1983~1988年、私は留学先のパリで、よく映画館に足を運びました。ミッシェル・ルグランがバーブラ・ストライサンドと一緒に作った「愛のイエントル」や、ジョン・ウィリアムスが音楽を担当した「イーストウィックの魔女たち」、アラン・シルヴェストリの「バック・トゥー・ザ・フューチャー」をはじめ、好きな作曲家が手がけた作品などを劇場で楽しみながら、いつかは自分も映像音楽を作ってみたいと思ったものです。 帰国後は、アレンジャーの仕事やテレビの音楽番組の仕事などをやっていく中、1990年に「代表取締役刑事」(テレビ朝日)で、初めて連続ドラマの劇伴を担当させていただきました。ドラマのバックで自分が作った曲が鳴っているのを聞いたとき、そして自分の名前がクレジットされているのを見たときは、本当にうれしかったのを覚えています。その後は、94年「お金がない!」(フジテレビ)をきっかけに、続々とドラマのお仕事をいただけるようになり、翌年には三谷幸喜さんとの出会いもありました。99年には「すずらん」(NHK)で朝ドラを経験させていただくなど、お陰様で年を重ねるごとに、私と劇伴との関りは深まっていったのです。 こうして作られてきた私の劇伴スタイルは、主人公、あるいは作品全体を象徴するライトモチーフを大事にしたものです。テーマが持つ力を最大限に活かしてバリエーションを展開していく手法であり、空気感やサウンド感が重視される現代においては、比較的古いスタイルになるかと思います。そのせいか、近年、強いメロディーを入れると照れてしまう監督さんが多くなったように感じることがありますが、私は、これからもメロディーを重視した曲作りにこだわっていきたいと考えています。 私の場合、劇伴の仕事に取りかかるときは、まず、作品の〝スピード感〟をつかみとるようにしています。一言でスピード感と言っても、物語のスピード感、役者さんの芝居のスピード感、セリフの言い回しのスピード感などいろいろありますが、それらはすべて、曲を作る上で重要なヒントになるのです。 あとは〝直観〟によるところが大きい、というのが正直なところです。もちろん、台本を読み込んだり、編集前の映像を見るのは大切です。しかし、できる限り作品の情報を頭に入れ、そこにジャストフィットする音楽を作るのが良いとは、私は思っていません。確かに作品にぴたりと合ったものは作れるでしょう。しかし、それだけです。そうした音楽では、作品の世界観をさらに膨らませ、プラスアルファを生み出す余地がまったくなくなってしまいます。 そもそも、本当に良い台本、役者さん、演出がそろっていたら、本来、音楽は不要というのが、私の持論です。そこにあえて音楽をつけるなら、つけたことで作品が良くならないと意味がありません。劇伴が果たすべき役割を料理で例えるなら、すでに完成しているおいしい料理に、〝フランスの海でとれた岩塩の塩味をひと味プラス〟したり、〝マダガスカルでとれたバニラの風味を加える〟といったイメージでしょうか。その結果、映像がいっそう映え、さらに味わいのある、豊かな作品となるお手伝いができたときこそ、この仕事の面目躍如たるものがあるのです。 言うまでもなく、完成した曲を実際にどう使うかは、プロデューサーさん、監督さん、音効さんのご判断です。よく、(音楽の)「付けどころは、抜きどころ」と言いますが、これは本当に大変な作業だといつも感じています。映画であれば、シーンごとに音楽をつけた段階では良い仕上がりだったのに、1本にまとめたときに再度調整が必要になることはよくあります。1か所音楽を抜いただけで全体のバランスががらりと変わってしまうこともあるでしょう。テレビの場合、タイトなスケジュールの中、台本が最後までできていない状況で、物語、演出、音楽を毎回合わせて人々に感動を与え続けていくのは、まさに奇跡的な作業だと思います。 これからも、映像作品を作る上で、〝今〟を切り取る視点は非常に重要でしょう。特にテレビ作品においては、流行を取り入れていくことは必須です。でも、〝今〟に執着するだけではなく、長いエンターテイメントの歴史の中で培われてきた〝絶対に良いもの〟を踏まえて作品をジャッジする視点もまた、必要ではないでしょうか。その両方の視点があってこそ、より素晴らしい作品が完成する――私も50を過ぎて、そんなことを考えるようになりました。また、ここへきて、民放で半年クールのドラマが出てきたのは、面白い動きだと感じています。今後は、できることならターゲットを絞り込み過ぎることなく、誰が見ても楽しめる作品作りができないものかと、考えたりもしています。そうした新しい試みの先に、今までにない新しい可能性が生まれてくるのではないかと、大いに期待しているところです。
※ 7月からのTBS日曜劇場「ノーサイド・ゲーム」は服部さんが音楽を担当されます。
2019年度前期 連続テレビ小説 「なつぞら」
『そのあたたかさを届けたい』 現在放送中の連続テレビ小説「なつぞら」の舞台は戦後の北海道です。シナリオづくりのために脚本家の大森寿美男さんと北海道十勝を訪れたのは2017年の11月でした。冷たい風が吹くなか、酪農、農業、農業高校、料理研究家の方などいろいろな場所を取材しました。まだドラマの発表前なので「朝ドラの取材です!」とは言えません。「できるかどうかわからないんですけど、NHKのドラマですぅ~」「朝ドラですか?」「あの~たぶん違うかもしれませんがぁ~はっきりとは、僕たちもわからなくてぇ~まだまだ準備ですのでぇ~」となんともあいまいなことだけお伝えしたのですが、取材先のみなさんに本当によくしてもらいました。北海道は親切であたたかい人ばかりでした。そのことがとても印象に残っています。 そして、脚本づくりがはじまりました。脚本の中でも、十勝では、力強さとなんとも言えないあたたかさを持つ人たちが登場します。そこは、十勝で出会ったみなさんのあたたかさが写し取られているように思います。 そして、クランクインは2018年6月です。そのための北海道のロケ地探しは本当に苦労しました。すぐに見つかると思った昔のいい感じの牛舎、家屋が残ってないのです。今の酪農は、ロボットが牛にエサをやり、ロボットが乳搾りを行い、ロボットが掃除します。どんどん設備が新しくなっていました。そこで、制作スタッフが十勝地区の18市町村200箇所あまりをロケハンし、やっと見つけだすことができました。とても緻密な取材とロケハンで「なつぞら」の世界を築き上げることができたんだと思います。そして、はじまった北海道ロケ、地元のみなさんの炊き出しや差し入れがほんとうにたくさんあり、6月なのに肌寒い中行うことになったロケで本当に心身ともにあたたまりました。 北海道とともに「なつぞら」で重要なものが他にもあります。アニメーションです。ヒロインがアニメーションをつくる仕事につきます。ドラマとは、まったくつくり方が異なる世界でどうなることかと思ったのですが、とても準備が大変でした。テレビドラマとは、準備期間と製作期間がまったく違っていました。知るのが遅かったです。とにかくすべて手で描く時代です。キャラクター表、原画と動画、セル画、せっせとアニメーションチームのみなさんが今日も準備をしております。タイトルバックもアニメーションですが、手描きアニメーションのなんともあたたかいところが大好きです。
入社10年目の2012年秋、ずっと営業畑を歩んできた私にとって突然の転機が…。いきなり映画の撮影現場に放り込まれたのだ。小津安二郎監督や山田洋次監督など松竹のライブラリー作品のライセンス営業していた私は、ちょうど「二十四の瞳」などで知られる木下恵介監督の生誕100周年で、特集上映、DVD発売など記念プロジェクトを進めていたのだが、旧作を再活性化するだけでなく、今の観客に〝新作〟を届けられないかと実写映画化を製作部門に提案していた。当然経験豊かなプロデューサー達が製作するものと思っていたが、そんなに作りたいなら、お前がやれとばかりに、原恵一監督の「はじまりのみち」という作品で営業職のままプロデューサーに。一見乱暴に見えるが、情熱があればチャンスを与えてくれる環境がそこにはあった。しかし、現実は厳しい。何が業務か右も左もわからないまま、現場ではただひたすら見よう見まねで、車止め、車輌移動、俳優のアテンド…、もはや自分が何部なのかさえ分かっていなかった。低予算ということもあり、なんでもやる戦場のような現場で、完全素人のオールドルーキー。でもトラブルが起きれば立場上、決断を求められる緊張の連続。もはやカオス。あれから7年が経ち、今も映画製作を続けているが、自分の中で大切にしていることがある。職務としての知識や経験、スキルは確かに大切だが、絶対に〝慣れない〟こと。それは、とある日に、ある大御所俳優さんから言われた言葉、「いいか、プロにはなるな! ずっと素人でいろよ」。カッコ悪くても、恥をかいてもいい。一日が終われば日を新たに、常に新鮮な気構えで翌朝を迎え、緊張感を持って日々ドキドキ、ワクワクすること。作品への情熱と覚悟があるのか。誰が、なぜ、作りたいのか、そして誰に、届けたいのか、初心をいくつになっても持ち続けられるかを現場で教えて頂いた。新人から丁寧に育った人とは違い、適切なステップを経なかった私が、未だに一人前になれていないだけかもしれないが、一作品一作品、新たな壁にぶつかり逃げ出したくなる時、あの時の言葉が私を、前に(Pro)、導いて(duce)くれる。
第66回大会は2019年5月11日(土曜)越生ゴルフクラブで14名が参加して行われ、次のような結果となりました。
順 位 | 氏 名 | アウト | イン | グロス | HDCP | ネット |
---|---|---|---|---|---|---|
優 勝 | 中曽根千治 | 49 | 50 | 99 | 25.2 | 73.8 |
準優勝 | 熊田英明 | 41 | 46 | 87 | 13.2 | 73.8 |
第3位 | 香月純一 | 48 | 45 | 93 | 18.0 | 75.0 |
第43回通常会員総会を下記により開催致します。
正会員の方はご出席下さい。
欠席される場合は総会成立のため、必ず委任状をご送付下さい。
(委任は会長または出席理事氏名をご記入願います。)
また、総会終了後、懇親会を行います。
懇親会では新功労会員の方への表彰も行う予定です。
日時/2019年6月27日(木)
17時30分総会開会予定
終了後懇親会予定
会場/東映本社8階会議室
(東京都中央区銀座3−2−17)
JR有楽町駅、地下鉄銀座駅下車(C−6出口が最寄)
マロニエゲート銀座2&3となり