会報

2023.10.10

会報

No.509 2023年 10月号

脚本家とプロデューサーの関係について

根本 ノンジ

テレビドラマの脚本をおもに書いているので自然と接するプロデューサーはテレビ局の方やドラマを多く作っている制作会社の方になる。彼ら彼女らと仕事をしてきて昔からどうもまんじりとしないことがあった。それは脚本家とプロデューサーの関係の『たとえ』についてである。よく『ピッチャーとキャッチャー』や『マラソンランナーと伴走者』などたとえられることが多いが、どれもあまりしっくりきていない。たとえば『ピッチャーとキャッチャー』だとしたら、どちらが投げて、どっちが受けてるのか?おそらく基本的に脚本家をピッチャーとしてたとえているのだろうが、プロデューサーによっては剛速球なのか、ビンボールなのか分からないような球を好き勝手に投げ、なんなら野球の球ではなく、ボーリングの球、砲丸、あるいは包丁をぶん投げて来る人もいる。『マラソンランナーと伴走者』だとしても、伴走するどころか勝手に突っ走り、私が持っているタスキだか、バトンだかをひったくって、ゴールとは違う方向へ爆走していくプロデューサーも……あれ? こう書いているとロクでもないプロデューサーとばかり仕事をしているように思われるかもしれない。それにこの文章を読むのはプロデューサーの方々なので「ピッチャーとして、いい球投げられない脚本家が悪い」と言われそうだが、これは非常にレアケースです。ほとんどのプロデューサーは人格者で、紳士的で、志が高く、素敵な方ばかりです、はい。
あくまで個人的な考えだが理想的な脚本家とプロデューサーの関係は『漫才コンビ』でありたいと思う。私はかつてバラエティ番組の放送作家をやっており、漫才師さんと接することが多かった。漫才コンビというのは非常に不思議な関係で、夫婦のようであり、恋人のようであり、親友のようであり、ビジネスパートナーである。コンビによるが、だいたいボケがネタを書き、ツッコミがそれを読み、こういうツッコミはどうだ?など意見を言い、ネタをブラッシュアップしていく。どちらが上でも下でもなく、対等の立場で、お互いに揺るぎない信頼とリスペクトをもってネタを仕上げていく。それもすべてはお客さんを笑わせるため。そして最後は二人が責任と自信をもって、板(舞台)の上にあがる。この『最後は二人が責任と自信をもって』が結構大事だと思う。正直言えば、すでにこういう関係性を築けているプロデューサーは何人もいる。彼らには感謝しかない。ただもっともっとこの業界に、鋭いツッコミ力を持ちながら、互いに信頼し、責任と自信をもって、一緒に作品を創ることができるプロデューサーが一人でも増えてほしいと切に願っている。


事業活動についてのお知らせ

アクターズセミナー委員会

4年振りに、アクターズセミナー賞選定オーディションが開催されます。
10月17日(火)10時より、日比谷三井カンファレンス(東京ミッドタウン8階)にて、書類審査を通過された30名の若手精鋭の皆さんが参加されます。
ワークショップの講師は、フジテレビのエグゼクティブディレクターの河毛俊作さんに、お願いしています。又、オーディション審査には奥田会長(審査委員長)をはじめ、映画会社、テレビ局の有力プロデューサー、監督諸氏が審査委員を務めます。
成功に向けて委員会メンバーは、努力してまいります。会員の皆様のご理解、ご協力をお願い申し上げます。

プロデューサーズ・カフェ委員会

今年1月のプロデューサーズ・カフェは、オンライン開催ながら講師に治部れんげさんを迎え、60名余の会員が参加され「LGBT」問題に関しての理解を深めました。今年度は、8月29日に委員会を開催し、次回開催に向けて始動しました。時期、セミナーの開催形式は未定ですが、テーマとしては、「配信ドラマ制作について」が検討されています。決定次第お知らせしますので、会員の皆様にはぜひ、ご参加をお願いします。

ドラマフェスティバルについて

前号でお知らせしましたが、今年の東京ドラマアウォード授賞式は10月24日(火)に東京プリンスホテルで行われます。2007年の開始以来、国内外の注目度は飛躍的に高まってまいりました。当協会の会員の皆様には、格段のご協力をいただいております。
本年の「東京ドラマアウォード」にぜひご注目ください。

デジタル編集委員会
6月1日より、会員専用の交流サイトがスタートしました。
委員会は、原則月の第一火曜日にオンラインで開催しており、サイトの企画と会員利用者の増加をめざして、協議してまいりました。
この交流サイトは、会員の皆様の参加で成り立つものですので、多くの方々のご登録をお願い致します。サイトにログインするには、会員が利用希望を事務局にメール申請されると、事務局から招待メールが届きます。指示に従って自分のメールアドレスとパスワードを登録するとアカウントが作成され、それを使ってパソコンやスマホからいつでもログインできます。

只今撮影中

テレビ東京
清水 俊雄

ドラマ8「ハイエナ」

コロナの第9波かと言われている中、皆様も撮影等お疲れ様です。
現在、テレビ東京にて10月クールに放送するドラマ「ハイエナ」を絶賛撮影中です。
「ハイエナ」は2020年に韓国で放送されヒットした作品の日本初リメイク。篠原涼子さん演じる勝つためなら手段を選ばないハイエナのような弁護士・結希凛子と、山崎育三郎さん演じる法曹一家に生まれた超エリート弁護士・一条怜がスリリングな生存競争とラブストーリーを繰り広げる、ただの法廷モノではないリーガル・エンターテインメントです。難しいことが理解しづらい私でも、わかりやすく単純に楽しめる作品になっていると思っています。
元々バラエティー畑の出身でドラマに関わり4年ほどしか経っていない私は、「篠原涼子さんと山崎育三郎さんがテレ東のドラマに出てる!」とか完全にミーハーな気持ちで撮影を観ている時が多々あります。お笑い番組等、完全なバラエティー番組ばかりの担当だったので俳優さんにはあまり縁がなく…。そんなしょうもない話は置いておいて、いつものごとく現場は演者・スタッフ一丸となって良い作品にしようと奮闘しております。毎回、現場に入ると思うのですが、皆さんやっぱりプロフェッショナルだなと。作品の顔となる演者さんだけでなく、どのスタッフも職人で作品に真摯に向き合ってくださって。こちらも身の引き締まる思いです。
美術さんの作る作りモノも精巧すぎて、心配性の私は毎回「これ作りモノですよね?」と確認してしまっています。今回、弁護士モノのドラマですが、法廷で裁判官が使用する木製ハンマー(写真)の名前ってご存知ですか? 名前は「ガベル」と言うそうです。ただ、日本の裁判では使用していないとのこと。そうなんだ~と、未だに仕事を通じて知ることは多いです。
まだクランクインしてほんの数日しか経っていないことを理由に、これといったエピソードも無く、薄い内容で失礼しました。でも、そんな私でもやっぱり、初回放送での視聴者の反応は今の段階でもドキドキですね。何かしら良い結果を迎えられるよう尽力はしつつ。
なにかと大変なことが多いドラマの撮影ですが、皆様においても健康や成功を祈念しております。


私の新人時代

フジテレビ
エグゼクティブディレクター 河毛 俊作

今年、71歳になった私が駆け出しだった1970年代後半から80年代前半は今ではクラシックになったユース・カルチャーの勃興期だった。音楽の世界では山下達郎さんや大滝詠一さんが登場し、ファッションの世界ではビームスやシップスなどのアメカジ系セレクトショップが誕生した。でも、時代はまだ完全アナログでFAXすら無かったし、街はコールタールと鉄錆の匂いが漂っていて、会社の近くにあった定食屋の看板には「外食券食堂」の文字が残っていた。そんな時代、サードADの仕事の一つに脚本家先生の御自宅まで、出来上がった原稿を受け取りに伺うというヤツがあった。プロデューサーから夕方の4時に行けと命じられて伺うと、奥様が申し訳けなさそうな顔で少し待って下さいと言って座敷に通される。お茶とお菓子が出る。そして2時間、時計が6時を指す頃に、奥様が出前の鮨をおぼんに載せて再び登場、もう少しお待ち下さいと仰る。ありがたく鮨を頂いてさらに2時間、原稿はまだ出来ない。時計が8時を回った頃、三度登場した奥様の手にはサントリーオールドのボトルと氷、水差し、チーズを載せたおぼんがあった。仕方ないのでチビチビと薄い水割りを口にしながら更に待つこと4時間、次の間の襖がスーッと開くと何とそこには旅館のように布団が敷かれていた……翌朝、何とか原稿を頂戴すると、会社へ戻るタクシーの中で香盤表を拾うために早速、原稿を読む。200字詰の原稿用紙に手書きで、清書などしていないから実に読みにくい、あちこち線で消して書き直してある。しかし、これを読むことは大変、勉強になった。作家の推敲の過程が手に取るように分かるからだ。“ナルホド、このシーン、最初はああしようと思ったけど、こういう風に変えたのか…〟まさに“生原稿〟である。手書きの原稿からは、駆け出しの私にも作家の苦悩や様々な思いを感じることができた。“脚本は人間が書いている”というごく当り前のことを思い知ったのだ。テクノロジーの助けが何もない時代に、この仕事のABCを学べたことを、本当に幸せだったと、今、改めて思う。


事務局だより

◎正会員入会

和佐野 健一(東映㈱)
吉田  努(日本放送協会)
上田 明子(日本放送協会)
堀内 裕介(日本放送協会)
渡辺 哲也(日本放送協会)
上原 寿一(㈱フジテレビジョン)
狩野 雄太(㈱フジテレビジョン)
髙木 由佳(㈱フジテレビジョン)

◎退会

加藤  拓(日本放送協会)
松浦 禎久(日本放送協会)
土屋 勝裕(日本放送協会)
北野  拓(日本放送協会)
陸田 元一(日本放送協会)
鈴木 雅之(㈱フジテレビジョン)
水戸 理恵(㈱フジテレビジョン)
水上 繁雄(㈱KADOKAWA)
二宮 直彦(㈱KADOKAWA)
株式会社シナリオプリント(協賛)

◎訃報

平田  崑(特別功労会員 ヒラタオフィス) 9月13日逝去 93歳

第75回  協会親睦ゴルフ

2023年11月19日㈰  越生ゴルフクラブ
会費/22,000円予定
(プレー費、パーティー費、商品代含む)
8時40分集合・9時10分インスタート(5組予定)


インフォメーション

◎会合・会議の記録

  • 9月13日(水) 13時~   第1回アクターズセミナー委員会(リモート)
  • 9月19日(火) 17時~   会報委員会(リモート)
  • 9月25日(月) 18時30分~ 第1回エランドール賞委員会(リモート)
  • 10月3日(火) 16時~   第2回プロデューサーズカフェ委員会(リモート)
  • 10月3日(火) 18時~   デジタル編集委員会(リモート)

◎会合・会議の予定

  • 10月11日(水) 18時30分~ 第4回定例理事会(東映本社8階会議室)
  • 10月17日(火) 10時30分~ アクターズセミナー(日比谷三井カンファレンス)
  • 10月24日(火) 17時~(予定) 国際ドラマフェスティバル 東京ドラマアウォード(東京プリンスホテル)

Contact

お問い合わせ

協会への入会や、セミナーへの参加、その他各種お問い合わせは
メールフォームよりお受けしております。