「世界に見せたいドラマがある」をキャッチフレーズとして始まった、このフェスティバルも本年で8回目。このフェスティバルを8年間仕切ってきた、重村副会長は、先月号の会報で、「8年間のメディア状況の変化を、映画のフィルムからの撤退、テレビのリアルタイム視聴から、タイムシフト視聴の劇的変化と捉え、変化の中で普遍なのは、コンテンツの善し悪しだ」と改めて説いた。また、今や、テレビの救世主となったインターネットと、クールジャパンの掛け声の下、「放送コンテンツ海外展開推進機構」=BEAJを中心とした、政府による積極的支援を「追い風」として、日本コンテンツ海外展開の促進を呼びかけたが、その落とし穴にも言及している。商売一辺倒になることへの戒めと、日本の制作者のアジア諸国、その諸国のコンテンツ、そしてその制作者に対する、ライバルとしての配慮であり、それぞれが持つ制作者としての志(=いいものを国内ばかりでなく、世界のできるだけ多くの人たちに見せたい)を大切にすべきだという指摘である。
今年のドラマフェスティバルは、アジア諸国のコンテンツの質が、押しなべて向上し(そのことは、当たり前だが歓迎すべきである)、公平な競争が行われ始めたように見えるアジアのコンテンツ事情を注意深く観察し、私たちが、なお日頃陥りがちなドメスティックなテレビドラマに対する理解を、この機会に検証してみるいい機会かもしれない。なお、アジアのスター達の参加が予定されるこの授賞式の模様はスカパーを通して、国内、インドネシア、タイなど、アジア数か国で放送される。
会員諸氏の、積極的な参加をお願いしたい。
国際ドラマフェスティバル
in TOKYO 2014
東京ドラマアウォード2014
*授賞式
(グランプリ作品、海外作品特別賞、部門賞、地域ドラマ賞、個人賞)
開催日/2014年10月23日(木)
会 場/東京プリンスホテル2階 鳳凰の間
開 始/12時30分開場 13時00分スタート
(写真は、昨年度のアウォードの様子)
朝日新聞 編集委員
石飛 徳樹
「るろうに剣心」の大友啓史監督を取材したとき、「日本の文化はデオドラント文化だ」と言っていたのが印象に残っている。「だから自分はNHKの大河ドラマ『龍馬伝』で徹底的に汚してみせたんだ」と。
日本の映画やテレビドラマがつまらなくなっているとしたら、それはここ30年の間に、すっかりデオドラント化されてしまったことが最大の要因だと思う。
デオドラント化は企画から脚本、撮影、演技など、あらゆるフェイズで進んでいるが、拙文では俳優について考えてみたい。
1970年代、若手の人気女優たちは「必然性」があれば普通に脱いでいた。関根恵子の「高校生ブルース」、秋吉久美子の「赤ちょうちん」、原田美枝子の「青春の殺人者」、竹下景子の「祭りの準備」、栗原小巻の「忍ぶ川」……。いずれ劣らぬ名作揃い。まさに必然性があったのだ。
テレビでも裸はタブーではなかった。「傷だらけの天使」では中山麻理がストリップを披露していた。不良性感度の高いドラマばかりではない。銭湯を舞台にした健全なホームコメディー「時間ですよ」でも、女性たちが堂々と脱いでいた(裸になっているのはみんな若い女性だったが)。
ところが、1980年代に入って、人気女優たちはどんどん脱がなくなっていった。映画会社よりも芸能事務所の方が強くなったせいだろうか。物語の中での必然性よりも、女優のイメージ戦略の方が重視されるようになっていった。
例えば、2010年に公開された李相日監督の「悪人」である。非常に面白い作品ではあったが、場末のホテルに入って主人公の男とセックスをする深津絵里は、やはりちゃんと脱ぐべきだった。彼女の哀しみを深津は演技力で醸し出していたが、あの場面で脱いでいれば、より痛く観客の心に突き刺さったと思う。
女優が脱がないと、描ける物語の範囲がかなり狭まってしまう。企画や脚本段階でも消毒・脱臭され、画一的なテーマの作品が並ぶことになる。
女優の場合は主役クラスのデオドラントが進んでいるのだが、男優は脇役のデオドラントが著しい。説得力をもって憎々しさを出せる男優がいなくなってしまった。佐分利信のように巨悪を演じられる男優もいなければ、小沢栄太郎のような脂ぎった悪、山茶花究のような酷薄な悪を表現出来る男優もいない。
魅力的な脇役が減ったわけではない。松重豊や大杉漣、遠藤憲一ら味のある役者はいるが、彼らは基本的に格好いい。明らかに女性にもてるタイプだ。一方で小日向文世や温水洋一、田山涼成といった格好良くない役者もいるが、彼らは基本的に善人のイメージだ。演技力でカバー出来るのだろうが、ビジュアルだけで憎々しさをたぎらせている感じではない。
脱ぐ女優と悪い男優。今の日本に欠けていたのはこの2タイプの俳優である。
ただしこのところ、「そこのみにて光輝く」の池脇千鶴や「海を感じる時」の市川由衣らが大胆かつリアルな濡れ場に挑んでおり、女優の方には脱デオドラントの動きがうかがえる。あとは悪い男優が登場してくれば、日本映画のバリエーションは大いに広がるのではないだろうか。そうすればきっとドラマも追随するに違いない。
総合編成局制作2部
プロデユーサー
船津 浩一
ドラマスペシャル
「松本清張~坂道の家」
プロデューサーの仕事の楽しみの一つに出会いがある。企画との出会い。スタッフ・キャストとの出会い。撮影で訪れる彼の地との出会い……。今回この作品で私にとって大きな出会いとなったのが、鶴橋康夫監督との出会いであった。大先輩である。とことん掘り下げる人物造形と特徴的な長回しなど独特の映像タッチの作品群は、私の記憶の中に強烈に焼き付いている。いつか仕事をご一緒させていただきたい憧れの存在であった。その鶴橋監督とこの作品で一緒に携われるチャンスが巡ってきた。
松本清張の言わずと知れた名作の「坂道の家」をベテランの池端俊策さんの手によって主人公の秘められた過去などを加味し、舞台を現代に置き換え男と女の濃密なミステリー群像劇に脚本を仕上げていただいた。
愛に飢えながらも、性に奔放だった母親の暗い影をひきずって生きる主人公を演じるのは尾野真千子さん。その主人公に惑わされ人生を狂わせ破滅に向かっていく愚かしい二人の男を演じるのは、柄本明さんと小澤征悦さん。他に渡辺えりさん、笛木優子さんらが鶴橋組に集結した。
楽しい現場であった。芸達者で個性的なキャストたちが繰り広げる息を呑むような芝居と、監督の鶴橋マジックともいえる演出を目の当たりに見ることができた本当に贅沢な時間だった。
猛暑の中での一か月にわたった撮影はまさに熱い現場となった。撮影の初日はいつでも独特の緊張感に覆われるものだ。その緊張感を解きほぐしてくれたのが温かさとユーモアに満ちた監督の初日の挨拶とキャスト紹介であった。固くなっていた皆の表情が笑顔に変わった。
鶴橋組の特徴は一言でいえば愛にあふれた現場といえる。監督はことあるごとに常にスタッフやキャストに声掛けをしながら現場を進めていく。まだ現場に入って間もない若い新人のスタッフに対しても「現場はどうだ?」「何か困っていることはないか?」監督の細やかな愛情に触れ、のびのびとした良い緊張感に包まれながら撮影は進んでいった。
少女の頃に嫌悪していた母親を殺してしまった過去を持つ主人公は、大人になりやはり母と同じように男に身体を開いて生きている。その女の妖艶な魅力の虜になり全財産をつぎ込み破滅していく初老の男。ある日、女は一生をかけて守りたい幼なじみの男に再会する。
男女の性と生、人間の業の哀しさや愚かさが三人の男女の情念に溢れた関係性の中で描かれていく。
物語が進むにつれキャストたちの顔つきもどんどん変わり、転がるように話が展開していきます。この冬放送の「松本清張~坂道の家」、どうかご期待ください。
鶴橋監督のドラマ作りに注ぐ絶え間ない愛情と情熱を知り、私自身、あらためて考えるところが沢山あった。撮影中、監督に何度か問いかけられた。「船津! いまのテレビドラマは大丈夫か?」大先輩に投げかけられたこの問いが忘れられない夏となった。
松竹株式会社
映像企画部テレビ企画室
プロデューサー
齋藤 寛之
子供のころから映画やテレビドラマに触れることで何か面白いことをやっているというワクワク感が頭のどこかにあり、学生時代に将来の選択を考えるうえで制作という仕事に触れてみたい、と飛び込んだのが知り合いに教えてもらった制作会社のADのアルバイトでした。バイトに入って二週間ぐらいで行った編集室でのドラマを繋いでいるところを初めて見たときの衝撃は忘れられません。現場として初めて行った北の大地への一歩がプライベートでなく仕事、右も左もわからないドラマのAD。ロケ場所の先乗りする制作の仕事やシーンに必要な小物を書き出す美術香盤など、とにかく何をやるとか何ができるとかなく、「これやって」と先輩からもらった1を1返し、それが2になり3になり……今の会社に入る前に、現場という役割を持ったプロの方々の中で信頼を得ていくためには、とにかく何かしらの結果で返さないと次の仕事がもらえないという、厳しくも当たり前のシステムを学ぶことができたことは、現在の仕事に対する姿勢の原点となっています。
今の会社に入社してから映像の仕事にかかわった際も、会社にもらった名刺を相手に渡した瞬間から、相手があることは新人だろうと関係ないということ、名刺に書いてある肩書きを持って社外の方と向き合っていくことの怖さと難しさを痛感した機会もありました。会社や同僚の方にもとても迷惑をかけました。詳しくは書けないようなことですが、あの失敗が今の私の血肉となっていることは間違いありません。今の若い人たちに比べ、失敗ができても取り返しが効いた環境は、人にも仕事にも環境にも恵まれていたことを今さらながら感謝しています。
映像にかかわる仕事に携わり15年近くになりますが、この機会に過去の自分の経験を振り返ってみると恥ずかしくもありながら、考えずに進む勢いと、前のめりに倒れる覚悟で進んでいくことがどれだけ貴重かと改めて感じることができました。長くやっていくことの良さと失っていく事のバランスを意識しながら、新たな気持ちで仕事と向き合っていきたいと思います。
◎正会員入会
須藤 泰司(東映)
小西 真人(E・WOWOW)
青木 竹彦(E・WOWOW)
那須野 哲弥(E・WOWOW)
◎退会
日笠 淳(東映)
大村 英治(E・WOWOW)
船越 雄一(E・WOWOW)
秋の親睦ゴルフ会を次により開催致します。ぜひご参加下さい。
《日時》平成26年11月7日(金曜) 競技方法 新ぺリア方式
8時30分集合
◎9時3分アウトスタート(5組)
《場所》エーデルワイスゴルフクラブ 〒350-0455
埼玉県入間郡毛呂山町阿諏訪154番地
TEL:049-294-9311(代)
関越自動車道・鶴ヶ島I.C.から約13km(約20分)
東武越生線・東毛呂駅発、
西武池袋線・飯能駅発、クラブバスあり
《会費》約20,000円
(プレー費、パーティー費、賞品代含む)
《締切》10月24日(金)事務局必着
※初めて参加される方は事務局までご連絡下さい。
一般社団法人
日本映画テレビプロデューサー協会
親睦委員会
TEL:03(5338)1235
開催のお知らせ
日時:2014年11月30日(日)
10時30分~17時30分(受付開始10時)
会場:専門学校東京アナウンス学院
アトリエクマノ
新宿区西新宿2-11-2
会費:5,000円(定員60名)書類審査あり
ワークショップ講師:富樫森監督
※詳細は同封の参加応募用紙をご覧下さい。
授賞式・新春パーティーのお知らせ
日時:2015年2月5日(木) 18時受付
18時30分開会 20時30分閉会予定
会場:新宿京王プラザホテル 南館5階
エミネンスホール(立食形式)
※詳細は次号でお知らせ致します。
◎会議の記録
9月2日(火)
アクターズ委員会(事務局)
9月9日(火)
エランドール賞委員会(事務局)
9月22日(月)
会報委員会(事務局)
9月24日(水)
第2回定例理事会(東映本社)
◎会議の予定
10月20日(月)
エランドール賞委員会(事務局)
10月27日(月)
親睦委員会(事務局)
10月28日(火)
第3回定例理事会(東映本社)
11月6日(木)
アクターズ委員会(事務局)
11月17日(月)
会報委員会(事務局)