日本映画テレビプロデューサー協会報

No.409  2012年7月号

第36回  通常会員総会にあたっての会長挨拶

通常会員総会会場風景 当協会は昨年一般社団法人として新しくスタートしました。その間日本のみならず世界を揺るがした3・11があり、今年はいろいろな意味で、日本は転換点に来ているといった感じがいたします。日本人は各々が日本人であることを意識し始め、個人の主張の強かった日本人の心に、同胞に対するいたわりの気持ちが生まれ、原発エネルギー問題など国の基本になるような考え方を一人一人が迫られるといったことなど、その転換点を改めて考える機運が出てきています。ある意味では、世界全体が根本的なところで大きな変革をせまられてきている時代となったと感じています。
 こんな時代、われわれの周りを見ると例えば、映画は年間450数本作られていますが、ある統計によりますとそのうちリクープできた作品は、30本にも満たない数字です。制作条件も潤沢な予算の映画がある一方、ほとんどの現場では製作費が年を追って低下しており、現場の大多数は人の善意で成り立っているという厳しい状況です。また興行面でも邦画が好調ながら、全体では前年比で80%と大きく数字を下げています。そういう意味では監督もスタッフも育ちにくい危機的な状況といえます。
 一方テレビの状況といいますと、視聴率40%を超えた「家政婦のミタ」という番組はありましたが、全体的にいえば地上波のセットinユースが極端に落ちていて、ドラマでも15%以上の作品が減り、一桁の作品が続出しています。ただBSでいえば視聴率は一定数を確保しており、BS各社はかつてないほどの収益を上げています。そのことは見えないうちに視聴者層が推移・移行しているのではないかと思えると同時に、現場では、キャスティングの見直し等で制作費の抑制が行われるなど、制作条件がかつてないほどに悪化している状況がみてとれます。こうした中、地上波各局とも放送外収入の道を探り、ソフトのグローバル展開を図ることで収益を上げようとする経営方針に切り替えているのが現状です。
 以上のように映像の世界では、かつてないほどの厳しい状況におかれていますが、これは世界全体を見ても同じ困難な状況ともいえます。
 アメリカの凋落の中ギリシャ経済を巡るヨーロッパ危機、中国にも問題ありの状況の中で、世界は不安の状態にあり、これまでの文明観・価値観が再検討される時代となっています。日本でも消費税と高福祉社会の実現や、エネルギー問題に向けての構造変換に迫られている時代であり、われわれは今こそ新しい変換を生み出すための「産みの苦しみ」を味わいながら、試行錯誤を繰り返してゆかなければならないと考えています。
 こうした中、映画・テレビという映像の世界に住む我々が考えなければならないことは、アジアに向けて開かれた市場を開拓していくことです。これもこれまで試行錯誤してきたことですが、そうしなければ日本の出口はないと考えます。その中で、市場の閉塞した不安定な状況の中に提出する我々の映像は、今こそ希望のある企画、みなさんに生きる希望を与えられる企画ではないかとあらためて考えています。
懇親会風景 こうした中、当協会には今いくつかの課題があります。このところ、エランドール賞やその他の事業を通じ、当協会のステータスが上がってきていますが、一方で会員数の激減傾向がここ数年続いています。執行部としてはあらためて組織強化を第一命題として頑張ってゆく覚悟です。映像世界はここ数年新しく、かつコンプレックスされた多様なメディアの中にあり、しかも映画・テレビとの多様で創造的な交流が行われています。そのためには、協会も多様で多彩な人材の交流の場・情報の交換の場になっていくべきだとの考えで、会員の範囲の拡大にも意を注いでいくつもりです。
 組織強化の結果、多彩な会員同士で制作者としての根本問題が話し合われ、われわれ会員の意識の強化も図れるような協会にしたいと考えております。会員の皆さん、今年もよろしくお願いします。

各委員会 ことしの活動

総務委員会

委員長 小野  伸一

 総務委員長を拝命いたしました、小野です。
 前委員長があまりにも優秀だったため、駄目な部分ばかり目立ちますが、温かい目で見て頂ければと思います。
 会員の減少に歯止めがかからない。なんとか会員増加をと委員会も設置した。映画会社、テレビ局は制作の現場から外れると、協会から離れてしまう。ATPや日映協など制作会社で協会に入っていないプロデューサーにアピールしてはどうかと思う。ただし入会した時のメリットは?  と聞かれると黙り込むしかない。私自身は業界横断的な親交が得られることがメリットと考えているが、もっと具体的なお得感が無いと若いプロデューサーは入会してくれないのかな。

親睦委員会

副委員長 高橋  信仁

 親睦委員会は、自然の息吹きの中でリフレッシュ、健康維持と多岐の世代にわたる会員相互の親睦を図り、春と秋、年二回の懇親ゴルフを開催、52回を数えます。
 近年は若い人達は勿論のこと、会員の皆さんがお世話になっている関係者の方々も出来るだけ参加頂きたいと願っております。
 更に休日でリーズナブルなプレー費志向のため開催地が遠くなるなか、幹事一同、少しでも良い状況での開催をと奮闘努力中です。
 秋は11月10日(土)を予定しております。詳細は後日、会報にてご案内致します。皆さん、秋の一日をご一緒に楽しく過ごしませんか?

エランドール賞委員会

副委員長 若泉  久朗

 エランドール賞は今年度で第37回を迎えます。毎年活躍の著しい新人俳優とプロデューサー、業績優れた個人、グループを顕彰する賞です。
 「エランドール」はフランス語で「黄金の飛翔」という意味。目玉は新人賞で1956年の第1回の石原裕次郎、高倉健さん以来、業界でも権威ある賞として伝統を築いてきました。昨年は杏、高良健吾、井上真央、長谷川博己、吉高由里子さんが受賞しました。選考はプロデューサーの皆様による投票に基づきますので何卒よろしくお願いします。
 授賞式は毎年各テレビ局が持ち回りで担当してショーアップを図っています。昨年は日本テレビの担当で延友陽子アナウンサーの華やかな司会で盛り上がりました。今年の担当はテレビ朝日です。

セミナー・カフェ委員会

委員長 西村  与志木

「宝の山はどこにある」

 プロデューサー協会の会員に若いメンバーを入れたらと提案しているうちに、その当人もいつの間にか62歳ということになってしまいました。この前の総会のあとの懇親会を見ていても平均年齢は60を軽く超えているのではないかと思われます。私も1950年(昭和25年)生まれですので、団塊の世代の尻尾についている感じで、多くの先輩の重圧(?)を感じつつここまでやってまいりました。
 そこで少し視点を変えて考えてみると、これは大変なチャンスが到来しているのではないかと言えないこともありません。「興行」という視点で考えれば、この「ヒマとカネ」のある世代は大事なお客様であり宝の山でもあります。この世代に向けてビジネスを展開していくことが、大きなチャンスを生むことになるかも知れません。
 「プロデューサーズカフェ」は若い人たちに向けての育成事業ですが、自分の同世代やさらに若い世代の講師の話もさることながら、巨大なマーケットを形成する世代の話をじっくり聞くのも、若いプロデューサーたちが企画を立てていく上でヒントになるかも知れませんね。

アクターズ委員会

委員長 森江 宏

 アクターズセミナーは俳優さんを発掘・育成するセミナーです。毎回、応募者の中からオーディション形式で数名のセミナー受賞者を輩出してます。かっては自分の作品に価する俳優を求め小劇団をハシゴする、また出会った才能を大切に育てるプロデューサーがいました。数字戦争の渦中の今、キャスティングの組み合わせで企画が決まる現場では、そんな余裕はないのかも。
 だが、諸氏よ、年に一度の当セミナーには足を運んで頂きたい。顔色を変えた約60名の新人の中で、必ず気になるキャラクターと出会えるから。ちなみに今年、俳優大森南朋氏と結婚した小野ゆり子さんは21年度、最近放送した「クレオパトラな女たち」にゲスト主演した梅舟惟永さんは22年度の受賞者です。
 お待ちします。

著作権委員会

委員長 谷口  公浩

 私が所属する日活は、今年創立百周年を迎えますが、これまで製作された約六千本の映画の過半は既に失われています。
 映画の二次利用における重要性が認識されて久しい現在でも、オリジナル原版の保存に関しては、あまり顧みられていません。
 著作権に関して論じる以前に映画そのものが失われないようにすることこそ、これからの私たちに課せられた責務ではないでしょうか?

会報委員会

委員長 里中  哲夫

 プロデューサー協会とそれぞれの会員をつなぐ唯一のもの、それが会報です。
 ですから、その内容は協会と各委員会の活動の広報・報告と会員相互の交流が中心になっております。記事は活動の内容や問題がちゃんと伝わるように、それぞれの責任者の方にお願いしております。また、連載の「ただ今、撮影中」と「私の新人時代」は、会員交流の意味で様々な方に書いていただいております。
 少し寂しいのは、なかなか反応が無いことと、「我こそは」の投稿がないことです。
 どちらもお待ちしております。

 

只今撮影中

日本テレビ プロデューサー  次屋 尚

日本テレビ プロデューサー  次屋 尚 『ファミリー・コンプレックス』

 日本テレビで映画を放送する枠として27年間続く『金曜ロードショー』があります。毎週金曜夜の老舗枠が今春リニューアル&パワーアップし、表記も『金曜ロードSHOW!』に変わったのをご存知ですか? ジブリ作品や日テレMOVIEをいち早く地上波放送することはもちろん、大ヒット洋邦画を最速初放送したり、来日スターのインタビューと連動したりと様々な工夫をこらし、幅広い視聴者の獲得を狙っています。その流れをくむラインナップとして〈新作テレビドラマの発信〉があります。簡単に言うと、映画の放送枠で劇場公開を目的としない新作ドラマを放送するということです。
 では、通常の単発ドラマとの違いは? と、問われたら……。それは、映画に負けない作品性とキャスティングです! というのが答えになります。釈然としない回答に聞こえるかも知れません。でもその枠を預けられた制作者の私は、通常のドラマ枠とはまた異なる自由さにワクワクしながら今回のドラマ作りに取り組んでいます。
 ということで、ドラマ「ファミリー・コンプレックス」の脚本は、あの劇作家・鴻上尚史さんのオリジナル書き下ろしです。舞台を中心に、時代に鋭く切り込み支持されて来た鴻上ワールドをテレビドラマに展開します。「鴻上さん、何やりましょうか?  好きなことやりましょう  よ!」から始めて、「やりたいネタがあったんだよね」と氏が持ち込んだのは〝レンタル家族〟という題材。撮影風景さらに最近観た映画の話で盛り上がり、引き合いに出た映画『エンディングノート』のモチーフをくっつけて出来たのが今回の話「ファミリー・コンプレックス」です。レンタル家族業を営む若き起業家のところに、余命いくばくもない金持ち社長が現れ、自分を看取る家族を貸して欲しいと依頼する。そこにまだ新米の女の子が娘役として派遣され……、というストーリー。何かと最近多い「家族」をテーマにした作品には違いないのですが、そこは鴻上さんらしい斜めからの切り口で、ちょっと変わったホームドラマの台本が上がってきました。
 そしてキャスティング作業。これまで日本テレビの連続ドラマ等ではあまり登場しなかった俳優集めを意識しました。玉木宏さんを主演に、田中麗奈さん、吹石一恵さん、竹中直人さんらが台本を読み、賛同し集まってくれました。また、染谷将太さん、安藤サクラさんら、映画を中心に活躍する赤丸急上昇中の若手、さらに落語家の三遊亭円楽師匠、ジャーナリストの田原総一朗さんまで登場し、このドラマの脇を固めます。
 私にとって初仕事となる俳優が多い今回の現場は、新鮮であり何より刺激的です。ドラマのコンセプトからして今後のシリーズ化、あわよくば連ドラ化を密かにたくらむ今日この頃。放送は7月27日金曜夜9時、ちょっと気にして観てみてください。

 

私の新人時代

松竹株式会社 映像企画部  渡邊 竜

松竹株式会社 映像企画部  渡邊 竜  銀座の映画館に勤務していた入社三年目の私は突如テレビ制作の部署に異動となった。まったくの「ドシロート」である。どのくらいシロートかといえば例えば、それまでの私は「鬼平犯科帳」に弊社が関わっていることも知らなかった。
 最初についた作品は、テレビ東京さんのスペシャルドラマであった。松竹映画の名作に関わったベテランスタッフも混じる中にドシロートが一人。「ガンガン持ってきて」と言われ、「ガンガンって何ですか?」と答えて苦笑いされた。
 地方ロケもあった。佐渡ヶ島。日本海の荒波。いい画が撮れる場所だなあ……などと当時の私は考えず「しかし何もない辺鄙な場所だな」とぼーっと思う始末。当然、制作担当からは面と向かって「使えねえAPだな」と言われる。
 夜は、宿泊ホテルで宴会。そしてその後は議論好きの監督の部屋で役者数人と混じって酒席が開かれた。助監督と一緒に正座し、話を黙って聞いていると監督から「渡邊君が最近観た映画でよかったのは何かね?」と唐突に話を振られた。正直に当時大ヒットしていた若者向け恋愛映画を答えると「あれのどこがいいんだ?」と詰め寄られた。口ごもる。けれど、「水着姿の若手女優が素晴らしかったです」と答えたら、「そうか、俺もあの女優はいいと思ったよ」と監督に言われた。不思議な世界だなと思った。
 佐渡ヶ島ではある女優が段取りミスでスタッフとの記念写真を撮らずに帰ってしまうという事も起きた。佐渡から帰ってきて、上司に命じられ、その女優のご自宅まで送迎をすることになった。送迎の車中でかかっていたラジオが喧しく、女優から一言「何か他にないの?」と言われ、たまたまCDウォークマン(ipodなんてものはなかった!)に入っていたブライアン・ウィルソンの「スマイル」をかけたら、車中の空気が変わった。ほっとした。不思議な世界。
 ー不思議な世界だが、新鮮だった。幾多の局面でこの世界の先輩方に教わった。怒られた、としか思えなかったことも後から考えると実はアドバイスだったと分かったり。不思議な世界は、魅力的なのである。
 とようやく思い始めたまだまだ若輩者の私です。

事務局だより

◎正会員入会

◎退会

第57回「映画の日」 永年勤続表彰についてのご案内

 一般社団法人 映画産業団体連合会が毎年開催する「映画の日」では永年勤続功労表彰行事が行われます。
 表彰者の資格は原則として直接映画関連事業に関与され40年以上勤務し(1972年12月1日以前より従事)現在もなお現役として活躍されている方です。
 該当される方は協会へお知らせ願います。自薦、他薦を問いません。協会への締切は平成24年8月20日必着です。

国際ドラマフェスティバルの投票について

今年もアウォードのための投票をお願いすることになりました。
協会報に同封されたハガキに投票し、締切までにぜひご返送下さい。

2013年度 協会会員手帳について

「2013年度協会会員手帳」の編集が始まります。掲載事項変更希望の方は8月末日までに事務局へご連絡下さい。

インフォメーション

◎会議の記録と予定