「そして父になる」より是枝裕和監督の作品を担当して4作目となります。
是枝作品については、作品性と商業性の両立を目指すのが私の立場でのミッションと考えておりますが、今回はそのバランスが非常に難しいのではないか、果たして皆さんにどうご覧いただけるか公開前はかなり不安でしたので、賞状に記されていた「難度の高いオリジナル作品を~」との評価は、同業の方々だからこそご理解していただいてのことと、たいへん嬉しく思いました。
是枝作品においては(監督に負う部分が非常に大きいので)、プロデューサーとはなんだろうと自問することは頻繁にありますが、この賞をいただくとそのことを改めて突きつけられる思いです。
今作は非常に難しいテーマであり、誰が殺したかという答えを、監督自身が持たずに脚本を書くという大きなトライアルで、撮影現場でも役者さんたち(特に福山さんと役所さん)のやりとりを見ながら、それに応じて更に書き直すという是枝監督ならではのドキュメンタリー的なアプローチでもあったので、着地点がかなり「霧の中」での緊張感あふれる現場でしたし、編集も含め今回ほど監督が悩まれた制作過程は、私にとっては初めてでした。まさにプロデューサーとしての度量を試される状況だったとも言えますが、役者さんやスタッフが監督を信頼しきっている中、経験値で最終的には見事に着地すると信じていながらも心配が上回り何度も監督を問い詰め、むしろ監督に余計な負荷をかけてしまった次第で、その反省の最中でこのような賞をいただいてしまい恐縮しております。
この受賞は、鳥肌ものの演技をしてくださった素晴らしい役者の方々、世界レベルの最高のスタッフの方々、難産ながら決してブレずに着地させた監督の力による作品力と、宣伝、興行、海外の各チームと、いつものように【是枝組総力】で得た結果であり、その総合力を評価してくださったことと受けとめております。ありがとうございました。
日本テレビ映画事業部が実施した映画企画の公募。社内外から頂いた400本を超える企画の中で、ロボットの小出真佐樹氏の企画に目が留まりました。それが、【韓国映画「殺人の告白」のリメイク】との出会いでした。韓国から取り寄せたDVDは英語字幕のものだったので、英和辞書を片手に5時間かけて観ました…。観終わり、最初に感じた事は「この企画は、絶対に成功する」という無根拠な確信でした。が、当然、企画開発は非常に難航しました。オリジナル作品で描かれている価値観、国勢など文化の違いを日本映画に落とし込む変換作業はもちろん、人気原作映画化企画でも無く、テーマ性も残虐だという偏見もあり、協力者・支持者を得にくい環境で、何度も何度も企画が頓挫しかけました。しかし、苦境に立たされる度に「北島さんが諦めたら全て終わりますよ」と常に背中を支え続けてくれたのが入江監督でした。最後まで同じ方向を見続けてくれたおかげで、逆境に立ち向かう事が出来たと思います。この企画を推し進める中で、プロデューサーの仕事とは〝同じ場所から同じ方向を一緒に見てくれる仲間たちと励む事〟なのだと確信しました。そういう思いを抱いて製作した作品で〝奨励賞〟を頂けたのは本当に嬉しく思っております。ありがとうございます。この賞のありがたさを忘れず、今後も監督、スタッフ、キャスト、製作委員会の皆さんと、映画製作に励み続けたいと思います。
いつも一人の少女のことを考えています。 どこにも行くところがなくて部屋で一人テレビを観ている、17歳の少女のことを。 その子が来週を楽しみに生き延びられるようなドラマが作りたい。 そう思ってドラマの世界に飛び込みました。 この度は、名誉ある賞をありがとうございます。 作品に投票して頂いた結果としてプロデューサー賞を頂きましたので、全キャスト・スタッフを代表して感謝申し上げます。 いつか仕事をしたいと夢みていた坂元裕二さんと企画を立ち上げることになり、大事にしていること、されたら嫌なこと、そんな雑談を重ねていく中で生まれたのが「カルテット」でした。素敵なヒーローも派手な事件もなく、ただただ4人の男女の交錯する人生を描いていくドラマです。よくこんな企画を通してくれたなと思います。 『表現とは、生きづらさを感じている人の背中をそっと押したり寄り添ったりするものでなければならない』 これは、入社した頃に師匠が教えてくれた言葉です。 最終回が終わってもう1年以上が経ちますが、昨日視聴者の方からお手紙をもらいました。最終話の舞台となった熱海のホテルを訪れ、全話観直してくださったこと。「カルテット」に出会えたからもう「人生やり直しスイッチ」は押さないと決めたことが書かれていました。 もしかしたら、背中をそっと押すことができたのかもしれません。 部屋に閉じこもってドラマを観ていた17歳の私は、18年がたち、大好きなドラマの現場で働き、作品を深く愛して頂くことができました。本当に幸せだと思います。 自分を救ってくれたテレビドラマというものに、少しでも恩返ししていきたいと思います。 最後に、松たか子さんをはじめとするキャストの皆さま、最高のスタッフ、このわかりにくいドラマを見守り応援してくれた諸先輩方に、この場を借りて感謝申し上げたいと思います。 ありがとうございました。これからも頑張ります。
このたびは、名誉ある賞を頂き、心よりお礼申し上げます。プロデューサーと名の付く賞ではありますが、『ひよっこ』のために力を結集してくれたキャスト、スタッフ、全員で頂いた賞だと思っています。 このドラマでは、大好きな台詞にたくさん出会いました。峯田和伸さん演じる宗男が、強烈な戦争体験を乗り越えて話す「俺は決めたんだ、笑って生きるって」もその一つです。『ひよっこ』の制作現場にも、この台詞のようにいつも笑顔がありました。 朝ドラは、本当にハードな現場です。約1年間、ずっと続く収録。撮っても撮っても放送に追いつかれる恐怖。日々、交わされる激論。決して平坦な道のりではありませんでした。それでも私たちが笑顔でいられたのは、岡田惠和さんの脚本が素晴らしく、そこに魅了されていたからです。 『ひよっこ』は、高度成長期を生きた“ごく普通の人々〟の物語です。ヒロインのみね子も、最後まで何者にもなりません。ただただ、みね子と家族や仲間たちとの日々が丁寧に描かれます。この一見地味な物語が、多くの視聴者の方に愛されたのは、すべての登場人物に愛情が注がれた脚本の妙、台詞の力があったからこそだと思います。 そして、キャストの皆さんの熱演が、一つ一つの台詞に命を与えてくれました。冷静に観ているはずの試写でも、思わず涙してしまうことも多々ありました。なかでも特筆すべきは、ヒロイン有村架純さんの奮闘です。想像を超えたプレッシャーや苦労があったと思いますが、最後まで笑顔が輝くヒロインでいてくれました。さらに、宮川彬良さんの音楽、桑田佳祐さんの主題歌、増田明美さんの語り、スタッフの情熱。どれか一つでも欠けていたら、『ひよっこ』は全く違うドラマになっていたでしょう。 この賞を頂けた喜びで、私たちにまたひとつ笑顔が増えました。本当にありがとうございました。
作家の金城一紀さんが3年かけてあたためてきたこの作品、主人公は元特殊工作員の主婦で、本格アクション……女性視聴者の多い日テレ水曜ドラマの枠で、そんな新しい挑戦を仕掛けることにわくわくしながらも、そのハードさがはたして受け入れられるのか? 心配もありました。しかし、主演の綾瀬はるかさんのアクション稽古(金城さん自ら指導!)がはじまるとそんな不安は吹き飛びました。綾瀬さんのアクションはしなやかで美しく、クールで洗練された技が決まるたび、見ているだけで気持ちが高揚させられる、まさにエンターテインメントそのもので、誰もが夢中になるはずだと確信したからです。撮影に入る半年近く前から、そんな風に顔を合わす時間があったことがチームとしての絆を深めていたように思います。マット・デイモンさながらの高度なアクションに果敢に挑み、何度も何度もトライする綾瀬さんの情熱はすさまじく、カットがかかるたび現場では拍手と歓声が起きました。 ドラマ後半、夫の素性が少しずつ暴かれていく度に視聴者の方からたくさんの反応を頂き、みんなで歓喜していました。視聴者のみなさんと一緒に作品を盛り上げていける楽しさは、テレビドラマの醍醐味だと思います。これからも驚きと興奮あふれる作品をチームみんなで作り上げていきたいです。本当にありがとうございました!
「なんとまぁ真っ直ぐで綺麗なお話なんだろう」
原作であるマンガ「恋は雨上がりのように」を読み進めたときに抱いたのは、そんな「雨上がりのよう」な気持ちでした。出会いは「週刊ビッグコミックスピリッツ」での連載。17歳の女子高生・あきらが、バイトしているファミレスの店長、45歳バツイチ子持ちの近藤に恋をするという物語の入口から、きっと〝おじさんの夢〟が詰まった年の差恋愛モノなんだろうと、おじさん心で楽しみに読み進めていくと、物語は思わぬ方向へ向かい、いつのまにか心を鷲掴みにされていました。あきらには、陸上を怪我で諦めたという過去があり、そんな彼女の心を救ったのが、近藤店長だったのです。一方で近藤店長にも、小説家の夢を諦めた過去も見えてきて……。そんな不器用な2人が、あきらの近藤への片想いをきっかけに、再びそれぞれの〝青春〟に向き合っていくお話。すっかり私も、高校生の頃のような、透き通った心にさせられました。
女子高生のあきら役には、若手実力派の小松菜奈。演技力はもちろんですが、「漫画はもともと小松菜奈をモデルにしていたんでは?」と思うほど、まさに〝あきら〟と言える圧巻のビジュアルを生み出してくれています。そして近藤店長には大泉洋さん。あきらに想いを迫られてアタフタする大泉さんのリアクションは現場でも爆笑の連続! そのコミカルさだけでなく、あきらが好きになるのも納得できる、垣間見える男としての魅力、そしてあきらを見守る父性のような温かさを兼ね備えており、絶妙な2人がW主演を担ってくれたことは本作にとって非常に幸運でした。
さらに、そんな2人を中心に、清野菜名、磯村勇斗、葉山奨之、松本穂香、山本舞香ら期待の若手、そして濱田マリ、戸次重幸、吉田羊と存在感あるベテランが揃っています。
監督は「世界から猫が消えたなら」「帝一の國」の永井聡。前半のコミカルさと、後半の心を打つ繊細な物語の積み上げは、永井監督だからこその絶妙なバランスが発揮されています。現場では一言一句の細部にまでこだわった演出が施されました。撮影は写真家としても活躍する市橋織江さんで、まるで「すべてが写真のよう」な想いの込められた映像に仕上がっています。
そしてこれまでも予想外の演出を盛り込んできた永井監督。今回も当初、誰も予想していなかった演出が盛り込まれました。な、なんと小松菜奈がワイヤーをつけたアクションに挑んでいるのです。一体どうなってるのやら?! 驚きの演出と丁寧な物語作り、ぜひ劇場で確かめていただきたいです。きっと皆さんも「なんて真っ直ぐで綺麗なお話だろう」と〝雨上がりのような〟気持ちにさせられるはずです。
入局8年目、当時NHK名古屋局の音楽番組ディレクターだった私に東京ドラマ部への異動が言い渡されました。それまでドラマ制作への憧れを抱きながらも、漏れ聞こえてくる現場の過酷さに及び腰になりつつ、本来業務の隙間で毎年1本のラジオドラマをこっそり作り続けるという日々を送っていました。30代を迎えるにあたって、やらずに後悔したくないという思いからドラマ部への異動希望を出しました。 最初に配属されたのは2006年の朝ドラ「純情きらり」。宮﨑あおいさんが主演でした。それまで一発本番のステージものや生中継など「瞬発力」が必要とされる現場で育ってきたので、朝ドラのように毎日が本番の、まるでマラソンのような現場になかなか心と体が順応せず、収録終わりには毎晩クタクタになっていたのを覚えています。しかし目の前でプロの俳優さんたちの演技を見ることができるという状況に、心はワクワクしていました。その後、大河ドラマ「風林火山」の助監督を経て、翌年大河ドラマ「篤姫」で演出デビュー。この「篤姫」は回を重ねるごとに人気も視聴率も右肩上がりで、その相乗効果で現場もどんどん盛り上がっていくという、とても幸せな現場でした。国民的番組ということもあり、自分の名前が演出としてテロップされたときはその影響力を実感するとともに、就職して初めて親孝行らしいことができたかなと感じたものです。 現在、私が担当しているのがNHK土曜ドラマ「やけに弁の立つ弁護士が学校でほえる」(4月21日夜8:15スタート)。神木隆之介さんが新人弁護士・田口章太郎を演じます。おかしいことをおかしいままにしておけない、正義感の強い主人公が崩壊寸前の学校というシステムに立ち向かっていく姿を痛快に描いていきます。ドラマプロデューサーとしては私もまだまだ新人ですが、勇気とワクワク感をいつまでも大切に、面白いドラマを創っていきたいと思います。
第42回通常会員総会を下記により開催予定です。
また、総会終了後、懇親会も予定しております。
詳細は次号でお知らせ致します。
日時/2018年6月19日(火曜)
17時30分総会開会予定
終了後懇親会を予定
会場/東映本社8階会議室
(中央区銀座3-2-17)
《日時》平成30年5月12日(土曜)
競技方法 新ぺリア方式
8時30分 集合
8時56分 インスタート(5組)
《場所》越生ゴルフクラブ
〒355-0354 埼玉県比企郡ときがわ町大字番匠61
TEL 0493-65-1141
関越自動車道鶴ヶ島インター下車15分、東武東上線坂戸駅下車、クラブバスあり
《会費》23,000円予定
(プレー費、パーティー費、賞品代含む)
《締切》4月21日(土曜)事務局必着
※初めて参加される方は事務局までご連絡下さい。
一般社団法人 日本映画テレビプロデューサー協会
親睦委員会 TEL 03-5338-1235
三木プロダクション代表取締役社長三木治氏(功労グループ)は去る3月23日逝去されました。86歳でした。
ご生前のご功績を偲び、心からご冥福をお祈りいたします。