第40回通常会員総会にあたって一言ご挨拶申し上げます。
二つトピックスがあります。
一つは、来る8月1日より、いよいよスーパーハイビジョンの試験放送が始まることです。BS17チャンネルを使って、原則一日7時間の8K試験放送が実施されます。ただし一般家庭で見ることはできず、最寄りのNHKに行っていただいて、85インチのモニターで見ていただくということになります。紀行、音楽、自然、美術などいろいろなジャンルの作品がラインナップされています。もちろんドラマもあります。ただし8月いっぱいは特別編成でリオデジャネイロ・オリンピックを、生中継を交えてご覧いただくことになっています。この試験放送を2年ほど続け、2018年後半には4K8Kの実用放送が始まります。その頃にはスーパーハイビジョンが受信できるテレビが売り出されていて、多くの人が家庭でスーパーハイビジョンを楽しむことができるようになっているでしょう。
またケーブルテレビではもっと早く4Kコンテンツを楽しむことができる見込みです。
一方、2020年には、スマホなどの通信システムが、大容量のデータを送信できる5Gと呼ばれるものに変わる予定です。そうなるとスマホで4Kコンテンツを見られるというネット環境になります。
このように高精細映像のコンテンツが身近になるのは、もうまもなくです。そして2020年の東京オリンピック・パラリンピックが起爆剤となって4K8Kが爆発的に普及するのは間違いないところでしょう。
映画やドラマのプロデューサーにとっては、これは大変好ましい状況です。4K8Kの高精細映像作品の持つ迫力ある画面に期待が集まっています。わたしたちも4K8Kの作品作りに積極的に乗り出していく必要があると思います。
もう一つは、テレビの世帯視聴率が下がり続けていることです。特に59歳以下の現役世代では平日、土日を問わずどの時間帯でも前年を下回っています。だからといって、簡単にテレビ離れが進行しているとはいえませんが、少なくともオンタイムでの視聴が減ってきているのは確かでしょう。録画やネットを利用して、都合のいい時間に興味のあるコンテンツを楽しむというライフスタイルが拡大してきています。その中心となっているコンテンツは、映画でありドラマです。
私たちはこの状況にも目を配り、コンテンツを作っていく必要があります。とりわけネットで配信するコンテンツは、本当は放送と同じものでいいということはないはずです。ネットでの視聴を前提にしたネット用の作品の作り方を探っていく必要があると思います。
テクノロジーの進歩が早く、制作する人間の、頭の切り替えがなかなかついていかないというのが実情でしょうが、ここはしっかり対応していかなければなりません。プロデューサーの皆さんも、変革の情勢を、新しい作品を制作する絶好のチャンスだととらえて、意欲的に取り組んでもらいたい、ということをお願いして挨拶にしたいと思います。
よろしくお願いします。
プロデューサーズ・カフェ委員会 NHK制作局 若泉 久朗
6月10日にプロデューサーズ・カフェ(Pカフェ)を開催しました。今回のゲストは興行収入28・4億円で昨年の邦画の実写では第3位のメガヒットを飛ばした映画「ビリギャル」プロデューサーの(株)TBSテレビ 那須田淳さんです。
那須田さんは映画とテレビ両方のプロデューサーをしています。「テレビは50代以上、映画は10代」とターゲットを区別していて今回は青春物をやろうと企画しました。原作は実話なので徹底的に取材したそうです。取材のコツは思い出話をしてもらうこと。時間の流れどおりに全部話してもらうと次々と宝の山があるそうです。いろいろ取材してみるとダメな人たちばかりだった。それが面白くて「スーパーな人が起こす奇跡ではなく、ダメな人とダメな人の掛け算が奇跡を起こす」という主題が出来ました。苦労したのは受験ものなのでどんな参考書を使っているかリアルに揃えた、試験問題の権利処理が難題だった、キャンパス内での撮影許可が下りずに合成処理をしたなどでした。力をいれたのは宣伝。見てほしいのは主人公と同じ金髪ギャルなので説教臭いと思われたら見に来ない。宣伝文で「感動作」という言葉は絶対使わないようにしました。予告編で面白そうと期待させて、確認するために劇場へ呼び込んで、「意外と泣けた」という戦略を一貫しました。公開はゴールデンウィークで見事に金髪ギャルたちを泣かせて大ヒットになりました。
今回のPカフェの開催では映像産業振興機構(VIPO)とタッグを組みました。参加者は計43人。プロデューサー協会の若手プロデューサーに加えてVIPOの広報で映画会社の若手プロデューサーと宣伝プロデューサー、さらに若手映画作家プロジェクト(ndjc)の若手監督たちが集まりました。上記の制作の話に加えて、中国との国際共同制作やネット配信など今らしいテーマにも質問が及び、2時間の白熱したPカフェとなりました。次回は秋の開催を予定しています。
テレビ東京 金曜8時のドラマ 『石川五右衛門』
昨年12月にクランクインした「石川五右衛門」。天下の大泥棒・石川五右衛門を稀代の歌舞伎俳優、市川海老蔵さんに演じていただきます。海老蔵さんの国内外の公演の合間を縫いながら、ようやく6月、最終話の撮影を迎えています。
海老蔵さんが連続ドラマに主演するのは、2004年の「市川海老蔵」襲名後初です。また、テレビ東京さんのゴールデンタイムで連続時代劇が復活するのは、2008年以来の8年ぶりとなります。
時代劇があまり地上波で見られなくなった昨今、私たちは古くて新しい時代劇を目指すことにいたしました。時代劇を好きな人だけでなく、時代劇をあまり見たことがない人まで楽しめる作品です。そもそも新作歌舞伎をベースにテレビドラマ化すること自体が新旧融合なのですが、他にも様々な融合を行っています。松竹京都の時代劇のエースと言える石原興監督、服部大二監督、井上昌典監督と人物デザイン監修の柘植伊佐夫さんには、京都で幾多の名作に携わってきた松竹衣裳さんと八木かつらさんと何度も何度もアイデア交換を繰り返しながら、モダンで見たことのない扮装姿を作り上げていただきました。
海老蔵さん演じる五右衛門のかっこよさのみならず、一家の面々も個性的です。最近は一寸法師として名を馳せた(?)前野朋哉さんはぐるぐるまゆげ、男勝りの女を演じる高月彩良さんの忍び姿は映画「キックアス」の和製ヒットガールのようなクールさです。
原作とメイン脚本は、『金田一少年の事件簿』『神の雫』で有名な漫画原作者・樹林伸さんに手掛けていただきました。さらに渡辺雄介さん、森下直さん、大原久澄さん、山本むつみさんと世代性別混合の脚本家チームで、華麗な手口で盗みを働く石川五右衛門の痛快さを描きだしていただきました。「金銀財宝盗んでも、悪党外道は許さねえ」と五右衛門が時の権力者・豊臣秀吉(國村隼さん)と対決するシーンの緊張感は時代劇ファンにはたまらないでしょうし、側室・茶々(比嘉愛未さん)と五右衛門の美男美女のロマンスは女性必見です。そして「石川五右衛門」は、なんと4Kカメラで撮影しています。今までも京都の松竹では4Kカメラでの時代劇の撮影は経験しておりましたが、4K納品までを行うのはおそらく初めてではないでしょうか。スタッフの気合も入っており、物語のカギを握る煙管もかなり値の張る(言えないですが…)代物です。4K映像で作品世界を隅々までご堪能いただける時代劇。4Kでの「絶景かな」や「釜ゆで」シーンも勿論みどころです。
まさに古くて新しい連続時代劇「石川五右衛門」。10月金曜8時のドラマにご期待ください!
「彼女がとっても演劇好き」という軽薄な理由から観始めた舞台で、私は「ドラマで人の心を射抜く」ことに惹かれ、大学時代には芝居の世界にどっぷりと浸った(決して出る側ではなく)。そして就活では、かつては教師を志す原因となった「熱中時代」や「金八先生」、35年経っても記憶が蘇る戦争ドラマや完全に自分をリンクさせた恋愛ドラマなど、「多大な影響を受けてきたテレビドラマで、人の心を射抜きたい!」と、TV局にターゲットを絞った。そんな激しい思い込みの中、22年前にNHKで新人時代を迎えた。
同期の中で唯一ドラマ畑に配属され、大阪局で社会人スタートした私が最初に就いた番組は朝ドラだった。未知の関西圏での暮らしが始まったばかりにもかかわらず、「ロケだから」といきなり福岡へ6週間。初めての現場は、かつては当たり前のブラック企業的な勤務だった。しかし、「ロケって何?」って内心ビビっていた最初の頃からも、「芝居がわかるぜ!」と若気の至りとはいえ、態度だけはデカかった。にもかかわらず、先輩らに可愛がられ、また、出演者には高校生の菅野美穂さんなどがいて8か月の収録期間を共に過ごすという楽しい助監督デビューを果たした。こうして、どや顔で仕事していたからか1年後にはチーフ助監督も任され、肌が合った先輩演出家から番組を面白くする方法をとことん盗んだ。同時に、ドラマ助監督業の合間に、10~25分程の一般番組のディレクターも任された。この時に一人で練ったコメント書きや編集は、良い財産となった。
そして、4年目にはドラマ演出としての新人時代も始まり、さらに12年のNHKドラマ勤務を経て日テレへ移籍。ここで2度目の新人を経験するが、どこでもドラマ作りの基本は変わらず、日テレドラマでも無事10年が過ぎようとしている。しかし、あの目的はいまだ果たせていない気がする。だから、その思いだけは「新人時代のまま」でいる。
一般社団法人 映画産業団体連合会が毎年開催する「映画の日」では永年勤続功労表彰行事が行われます。
表彰者の資格は原則として直接映画関連事業に関与され40年以上勤務し(1976年12月1日以前より従事)現在もなお現役として活躍されている方です。自薦、他薦を問いませんので該当される方は協会へお知らせ願います。ご本人に指定の調書を作成していただき当協会より資格審査会に提出し表彰が決定されます。当協会への調書提出の締切は8月20日です。
今年もアウォードのための投票をお願いすることになりました。
協会報に同封されたハガキに投票し、締切までにぜひご返送下さい。
「2017年度協会会員手帳」の編集が始まります。
掲載事項変更希望の方は8月末日までに事務局へご連絡下さい。