日本映画テレビプロデューサー協会報

No.417  2013年5.6月号

国際ドラマフェスティバル報告「タイで感じた事」

日本映画テレビプロデューサー協会 副会長 重村 一

 いかなる国であっても、自国の文化や伝統を守り、産業を育成、発展させようと考えるのは当然である。コンテンツの世界もその例外であろうはずがない。
「J―SERIES―FESTIVAL」 いや、国家や民族のアイデンティティーを維持し、守るという視点でみれば、他のいかなる業種に比べて、他国の放送作品を受け入れることに関してのハードルが高くなるのはやむを得ないかもしれない。そう考えれば、単純に「日本のコンテンツの海外展開を促進し日の丸文化を世界に広めよう」という戦略が簡単に実現するものではない事がよくわかる筈である。
 「日本のドラマは面白くて質が高い」と自画自賛しても、相手の国の視聴者がそれを確認し、後押しをしてくれない限り海外番販の担当者が如何に額に汗してセールスに奔走しても、放送局が自国のドラマを押しのけてまで我々の作品を編成してくれる可能性は低い。ましてや、最近はアジアの国々をはじめ経済力が上昇している国家においてはテレビや映画の制作能力も急速に上がり、映像先進国と遜色ない作品を作り出してきている。海外から作品を買いつけなければソフトが不足するという状況はとっくに脱している国が年々数多くなってきているのだ。日本からわざわざ、コンテンツを買うメリットが無くなってきている。
「J―SERIES―FESTIVAL」 そんな危機感をこの数年にわたり「国際ドラマフェスティバル」を実施してきて強く感じるようになった。
 そこで、「原点」に戻り、我々から他国に出向き、採算を度外視してもまず日本のドラマを出来る限り多く見てもらおうではないか。そして日本ドラマのファンを増やして、それらの人々の中から「もっと日本の作品を編成して!」という声を巻き起こさなければならないという思いで企画されタイで実施されたのが「J―SERIES―FESTIVAL」である。
 まずはある期間、出来る限り多くの日本のドラマをタイの数局で放送して貰う、その為にはNHK、民放とも、作品単価を大幅にディスカウントしてタイの放送局に売る。
 その効果が出て、この春からタイで日本のドラマシリーズが31本編成されることになった。然し、視聴率が上がらねばその試みは一過性で終わってしまう。そうしない為に、買ってくれた局には番組PRも日本側がSPOT枠を有料で買い、番組が認知されるように徹底的に宣伝する。
 更に、日本のドラマが集中放送される事を知って貰う為に日本の有名タレントをバンコックに連れてゆき、JPOPともコラボして華やかなイベントを行ないブームアップを図る。このイベントには音事協にも協力して貰いアーティストのブッキングを手伝って頂いた。タレントは菅野美穂さんに快諾してもらい、ジャニーズ事務所も快くKAT―TUNの田口淳之介君を送り込んでくれた。
 結果、タイでのイベントは共同テレビの山田社長自らが陣頭指揮にあたったこともあり、大成功だった。会場はバンコックの中心街にある「サイアム・パラゴン」の2、000人収容のシネコンを使ったが、15時開場にも拘わらず午前中から若者が殺到。入場できない人が外のスクリーンでイベントの進行を見守るという盛況だった。
「J―SERIES―FESTIVAL」 このイベントで幾つか気が付いたことがある。イベントの進行はタイのMC二人に任せると共に、タイの人気アーティストにも参加してもらった。出来る限り、日本だけの宣伝イベントになるのを避けようと考えたからである。相手の国の文化を尊重し、一方的に日本の論理を押し付けないことの重要さが大切という事だ。また、イベントの中で日本のドラマのダイジェストを30分以上にわたって流した。この時間、観客を引き付けておくのが難しいかと心配したが、その心配はなかった。ただ、上映されているシーンを見て観客が声を上げるタレントが日本での人気とは違う。この事も我々の物差しだけで他国で受ける番組、タレントを勝手に決め込んではいけないという事を教えてくれていると思う。
「J―SERIES―FESTIVAL」 90年代、タイでは日本の放送番組が海外作品の70%を占めていた。その後、採算性の悪さや、ネットによる海賊版の横行に嫌気がさし、我々はこのマーケットに力を入れなくなった。日本国内で十分、作品の回収が出来たからという側面もある。
 その間隙を縫って、安く作品を提供、有名タレントも積極的に派遣して韓流ブームをタイでも作ったのが韓国である。今では一話あたりの単価は日本のそれを上回るという。
 事実、我々のイベントの前日、韓国の年数回あるKPOP祭りの一回目が行われていた。
 コンテンツに限らずだが、相手国の実情を理解するとともに、場当たり的でない継続的な日本への理解を求める為の努力を欠かしてはならない。今、政府、行政はコンテンツの海外流通に熱心だ、それがまた、一時の熱病で終わることの無いよう望みたい。

只今撮影中

NHK制作局ドラマ番組部 チーフプロデューサー  訓覇 圭

NHK制作局ドラマ番組部 チーフプロデューサー  訓覇 圭

NHK連続テレビ小説『あまちゃん』

 「あまちゃん」の企画を考え始めたのは、2年前のたしか夏頃だったと思います。おそらく、あの頃の多くの方がそうであったように、震災がありましたから、僕自身何を創っていいかまったく分からない、或いは、フィクションを創ることの意欲そのものを持てないでいました。けれども、日常は続いていく、生活していかなければならない。そんな漠然とした焦燥感の中、「朝ドラなら…」という気持ちが湧いてきました。NHKの中で「朝ドラ」は良く言えばドラマの王道、悪く言えば最もコンサバな枠です。過大な撮影量と過大な数字を要求され、ちょっとトガろうとすると「やめろやめろ」の嵐。放送が始まれば苦情の大嵐。要するに肝の据わった人しか出来ない、僕には過大すぎる枠です。でも、朝ドラにはテレビの原点のようなイメージがあって、当時は何だか自分のルーツみたいなものに帰りたい気持ちだったのかもしれません。
 とにかく楽しいドラマを創るしかない、そんな気持ちで宮藤官九郎さんとお会いしました。不遜にも手ぶらで会いに行った(必死で考えたが残念なことに何も思いつかなかった)僕を宮藤さんは足蹴にするわけでなく、幸福にも打合せを「せめてフィクションだけは夢のあるものにしたいですね」という言葉で終えることが出来ました。
「あまちゃん」 物語は、東京で引きこもりがちだった高校生・天野アキ(能年玲奈)が、母・春子(小泉今日子)に連れられ、祖母・夏(宮本信子)の住む東北の田舎町に帰郷することから始まります。夏は64才で現役を続ける〝伝説の海女〟。アキは、颯爽と海に潜る祖母の姿に感動し、「私、海女になる!」と宣言します。一方で、24年前、田舎を嫌い町を飛び出した春子と夏の関係はギクシャク。春子が「久しぶりに帰ってきた娘にお帰りの言葉もない」と言えば、夏は「ただいまも言えねえ娘に、お帰りが言えますか」とピシャリ。この母娘3人のホームドラマを軸に、やがては地元アイドルへと成長していくヒロインを、半年間にわたって楽しく描いていきます。目指すは、眠たい朝でも通用する喜劇です。
 その点で最もこだわったのが〝方言〟かもしれません。「あまちゃん」の明るいタッチを出すために、ベースとなる言葉をどうしても方言にしたかった。結果、宮城出身の宮藤さんが生まれ育った土地、東北が舞台となりました。もう一つのこだわりが、小泉今日子さんに出演して頂くことでした。テーマの一つが〝アイドル〟なので、僕たち世代としてはどうしても小泉さんの顔が浮かんでしまう。宮藤さんが初めて東北を描き、小泉さんがアイドルを目指す娘の母を演じる、〝地元(ルーツ)〟のお話。「あまちゃん」は、そんな感じのドラマです。
 撮影は何とか2/3を消化。脚本はいよいよ終盤戦、2008年から始まったドラマの時制もいよいよ2011年をまたごうとしています。過大な撮影量と毎日の苦情にげっそりしつつ、2年前の企画当初の気持ちを思い出す日々です。毎日放送してますので、よろしければ一度お試し下さい。

私の新人時代

株式会社角川書店 映像企画部  岡田 和則

株式会社角川書店 映像企画部  岡田 和則 映像の世界の扉を開けたのは、一通の電報だった。「1月29日9時小田急線成城学園前駅に来られたし」。
 東宝ビルト撮影所に到着し、プロデューサーの方とお会いした。明後日から撮影が始まる連続テレビドラマ「陽あたり良好!」を担当されており、面談では「演出部希望と聞いているけど現場がよく見える製作部からまず始めて、それから興味を持てる部署に行けばいいのではないかと」。
 面談もそこそこにそのままスタッフルームの一員になることとなった。
 当然、何をやっていいかも判らず。誰も何も指示をしてくれない。今なら判ることですが連続もののクランク・イン2日前はそれこそ大忙しです。新人に構っている時間なんてありません。所在なげにスタッフルームの片隅にいると、奥に座っている怖そうな方(後、私が大変お世話になるチーフ助監督)が、じゃれ付く子猫を面倒くさそうに払いのけていたので、これはと思い子猫をどかせました。実はこの子猫、主人公が飼っている設定の「退助」という劇用猫だったのです。私の最初の仕事は、劇用猫の世話係と相成りました。それからは餌やり、トイレといろいろ仕事はありますが、なによりも大変だったのが出入りの多いスタッフルーム故、度々の脱走です。その度に撮影所中を探し回り捕獲するのですが、捕獲出来なければ当然帰ることも出来ません。いろいろ考えて、餌缶を叩いてからゴハンをあげるようにしました。暫くすると缶を叩けば戻ってくるようになりました。
 いよいよ撮影初日です。
 最初の仕事はロケバスに乗るスタッフの確認です。誰がバスに乗るのかも判らずスタッフ表と照らし合わせて何とかチェック。
 初日は、主な舞台となる田園調布でした。何もかも新鮮で車止めの意味も判らず、1リッター瓶ほどもあるトランシーバーを2台持たされました。カメラ前のチーフ助監督に指示お願いしますと、トランシーバーを渡すと、自分に渡すのか? と怪訝な顔をされます。(当時のチーフ助監督はほとんど現場に出ることはなく。雲の上のような存在だったのです)。そんなことお構いなしで一番ロングへ駆け出しました。
 撮影は訳もわからず進んでいきました。
 1週間程撮影が進んだ頃、スタッフルーム前でプロデューサーとヒロインのマネージャーが言い争いをしています。どのような状態になっているかも判らず、撮影は中止となり。3日間撮影中止となりました。新しいヒロインが衣裳合わせをし、撮影再開となりました。
 その後、現場には、ボディーガードが付きました。まだ新人の私はやはり怖い世界なんだなと思いました。

事務局だより

◎退会

第54回 プロデューサー協会 親睦ゴルフ会結果

第54回大会は平成25年4月13日(土曜)越生ゴルフクラブで12名が参加して行われ、次のような結果となりました

順 位 氏 名 アウト イン
優 勝 玉川 静 46 47 93 19.2 73.8
準優勝 香月純一 48 49 97 22.8 74.2
第三位 黒井和男 44 45 89 13.2 75.8

総会と懇談パーティのご案内

第37回通常会員総会を左記により開催致します。
正会員の方はご出席下さい。
欠席される場合は総会成立のため、必ず委任状をご送付下さい。
(委任は出席理事氏名をご記入願います。)
また、総会終了後、恒例により懇親パーティー(18時開宴予定)を行います。
パーティーでは新功労会員の方への表彰も行う予定です。
懇親パーティーには賛助会員の方々もお誘いあわせの上、ぜひご参加下さい。

インフォメーション

◎会議の記録と予定