日本映画テレビプロデューサー協会報

No.411  2012年10月号

国際ドラマフェスティバル開催概要決まる!!

 標記でもわかるように、今年の国際ドラマフェスティバルは、大きく変わった。
 一つは、フェスティバルは、アウォードの授賞式・パーティーの1日開催となったこと。したがって、二つには、2日目にあったシンポジュウムや、海外作品の上映等はなくなったこと。また、三つ目は、これまで、海外のバイヤーたちを招待し、TIFFICOMと連動して行ってきたイベントを止め、代わりに、来年の1月から3月にかけて、タイの3つの局で6つの放送枠を確保して、日本のドラマを放送することである。これは、このフェスティバルのありように対する反省や見直しの結果だが、こうした、対費用効果的、効率的な開催がどういう効果をもたらすかを見守りたい。また、今回の受賞作が、重村エグゼクティブディレクターの云う、我々の作品作りの姿勢の見直しに何らかの示唆を与えてくれるのかも注目すべきである。

アクターズセミナー2012 開催のお知らせ

アクターズ委員 中嶋  等

 審査員席にいる僕の方へ向かって来てナイフを突き付けた女性がいた。3分間ひたすら胡坐をかき一言も声を発せず顔の表情のみ僅かに変化させる男性がいた。鼓膜が破れるかと思うほどの大音量の声を発し所狭しと動き回る男性がいた。朱い長襦袢を身にまとい艶やかに大胆な仕草を見せる女性がいた。驚かされたり、緊張したり、ドキッとしたり、ハラハラしたり。アクターズセミナーのオーディションはいつも刺激に満ちている。俳優たちは全力で審査員に自分の存在をぶつけてくるからだ。11月4日(日)、西新宿アトリエクマノ、今回も新しい発見と驚きがあるはずだ。
 いみじくも先月号の重村副会長の一文に「日本のテレビや映画にオリジナルで斬新さを感じるものが少ない」という留学生の意見が取り沙汰されていた。牽強付会をお許し願えれば、キャスティングに関しても同様のことが指摘されよう。「出演者欄にはいつも同じ俳優ばかり、独創性がない」
 役者としての鍛錬はもちろん、大きな役をもらえるようになるには長い道のりと、プロデューサーやディレクターとの出会いが必要である。
 今回テレビ朝日のディレクターである常廣丈太氏にワークショップの講師を務めて頂く。オーディションの審査員長は杉田会長。審査員も名だたるメンバーが結集。独創性をもった俳優たちとの架け橋になればと夢を描きつつアクターズセミナーを開催する。

フリーの映像製作スタッフに国の労災保険適用を!

芸能関連労災問題連絡会(略称「芸能労災連」:代表 久保 明 日本映画俳優協会専務理事)から、以下の要請がありました。我々、日常の仕事には、どう注意を払っても事故は起こり得ます。こうした避けられない事故の備えとして参考にして下さい。

(会報委員会)


 「芸能労災連」は映画、テレビなど映像制作の現場から演劇、音楽など芸能諸ジャンルの制作現場における安全対策(確保)と事故発生時の補償制度の確立をめざす運動で、1989年から23年間地道な活動を続けてきた運動体です。
 現在は日本映像職能連合(崔洋一会長)、日本俳優連合(西田敏行理事長)、日本音楽家ユニオン(篠原猛代表委員)、日本演芸家連合、俳優関連団体連絡協議会(俳団連)、映画演劇の労働組合(映演労連、映演共闘)の7団体が参加しています。
 安全対策としては職能ごとの「安全マニュアル」づくりをすすめ、労働行政もこれを参考にして中央労働災害防止協会(中災防)で「映像制作現場の安全マニュアル」を発行しています。
 不幸にして制作現場で事故が発生し制作スタッフが怪我あるいは死亡し、そのスタッフが「フリーランスの契約者」であった場合、国の労災保険が適用できるかどうかが問題になります。国の労災保険が適用されるには、そのスタッフの契約が「雇用契約」であること(労働基準法第9条の「労働者」=「使用される者で、賃金を支払われる者」であること)が必須の要件です。
 映像制作スタッフは、かつては撮影所や放送局の社員で問題なく「労働基準法第9条の労働者」でしたが、いまの制作スタッフは大多数がフリーランス契約者で「雇用契約」かどうかがあいまいなため、「労働基準法第9条の労働者」と認定されず労災保険は適用外とされてきました。
 芸能労災連は個別事件での労災適用の取組みをすすめ、撮影中過労死したフリーのカメラマン瀬川浩さん(勅使河原宏監督作品『砂の女』撮影担当)の「労働者性」をめぐる裁判では、13年間の運動の結果、2002年に東京高裁で逆転勝利判決を得て労災適用をかちとり、2008年映画『劍岳・点の記』北アルプスでの撮影中に発生した落石事故で録音技師が「頭部骨折・脳挫傷」の重傷を負った事件でも、この作品の制作を担当した東映東京撮影所に協力して「労災適用」を得た実績があります。
 これまでの実績により、映像スタッフや劇団所属の俳優への労災保険適用は、事故が発生した際、労基署にきちんと説明すればOKになるケースがふえているが、これを一般化し容易にするため、労働行政(労働基準監督署)が用意している「労働条件(雇い入れ)通知書」をプロデューサーがスタッフへ交付するようにして欲しいのです。
 またプロデューサーが、個別の制作現場の事故で国の労災保険を申請する場合、芸能労災連に相談してもらえれば、実績を踏まえて対応できます。是非、ご連絡を。

(担当:緒方承武)


 紙面の都合で「雇い入れ通知書」の詳しい説明とか、労災適用の場合の負担金はどうなるのか等省略しておりますので、質問をお寄せいただければ随時掲載していきたいと思っております。また、緊急の場合は協会事務局へ。

(会報委員会・事務局)

 

只今撮影中

テレビ朝日 川島  誠史

テレビ朝日 川島 誠史木曜ミステリー「捜査地図の女」

 「私が地図好きだって、どうして分かったんですか」
 主演の真矢みきさんに初めてお会いしたとき、真矢さんは興奮ぎみにそう仰った。地図が大好きで「捜査地図」という視点から事件を解決する異色の女刑事が主役のこのドラマ。恥ずかしながら我々は真矢さんの地図好きは知らなかったので、俳優と役柄の運命的なマッチングにただただ驚いた。
 撮影に入る前から真矢さんの地図に対する熱い思いは伺っていたが、いざクランクインすると、真矢さんの地図好きをあらゆる場面で目の当たりにしている。ロケ先に着くと、技術セッティング中に、付近の案内板や周辺地図を見て回ったり、前のロケ地との位置関係を市街地図で確認したり、セットで撮影するときには小道具の地図を興味津々に眺めていたり、一瞬、主人公・珠子そのものがそこにいるのかと錯覚してしまうほどだ。
 私自身、京都が舞台のドラマを担当して5年ほど経ち、何となく「京都」というものを漠然と分か木曜ミステリー「捜査地図の女」ったつもりでいたが、そんな真矢さんと一緒にいると、「こんな場所もあったんだ!」「こんな逸話もあるのか!」と、色々な発見ができる。
 例えば、ちょっとネタバレになるが、京都の高台寺には、幽霊になった母親が夜な夜な子供に飴を届ける「幽霊飴伝説」が伝えられている。ではなぜ高台寺か。
 「高台寺」
   ↓ 
 「こうだいじ」
   ↓
 「子を大事」!

知らなくても全く困らないが、このドラマを作っていると、自然にそんな雑学を覚えてしまう。京都って面白い、京都って奥深い、今さらながらそんなことを最近つくづく思うようになった。
 いまでも書店の旅行書のコーナーには京都の本がずらりと並び、桜の季節や紅葉の季節は、京都中のホテルが取れなくなったり、新幹線のホームで身動きが取れなくなったりするほど、観光地「京都」の人気は根強い。真矢さんと一緒に京都を再発見しながら、週に一度「京都をちょっと旅した気分になった」と思っていただけるドラマを目指して、今日も撮影に臨んでいる。

私の新人時代

TBSテレビ 平野  隆

TBSテレビ 平野  隆  私は91年に入社したのだが、その後の数年間の記憶が斑状態でほとんど思い出すことが出来ない。それはおそらく、とっても楽しくない時間だったので、記憶を脳の奥深くへ閉じ込めているからだと思う。
 天真爛漫で穏やかな性格であった私を突然襲った旧体然とした制作現場。理不尽、過労死への一本道、言われなき誹謗中傷、底意地の悪いトラップ……今振り返っても、4年間もの間よく耐え忍んだもんだと思う。
 そんなこんなでなんとか脱出した先は、〝映画?〟のような部署だった。映画のような部署といったのは、映画を積極的に製作してるわけでもなく、かといって洋画の購入を必死に行っているわけでもない部署という意味だ。そこにはたった一人(その当時はやる気がなかった)上司がいて、その後17年の歳月の間、二人で現在の映画事業部の礎を築いてきたと思う。だから本当の意味での私の新人時代はそこから始まったと思う。
 映画の現場は私にとってとても新鮮だった。最初に担当したのは東映撮影所製作、次が山田洋次監督作品という〝ザッツ映画〟だったので、周囲からはテレビ局の人間だからいろんなイジメにあうと脅されていたが、そこにいた人達はとても穏やかな洗練されたプロで、私がそれまで経験した〝無意味な苦行〟には関わりも関心もない人達だった。
 それから31本の映画を製作した今振り返ってみると、TBSにいて本当によかったと思うこともある。それはTBSにいなければ決して製作できなかった作品と出会えたことだ。「余命1ヶ月の花嫁」は報道局のドキュメンタリー番組を見てどうしても映画化したいと思った作品だ。日本中のボランティアスタッフや、社内外の多くの人達との出会いがあった。完成した映画を観た御遺族から「本当にありがとうございました。千恵もとても喜んでいると思います」と言われた時、涙が溢れ出しそうになるのを必死で堪えながら、それまでの全てが報われた気がした。

事務局だより

◎正会員入会

2013年エランドール賞
授賞式・新春パーティーのお知らせ

詳細は次号でお知らせ致します。

第53回 プロデューサー協会  ゴルフ会開催のお知らせ

*初めて参加される方は事務局までご連絡下さい。

一般社団法人 日本映画テレビプロデューサー協会  親睦委員会  ☎03-5338-1235

 

インフォメーション

◎会議の記録と予定


◆お知らせ◆

7月の理事会で、これまで年間11回発行の会報を年9回の発行とすることが決まりました。
5月号の代わりに5月・6月合併号、11月号の代わりに11月・12月合併号となります。従って次回は11月・12月合併号を12月の初めに皆様の許にお届けする予定です。