会報

2020.04.01

会報

No.479 2020年 4月号

2020年 エランドール賞 受賞者の言葉

プロデューサー賞

「翔んで埼玉」
㈱フジテレビジョン
編成制作局映画事業センター映画製作部
若松 央樹

まず、この映画を観て頂いた埼玉県の皆様に、感謝申し上げたいと思います。全国の観客動員数の4分の1にあたるお客様が、埼玉県1県でご覧頂いたというのは、想像以上の数字でしたし、制作者一同本当に嬉しい限りでした。本作は、郷土愛をテーマにしたものですが、企画の根本が、極端な地域格差や過激な表現を伴うものでしたから、企画立ち上げ当初から、とにもかくにも埼玉県の皆様に嫌われないようにという思いを念頭に置いて作品作りに取り組みました。台本作りから、埼玉の方々への取材・弁護士との打ち合わせを繰り返し、映画全体の世界観も、現実離れしたものにするために、衣装・美術含め、何度も監督と熟考を重ねました。さらに、できるだけ埼玉出身の方々に出演して頂こうと、実際の出身地にこだわったキャスティングをしたり、作品中の出身地対決や埼玉ポーズなどの写真使用も、埼玉県出身の著名な方にご協力頂きました。また、埼玉発の様々な企業様にも作品中に登場して頂いたり、本作の完成報告では、埼玉県知事への表敬(謝罪)訪問なども行いました。今思えば、通常の映画作り以上にプロデュース業務も大変体力がいるものでした。そう言った意味では、このプロデューサー賞を頂けたことは身に余る光栄ですし、この受賞は、監督をはじめとする全てのキャスト・スタッフ・関係者の、総合力の賜物だと思っております。そして、ココまでのコメディ作品が、この素晴らしい賞を頂けたということは、今後のコメディというジャンルでの作品作りにおいて、多いに励みになりますし、さらに楽しい出現感のある作品を作っていければと思っております。ありがとうございました。


プロデューサー奨励賞

「蜜蜂と遠雷」
東宝㈱ 映画企画部
石黒 裕亮

まさか自分がエランドール賞なんて。全く予想していなかっただけに、自分のことだと理解するには時間がかかりました。ようやく理解が追いついた時、ちょっと困ってしまいました「自分は『蜜蜂と遠雷』で何をしたのだろう?」と。 「蜜蜂と遠雷」は直木賞と本屋大賞を史上初W受賞した恩田陸さんの傑作。私自身も一気読みして魅力に取りつかれましたが、同時に映画化は至難の業だとも感じました。その高すぎるハードルへの挑戦に、監督と共に掲げたのは「妥協せず、音楽に真摯に向き合うこと」。そのなかで努力を積み重ねてくれたのは、監督をはじめとしたスタッフ、そして特に天才ピアニストに挑戦した4人のキャストたちです。監督は特にクラシックに造詣が深いわけではないところからスタートし、撮影では脚本と並んで楽譜が置かれる現場を作り上げてくれました。キャストの皆さんは、数か月前から練習を重ね、こちらが指定していない箇所までマスターしてくれたりもしました。こうした本気が積み重なって生まれたのが「蜜蜂と遠雷」です。作品の打上げ時、「きっとこの作品は関わった皆さんの代表作になる」と挨拶させてもらったことを、最近ふと思い出しました。その言葉が出たのも、きっと積み重なっていく本気を目の当たりにしていたからだと思います。そんな本気の塊に〝とらせてもらった〟のが今回のエランドール賞です。 冒頭の「自分は何をしたのか」の答えは、「できていない」だと思います。なぜなら大ヒットへと導けなかったから。作品を企画し整えていくのは当然のことで、高まった作品ポテンシャルを活かし、いかに多くのお客様に見ていただくか、プロデューサーとしてその役割を果たせなかったことを猛省しています。本来であれば落胆しているところだったのですが、奨励賞のおかげで、もう少し前を向いて〝プロデューサー道〟を進んでいくことができそうです。この場をお借りして改めて御礼申し上げます。


プロデューサー賞

「いだてん」
NHK制作局・第4制作ユニット
清水 拓哉

長い長い悪戦苦闘の末に、なんとか放送を終えることができました。関係者全員の支えとなったのは、このドラマを熱烈に愛してくださった視聴者と、そして、同じ映像業界で切磋琢磨する仲間の声援でした。放送期間中、本当にたくさんの業界の方々から「観てるよ!」「面白いよ!」「このままどんどんやれ!」と言って頂きました。この度の受賞は、現場で体を張った中村勘九郎さん阿部サダヲさんらキャストとスタッフの皆様の、一言では言い表せない努力と苦労の賜物です。代表してプロデュース部で頂きます。 「大河ドラマ」というフレームではありましたが、長年蓄積されてきたノウハウがほとんど通用しない新しい挑戦の連続でした。いくつかを列挙すると…、日本史の教科書には一切登場しない「スポーツの歴史」をどう掘り起こすのか。多忙な人気者が集まったキャストの五輪アスリートとしてのトレーニングをどうするか。5話分にもわたる量の海外ロケをどうするか。一方、海外ロケに行けない海外シーンをどう国内で撮影するのか。「大観衆の国立競技場」や「首都高建設中の日本橋」などをどう映像化するのか。膨大な資料映像をどう収集するか。解釈の難しい近現代の歴史認識の問題にどう向き合うか、など…。物理的な仕事量をひたすら積み上げてクリアした課題も、鮮やかな知恵と工夫で乗り越えた課題も、どちらもありました。携わった一人ひとりに心から感謝致します。この経験は今後のNHKと大河ドラマの新たなノウハウであり貴重な財産となっていくと思います。 そして、こうしたピースを見事に組み合わせ宮藤官九郎さんが極上のエンターテインメントに仕上げて下さいました。あの痛快なテーマ曲をはじめとする大友良英さんの音楽と共に、日本のオリンピックと結びついて長く記憶されていくことと思います。制作統括・訓覇圭とチーフ演出・井上剛、この二人の仕掛け人にも敬意を表しつつ、受賞御礼の言葉とさせて頂きます。


プロデューサー奨励賞

「凪のお暇」
TBSテレビ ドラマ制作部
中井 芳彦

この度は名誉ある賞を頂き、ありがとうございました。暑い中、『凪のお暇』に参加して作ってくれた全てのスタッフとキャストの皆さんと共有したいと思います。この『凪のお暇』は、自分が観てみたいもの、ということをはじめて意識して制作しました。数年前、プロデューサーとして制作した連続ドラマが放送された時、先輩プロデューサーから言われた言葉です。「あなたらしいところが見当たらないのが残念」。結構、ショックでした。その後に私は制作局から報道局へ異動しました。記者として取材して原稿書いて編集する毎日でしたが、この言葉はいつでも自分の心にありました。ドラマが好きでまたドラマを作ってみたいと思う一方、あの言葉が浮かびました。自分らしい、というのはどういうことか。しばらく記者を続けていくうちに、ドラマも観なくなりました。 5年ぶりにドラマ部に戻り、企画したのがこの『凪のお暇』です。エンターテイメントはたくさんの支持を受けなければならないと思います。が、その大命題を前にして、自分が面白いと思えるもの、観たいと思えるかを一生懸命に考えることを、放棄していたように思います。 人生リセット。『凪のお暇』の主人公は自らの意思で断捨離し、新しい生活を選びました。私の場合は、異動、というよそからのきっかけでしたが、立ち止まるきっかけを得ました。そんな経験とともに、「人生リセットしてみたい」というだれもが思うが声にしない気持ちをドラマにしようと思いました。地味なテーマですが、以前よりも多くの方々に声をかけられ、自分にとって恵まれた作品になりました。いつまで会社がドラマを作ることを許してくれるかわかりませんが、今回の気持ちを忘れずにもう一度ドラマ作りに挑戦してみようと思います。この度はありがとうございました。


只今撮影中

NHK制作局 第4制作ユニット(ドラマ)チーフ・プロデューサー 尾崎 裕和
連続テレビ小説「エール」

「六甲おろし」「紺碧の空」「栄冠は君に輝く」などのスポーツ応援歌、または「君の名は」「長崎の鐘」「イヨマンテの夜」などの大ヒット歌謡曲、果ては「露営の歌」「暁に祈る」「若鷲の歌」などの軍国歌謡に至るまで。このキラ星の如き楽曲群を一人の作曲家が作っていたことをご存知でしたか? 正直言って私は知りませんでした。その人の名は、古関裕而。現在放送中の朝ドラ「エール」は、そんな数々のヒット曲で昭和の音楽史を彩った国民的作曲家・古関裕而さんと、その妻で歌手としても活躍した金子さんをモデルに、音楽とともに生き抜いた夫婦の物語を描いていきます。 音楽が主題のドラマということで、劇中には様々な演奏シーンが登場します。窪田正孝さん演じる主人公古山裕一は、作曲家として楽譜を書き、演奏する楽団の指揮をして、時にはハーモニカを吹きます。二階堂ふみさん演じるヒロイン古山音は、琴を弾きオルガンも弾いて、オペラまで歌います。そして登場する数々の名曲は、吹き替えなしでキャストのみなさん自ら歌います。膨大なセリフ量の朝ドラ収録をこなしつつ、音楽関係の練習稽古が同時進行するという大変な状況にも関わらず、窪田さん二階堂さんその他のキャストのみなさんは文字通り全身全霊で取り組んでいます。これはドラマ制作と並行してもう一つの音楽番組を作っているようなもので、携わるスタッフたちもてんやわんやなのですが、奮闘のかいもあって音楽のシーンはドラマの見どころとして大変魅力的に仕上がっています。 この作品のテーマを象徴する場面として、劇中に早稲田大学の応援歌「紺碧の空」作曲時のエピソードが登場します。応援歌を依頼しに来た応援団長は裕一に訴えます。「俺には野球の技量は無い。だから応援するしかない」。自分には何もできない、でもだからこそ誰かを応援したい。そんな祈りにも似た思いを誰しも抱いたことがあると思います。古関裕而さんは日本の戦後復興を世界に宣言した1964年東京五輪「オリンピック・マーチ」の作曲者でもあります。今、こんな時だからこそ、日本にエールを送りたい。私たち自身が少しでも元気に、前向きな気持ちになって進んでいきたい。そんな思いを胸にスタッフ一同、鋭意制作に臨んでいます。連続テレビ小説「エール」半年間お付き合い頂ければ幸いです。


私の新人時代

㈱彩プロ 代表取締役
高澤 吉紀

誰しも初めてプロデュースした作品は忘れられないと思います。1977年~東映大泉撮影所で進行係の一番下から進行主任のロケ出写費を扱うまでの数年、諸先輩に多くの教えを受け現場のイロハを学ばせていただきました。そんな時期、仲川哲郎(旧日活)氏から「二谷英明が映画会社を設立する~」と誘いを受け(株)プロジェクト・エーに入社することになりました。渋谷にあったオフィスは二谷事務所と日活仲間の会の事務局(日活出身俳優による親睦会)が同じ階にあり大塚和氏や友田二郎氏、熊井啓監督などが出入りしていて、山本薩男監督、山田信夫脚本で大阪の梅川事件を題材に日活出身オールキャストの脚本が完成していました。脚本は銀行内部の事件ではなく新聞、TV、報道、警察といった銀行外部からの視点で時間経過とともに事件が描かれた素晴らしい脚本でした。残念ながらセンセーショナルな題材な為、企画は幻となりました。その後2時間ドラマの企画、制作をしながらある一冊の本に出合いました。生島治郎著「片翼だけの天使」この原作ならと思い早速ヘラルド・エース山下健一郎氏に二谷の主演が条件で映画化の相談をしました。原作権も争奪戦でしたが幸い原正人氏(ヘラルド・エース社長)が生島氏と面識があり大田区の生島邸に伺い、原作のモデルでもある奥様のカラオケを聞きながらの手打ち式となりました。山下氏からはヘラルド映画社内で実績ある田村孟氏を脚本に推薦され依頼したのですが、中野の旅館に籠って1ヶ月経っても一向に脚本が上がる気配がない。どうも田村氏は主演の二谷がお気に召さないらしく、筆が運ばないと夜な夜な酒を煽っている様子。これは監督を決め打ちするしかない、という話になり山下氏からは神代辰巳監督ら何名かの案が上がったのですが、私としては二谷に縁があり、田村氏にも一言申せる監督、と考えている時にレンタルビデオ店で「赤いハンカチ」監督舛田利雄が目に留まり、それから一気に事が進み田村氏の3時間30分程の長い初稿が上がり、舛田監督がバッサリと序章部分を刈り込み田村氏も納得の上、2時間弱の脚本が完成しました。35ミリフィルムの時代で撮影期間45日。撮影実数40日の撮影期間中、私は連日、監督専用車の助手席に座り舛田監督の烏山の自宅に送り迎えに同乗し舛田監督付きの新人プロデューサーとして過ごした時間は貴重な時間であり「片翼だけの天使」は忘れる事の出来ない初プロデュース作品となりました。


事務局だより

◎訃報

元朝日放送プロデューサーの藤本裕子氏(功労グループ)は去る3月1日逝去されました。87歳でした。
ご生前のご功績を偲び、心からご冥福をお祈りいたします。


第68回 プロデューサー協会 ゴルフ会開催のお知らせ

《日時》2020年5月24日(日曜)
競技方法 新ぺリア方式
8時45分 集合
9時07分 インスタート(5組)予定
《場所》越生ゴルフクラブ
〒355-0354 埼玉県比企郡ときがわ町大字番匠61
TEL 0493-65-1141
 関越自動車道鶴ヶ島インター下車15分、東武東上線坂戸駅下車、クラブバスあり
《会費》22,000円予定 (プレー費、パーティー費、賞品代含む)
《締切》5月11日(月曜)事務局必着
※初めて参加される方は事務局までご連絡下さい。
一般社団法人 日本映画テレビプロデューサー協会
親睦委員会 TEL 03-5338-1235


総会と懇親会のご案内

第44回通常会員総会を左記により開催予定です。また、総会終了後、懇親会も予定しております。
詳細は次号でお知らせ致します。

日時/2020年6月18日(木曜)
   17時30分 総会開会予定
   終了後 懇親会を予定
会場/東映本社8階会議室
   (中央区銀座3-2-17)

◎訃報

元東映プロデューサーの㈱オーファクトリーエンターテインメント顧問吉田達氏(功労グループ)は
去る3月12日逝去されました。83歳でした。
ご生前のご功績を偲び、心からご冥福をお祈りいたします。


インフォメーション

◎会議の記録

  •  3月16日(月) 会報委員会(事務局)
  •  3月25日(水) 第7回定例理事会(東映本社)

◎会議の予定

  •  5月12日(火) 親睦委員会(事務局)
  •  5月12日(火) 会報委員会(事務局)
  •  5月21日(木) 第8回定例理事会(東映本社)
  •  6月18日(木) 第9回定例理事会(東映本社)

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