会報

2021.04.02

会報

No.486 2021年 3月号

エランドール賞 受賞コメント

〈プロデューサー賞☆田中友幸基金賞〉

 本年度を代表するヒット作を制作したプロデューサー賞、ならびに今後の将来性が期待されるプロデューサー奨励賞は、映画、テレビ、それぞれの部門で以下の方が選ばれました。


○映 画(プロデューサー賞)

映画「罪の声」
TBSスパークル
那須田 淳

栄誉あるこの受賞、本当にありがとうございます。同じお仕事をされている皆様にご鑑賞頂き、お褒め頂けたことに何よりの思いが込みあげます。
 この物語には、原作者の塩田武士さんが創作された登場人物で原菜乃華さんが演じられた望ちゃんという少女が事件に巻き込まれた末に辿る悲劇のエピソードがあります。原作を初めて読んだときに、読み進めながらも、彼女の無念、かなえられなかった夢をかなえてあげたい、それは無理だとしても彼女の思いを救いとりたいと思い込みました。映画の中で、望ちゃんが夢を思い描いていた頃の姿が出てきます。フィクションの人物とはいえ、望ちゃんのことをこの原稿を書きながら今も思いうかべると、初めて原作を読んだときのように、涙がこぼれそうになります。塩田さんにこの作品への思いを初めてお話ししたときも涙がこぼれそうになりました。私たちが彼女にしてあげられることは、映画にその頃の姿を残してあげること、それだけかもしれませんが、フィクションだからこそできることだと、自分たちの仕事である創作の力、フィクションの力をあらためて辿ることができたように思います。原作には、実際にあった大事件をモチーフに、「子どもを犯罪に巻き込むことは、社会と未来から希望の光を奪う」という大切なメッセージがありました。フィクションでしか伝えられないテーマがありました。この映画を作りたいと奮い立ってしまった気持ちを今思い返しています。どんな作品にも苦難はあり、皆様も日々戦ってらっしゃると思います。「奮い立つ」。原作の中にもあり映画でも出てくるセリフです。物語の中では、間違って奮い立ってしまった人間も描かれてはいますが、この理屈立ってはいない感情的な言葉も、この作品を映画にしたいと思った心の支え、制作者の原点を辿れたセリフです。最後に、キャストの大切さを心に刻んだ作品でした。特に、主人公を演じてくださった小栗旬さんと星野源さん。お二人がいなかったらこの映画は作ってなかったと思います。そして、コロナ禍が長引く中、今も毎日、映画を支えてくださっている映画館関係者の皆様、配給、宣伝の皆様に心からお礼申し上げます。

○映画プロデューサー奨励賞

映画「スパイの妻」
Incline
岡本 英之

エランドール賞、プロデューサー奨励賞受賞、大変光栄なことと受け止めております。僭越ながらプロデューサーを代表し、ここに御礼申し上げます。
『スパイの妻』は、NHK8Kドラマとして企画され、昨年6月6日に初放送となった作品です。企画を口にしてから、放送までおよそ2年と9ヶ月、10月16日の劇場版公開までは3年以上を数える長きにわたったプロジェクトでしたが、ヴェネツィア国際映画祭での銀獅子賞受賞をはじめとした様々な評価に加え、伝統あるエランドール賞でこうしてプロデューサーとしての評価をいただけたことは本当に名誉なことです。
今作は、「最高の作品を作る」という一言のみを胸に取り組んできた企画です。プロデューサーとして作家を信じ、私たちにできうる限り最高の環境を準備することさえ叶えば、黒沢清監督、それぞれ長年の盟友である共同脚本の濱口竜介さん、野原位さん、音楽の長岡亮介さんらが、それを現実へと導いてくださることは明らかでした。現場では、主演の蒼井優さん、高橋一生さんら俳優部の充実した表情を眺めては、そうした思いへの確信を深めたものです。
この栄誉ある賞を、黒沢監督はじめ作品に関わる全ての皆さまへの心からの敬意、感謝とともに、ひとつ大きな戒めとしても受け止めて参ります。傲ることなく再び原点へと立ち戻り、「映画とは何か」について考える日々を送りたい、そのように思いを新たにしております。今作が、今後さらに数多くの視聴者、観客の皆さまに出会っていくことを心より願っております。 この度は本当にありがとうございました。

○テレビプロデューサー賞

連続テレビ小説「エール」
NHK
土屋 勝裕

この度は大変栄誉ある賞を頂き、誠にありがとうございます。新型コロナウィルスの感染拡大という未曽有の事態の中で、スタッフ・キャスト、ドラマ制作に関わったすべての方のおかげで最後まで放送することが出来たと感謝しています。この場を借りて関係の皆様に御礼申し上げます。オリンピックイヤーに相応しい朝ドラということで、応援歌を数多く作った古関裕而さんをモデルに「エール」を企画したのですが、新型コロナウィルスによって世界は一変しました。「エール」の放送が始まったまさにその日の朝、志村けんさんの訃報が届きました。志村さんの急逝は、あまりに悲しいことでした。志村さんのお芝居を心から楽しみにしていました。本当に残念で残念でなりません。収録がストップし、いつ再開できるのかも分からず、再開しても皆の安全は確保できるのか、最終回まで放送できるのか、もんもんとする日々が続きました。収録を再開したのちも、感染のリスクと隣り合わせで、今までに味わったことのない緊張感につつまれたスタジオでした。そんな状況のなかで制作された「エール」は、コロナで困難に直面している人たちに〝エール〟を送るドラマへと変わっていきました。この困難を必死で乗り越えようとしている人たちがドラマを見て、ほんの少しだけでも明るい前向きな気持ちになれたら、ほんの少しでも元気を取り戻すことができたら、このドラマを作っている意味がある。そう思いながらドラマ作りに取り組みました。そうでなければ、「不要不急」のドラマ制作にいったいなんの意味があるのか。スタッフ・キャストが一丸となって制作に取り組みました。視聴者の皆さんから「今の朝ドラが『エール』で良かった」という声を頂きました。作り手の思いは届いたようです。コロナとの戦いはまだまだ続きますが、今こそエンタテインメントの力で、世界を明るくできたら良いと願っています。皆で頑張って乗り切っていきましょう!

○テレビプロデューサー奨励賞

金曜ドラマ「MIU404」
TBSスパークル
新井 順子

この度は、名誉ある賞を頂きありがとうございます。
「MIU404」は私にとって生涯忘れられない作品となりました。
テレビ業界に入ってずっとやりたいと夢見ていた「警察ドラマ」。助監督でもAPでもプロデューサーになってもやることができなかったこのジャンルのドラマが、2020年になってようやく叶いました。
脚本の野木さんに「警察ドラマをやりましょう!」と想いをぶつけ、やるからにはこれまでにないものにしようと、2年もの月日を経て「MIU404」にたどり着きました。
取材もたくさん行い、色んな警察ドラマを見て研究しました。「いま自分たちにしかできないものは何か?」と、意見がぶつかったり、これではダメだと頭を抱えたりもしましたが、一話一話ごとに話し合いを重ね、言いたい放題の本打ちを繰り返しました。
本打ちが一生終わらないのではないかと思う日もありましたが、今となっては一瞬の出来事のように感じます。
2月にクランクインし順調に撮影が進んでいた3月31日の夜、新型コロナウィルスの猛威に、撮影を中断することを決めました。撮影が再開できるのか、1話でも放送をすることができるのか、何も分からない状況でしたが、「とにかく撮影をやめる」その判断しかできませんでした。業界に入って十数年、目の前が真っ暗になったのは初めてのことでした。
キャストスタッフが毎日一生懸命に向き合い撮影してくれた映像を、どうにか放送で届けたいという一心で、緊急事態宣言の2ヶ月を過ごしました。普通に撮影できることのありがたさを、あれだけ感じたことはありません。
本当に多くの方のご尽力と励ましのおかげで、「MIU404」がこの2020年にお送りできて、このような素晴らしい賞を頂けたこと、一生忘れることはありません。
この作品に携わってくれた、すべてのキャストとスタッフに、この場を借りて感謝を申し上げます。本当にありがとうございました!


只今撮影中

月9ドラマ「イチケイのカラス」

フジテレビ
橋爪 駿輝

突然ですが、裁判官をやっているお知り合いはいらっしゃいますか? 僕にはいません。裁判官―。ニュースで法壇に座っている姿を目にすることはありますが、彼らの仕事はそれだけなのか。もちろん違います。被告人の人生を大きく左右する判決を言い渡すにいたるまでの過程は様々。おなじように現実の裁判官もいろんなタイプの方々がいらっしゃいます。
本作「イチケイのカラス」は、まさにそんな裁判官にスポットを当てた、法廷が舞台の連続ドラマです。タイトルの「イチケイ」とは、東京地方裁判所第3支部第1刑事部の通称。第3支部は架空の設定ですが、第1刑事部は各裁判所に実在する部署名。「1」があるということは「第2刑事部」や「第3刑事部」もあります(※裁判所によって例外もあります)。各部署はどのような住み分けになっているのか…? と、説明をしだせばあっという間に原稿の制限文字数を超えてしまうほど、裁判官の世界には「へぇ」がいっぱい。耳なじみのない専門用語も多数でてきます。
しかし、このドラマ。決して小難しいドラマではありません。個性豊かなキャラクターたちのコミカルな演技でクスッと笑え、毎話のクライマックスである法廷シーンではホロっと泣ける、王道のエンタテインメントドラマとなっています。
正しい判決を行い絶対に冤罪を生まないためなら法廷を飛び出し、裁判所主導で捜査までやってしまう型破りの裁判官・入間みちおを竹野内豊さんが演じ、対照的に堅物で効率重視のエリート裁判官・坂間千鶴を黒木華さんが演じています。性格も価値観も裁判へのアプローチも全て真逆の二人が出会い、どんな化学反応が生まれるのか!? 撮影現場でのお二人のお芝居を、はやく視聴者のみなさまにご覧頂きたくてウズウズしているこの頃です。ほかにも新田真剣佑さん、小日向文世さんはじめ、たくさんの豪華キャストが登場します。書記官に検察、そして弁護人に被告人。裁判にかかわる人々はとても多いですが、毎日和気あいあい。コロナウイルスへの対策をしっかりと行いつつ、笑いの絶えない現場です。撮影を重ねるごとにいっそうチーム一丸となっているイチケイメンバーの活躍にご期待ください。「イチケイのカラス」4月スタートです。どうぞ宜しくお願いします。

イチケイのカラス

エランドール賞 実施について

2021年のエランドール賞は、新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言の発出により、2月4日に予定していた授賞式は中止となりましたが、会員のみなさんの投票に基づき、受賞者を決定することができました。ありがとうございました。
コロナ感染が終息しないなか如何に授賞式を開催するかについて、昨年9月の残暑が厳しい頃から検討を始め、9月18日の理事会で無観客で開催するという方針を決定しました。当初は無観客で開催するのであれば、例年開催している京王プラザのホールのような大きな会場は必要ないとの考えから、千代田放送会館のスタジオでの開催とし、一般公開の代替手段として、日本映画放送様にご協力いただき、生中継するというプランでした。しかし、ディスタンスを確保して報道陣を入れ、加えて生中継のスタッフや協会の関係者を入れると手狭であることや、十分なバックヤードの確保が困難であることがわかり、会場を京王プラザに戻すことを検討し、準備を仕切り直し始めた頃には感染が再拡大。ついに1月7日に一都三県に緊急事態宣言が発出されました。
1月12日のエランドール賞委員会で各賞の受賞者を選定しましたが、同時に授賞式開催の是非についても議論し、中止の方向で理事会に諮ることになりました。1月19日の理事会で受賞者の決定を行い、授賞式については中止とするという結論となり、協会のホームページに授賞式の中止について掲載し、29日には授賞式の中止を外部発表、授賞式を予定していた2月4日に各受賞者を外部発表をする運びになりました。
実際の贈賞について、新人賞の受賞者のみなさんには個別に贈賞を実施し、プロデューサー賞、特別賞、特別顕彰の受賞者の方には、2月22日の理事会にお運びいただき、贈賞を行いました。贈賞の様子については、5月頃に協会のホームページ等でご覧いただく予定です。

エランドール賞 委員長
藤澤 浩一


事務局だより

◎退会

高井一郎(㈱フジテレビジョン)

◎訃報

鴨下信一 特別功労会員
元㈱TBSテレビ
2021年2月10日 逝去


インフォメーション

◎会議の記録

 2月15日(月) 会報委員会(リモート)
 2月22日(月) 第6回定例理事会(東映本社8階)
 3月22日(月) 17時~ 会報委員会(リモート)

◎会議の予定

 3月26日(金) 18時30分~ 第7回定例理事会
 会場/東映本社8階会議室(中央区銀座3-2-17)

◎ホームページはFacebookページとともにリニューアルを進めております。
 ご利用頂きますとともに、ご意見ご要望ございましたらお寄せ下さい。


第70回 プロデューサー協会 親睦ゴルフ会を次により開催予定です。

《日時》2021年5月16日(日曜)
 競技方法 新ぺリア方式
 9時10分スタート(5組予定)にて
《場所》越生ゴルフクラブ
 〒355︱0354 埼玉県比企郡ときがわ町大字番匠61
 ☎0493-65-1141
 関越自動車道鶴ヶ島インター下車15分、東武東上線坂戸駅下車、クラブバスあり
《会費》22,000円予定(プレー費、パーティー費、賞品代含む)
《締切》4月26日(月曜)事務局必着 注:GW関連で早めの締切になります。
※初めて参加される方は事務局 info@producer.or.jp までメールにてご連絡下さい。
前回同様、コロナ感染拡大対策万全にして個別膳にての表彰式を致します。
親睦委員会:髙橋、玉川、山本

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