ばれ、長く歴史の舞台の地となってきたため、魅力的なロケ地となりうる国宝・重文の建物が数多く残っていますが(東京、京都、奈良に次いで国宝・重要文化財の数は全国四位です!)、地元の社寺の御理解により、他府県に比べて撮影がスムーズに行えます。また、新幹線、名神・新名神高速道路、JR在来線などの社会資本が整備されているため、交通でのアクセスが非常に便利です。加えて、琵琶湖を中心とした豊かで魅力的な自然景観や古い街並みが数多く残っており、またエキストラの登録者数も3,000人を数えます。
 しかし、我々の一番の売りはスタッフの熱意です。プロデューサー、監督、制作担当など撮影スタッフの皆様の御要望にお応えすべく、誠心誠意、最大限の努力をしています。このコラムを読まれた関係者の皆様、滋賀ロケーションオフィスがお目に留まりましたら、是非お気軽にご相談下さい!

只今撮影中!

テレビ朝日編成制作局 制作2部  飯田 爽

テレビ朝日編成制作局 制作2部  飯田 爽 『バラ色の聖戦』

ただいま、こんなドラマを撮影中です。
「30歳で2児の母、ごく普通の主婦が、プロのモデルを目指し始め、才能を開花させてどんどん成功していく…」
『バラ色の聖戦』というドラマで、毎週日曜夜11時放送中です。
主演は吹石一恵さん。
モデル界の話だけあって、モデル役は全員現役で活躍しているモデルさんがキャスティングされていて、現場はまるで「少女時代」。通常の2倍の足の長さの美人がズラリ。


現在はロケ20日目。
スタートまでいくつもの勝負が残っているものの(ロケ場所問題、キャスティング問題、宣伝イベント…ああ考えただけで気が遠くなる…)なんとかここまで無事に来れてること、ドラマの神に感謝します。


といいますのも、私がプロデューサーとして先頭に立ってやらせてもらうのは、この「バラ色の聖戦」がはじめて。これまで、セカンドPとして数本担当したものの、企画選定、主演、監督、脚本家へのオファーなど、ゼロから立ち上げていく責任あるミッションを拝命したのは、今回初めてなのです。
最初はすべてがおっかなびっくり、涙目で我が道を探る日々でした。
何事においても、自分の押しているボタンが、正しいのかよく分からない。でも、私が自信なさそうだと交渉される相手も困っちゃうし、私が不安そうだと、集まってくれた大勢のスタッフが不安になる。
脚本の内容、番組のパッケージ、見せ方…。全てにおいて進むべき方向が「これでいい」かどうかなんて本当はわからない。でも、私が「いいんです!」って言わないと、始まらない。
先頭で舵を取る、ということ。
その重さと、しんどさと。
仕事というものを始めて、初めて味わう感覚でした。
…でも、私、分かっちゃいました。
ドラマ作りの上で仕方なく生じる、途方も無く大変、面倒くさい調整事の数々。AP時代からずっと思ってた「体力的にもその他色々で大変すぎるこのPという仕事を、なぜみんなやり続けられるのか」という疑問。 『バラ色の聖戦』
解けました。


渋パン5:45発、辛くない!
深夜延々編集もデスクワークも、辛くない!
ロケで焼けまくっても、辛くない!  蚊にかまれまくっても、痒くない!
事務所の人にちょっとした不手際で怒られても、全然辛くない!
気の重い交渉も、ちょっと気合で頑張れる!
ロケ弁続きでニキビが出来ても、睡眠不足でクマが濃くても、(ちょっと悲しいけど)辛くない!


…それは、このドラマを作りたい!と、言い出したのは、私だから。
力を貸してくれてる全てのキャスト・スタッフ・関係者の中で、多分一番苦労すべきは、私だから。
舵を取る重さと楽しさが、全ての痛みを無にしていく︱。
多分、プロデューサーをやると、アドレナリンが出続けるのだと。


というわけで「美」がテーマのドラマですが、私自身はたぶんボロボロになります。
でも、そんなことは辛くない。
毎日祈るような気持ちで、このドラマに全力を尽くします。

私の新人時代

TBSテレビ編成制作局 制作センター  ドラマ制作部  北川 雅一

TBSテレビ編成制作局 制作センター  ドラマ制作部  北川 雅一  入社してみると、同期のほとんどが標準語を話していた。私はずっと関西で暮らしていたので、母国語は関西弁である。標準語を自在に操る同期が自分より大層賢くお洒落にみえ、コンプレックスを感じた。賢さと標準語には何の関係もないということに気付くのに10年かかった。最初の現場はバラエティーだった。あるとき1年上の先輩から「サラリーマンはネクタイをするが、テレビの現場の人間にとってのネクタイは何だ?」と聞かれた。先輩が禅問答をしたいのか、トンチをしているのか分からなかったので、困って「さあ?」と答えたら「標準語だよ!」と激しく叱責された。それ以来できるだけ正しい標準語を話すように努力した。昨今の若いADが堂々と関西弁で仕事しているのを見るにつけ、時代は変わったなと思う。ちなみに激しく叱責されることを弊社では〝熱いシャワーを浴びる〟と呼んでいた。当時の私は自宅で温かい風呂に入るより、会社や六本木で熱いシャワーを浴びる回数が圧倒的に多かった。2年後ドラマ部に異動になった。ドラマ部には学生時代に演劇をかじった人間が大勢いて、演劇未経験の自分はこれにもコンプレックスを感じた。経験がないぶん、頑張らねばと空回りした。バラエティーではとにかく現場を盛り上げるために、大声で進行することを求められたので、同じ調子でドラマのロケで頑張っていたら、あるベテラン俳優さんから「駅弁助監督」というありがたくない呼称をいただいてしまった。駅弁売りのように大声でがなっていたからだ。大事なのは演劇経験の有無ではなく、正しい努力と異常すぎない個性であると気づくのに20年の月日が流れた。先日モンテカルロテレビ祭に行ってきた。周りは外国人ばかりで、英語やフランス語が飛び交っている。私はもちろん英語、フランス語は苦手なので、外国人が賢くお洒落に見えた。ああ、俺の人生はコンプレックスの堂々巡りだなあと異国の地で思った。こんなアホな人間が今も制作の現場にいられるのは、よき先輩、よき俳優さんに巡り合えたからだ。その方たちにとってはいい迷惑だったろうが、私は自分の強運に感謝する。

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